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[ エッセイのようなモノ ]
星新一

1998.01.06

 星新一氏が亡くなった。  
 一月五日の新聞を、食事時に読んで知った。ショックで食事が喉を通らないという事態を、生まれて初めて経験した。新聞の見出しを目にした瞬間に新聞を取り落とすという、まるでできの悪いドラマの演出のようなことも、実際には起こりうるのだということも、身をもって体験した。そのぐらいショックだった。  
 手塚治虫氏が亡くなった時もショックだった。三船敏郎氏が亡くなった時もかなりのショックを受けた。だが、今回のショックは、比べものにならない程強烈だった。  
 思い返せば二十数年前、中学生の頃には、星新一氏の作品を片っ端から読んでいた。そのひとつひとつが、簡潔な文章で、アイデアに富み、以外な落ちに驚いたものだった。何度も読み返した作品もある。どの作品も新鮮な驚きに満ちていた。  
 そんな中学時代を送ったのがわたしだけではなかったことを、高校に進んでから知った。何人もの友人が、星新一を、筒井康隆を読み漁っていた。考えてみると、星新一氏は、子供から大人への通過点で、多くの人が接する作家の一人なのだろう。  
 文章は簡潔で子供でも読みやすく、内容はウィットに富んで大人の鑑賞にも耐える。そのほとんどの作品がショートショートと呼ばれる、極めて短い作品だったことも、子供の入り込みやすさを助けてくれていたに違いない。  
 このホームページを読んでいて、でも小説はあまり読まない、という方がいらっしゃったら、書店へ行き、星新一氏のショートショートを購入することをお勧めする。中にはショートショートでないものもあるので、そのことにだけ注意すれば、あとはどの作品集を買ってきても、決して損はしない。  
 わたし自身は、実はすでに二十年近く、氏の作品を読んでいないことに気がついた。だが、過去に購入した氏の作品は、すべて本棚の中に眠っている。これからおそらく、わたしだけでなく、多くの人が彼の作品を読み返すことだろう。  
 ご冥福をお祈りする。  



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