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[ エッセイのようなモノ ]
ご愛顧に感謝しろ

1999.04.21

 いつどこで見たのか忘れてしまったが、次のような内容のポスターを見たことがある。  
 
 なんとかかんとか、創立一周年記念!  
 日ごろのご愛顧に感謝して、  
 今なら入会金が半額!  
 
 細かい内容は忘れてしまったが、おおむねこんな感じの内容だった。わたしはべつに、その「なんとかかんとか」には入会していなかったし、今後も入会することはないだろうと思う。だいたい、それがいったい何だったのかすら、すでに覚えていないのだから、入会しようにもできないのだが。たしか、その地域の、ケーブルテレビか何かだったと記憶している。  
 ただ、道を歩いていて、ふと目にとまっただけの、わたしとは縁もゆかりもないポスターなのだが、それがやたらと気になってしまったわけだ。わたしには、そのポスターに書いてある内容が、非常に不条理な内容に思えたのだ。  
 ほかの人が、どう思っているのかは、わからない。なにしろ、すでにそこの会員になっている人にも、これから会員になろうとしている人にも、知り合いはいないのだから。  
 そもそも、わたしには何の関係もない内容なのだから、なにもわたしが不条理だと思う必要はないのだが、関係者はこの内容を見て、誰も不条理だと思わないのだろうか? ということが不条理に感じられた、といえばわかってもらえるだろうか。よけいわかりにくいか。  
 日ごろのご愛顧に感謝するのは、そりゃ正しい行為だろうと思う。べつに、愛顧してやってるんだから、もっと感謝しろ、といっているわけではない。そもそも、何度もいうが、わたしは「そこ」とは関係ない。ではわたしが、いったいなにを不条理だと思ったかというと、感謝した結果、なにをするかということを不条理だ、と思ったのだ。  
 つまり「入会金が半額」の部分。  
 日ごろご愛顧しているのは、いったい誰なのか、よく考えてもらいたい。創立してから一年間、入会時には入会金を払い、たぶん月々の会費を払いつづけてきた、すでに会員でいる人たちではないのか?  
 それなのに、感謝した結果が、これから入会するであろう人たちに向けられたのでは、今まで愛顧していた人たちの立場はいったいどうなるというのだ?  
 感謝すべきは、すでに会員になっている人たちに対してであって、これから会員になる人たちではないはずである。  
 それを「入会金半額」とはなにごとか!  
 と、ここでわたしが怒ったところで、しょうがないのだが。  
 だが、似たようなことはほかにもたくさんある。たとえば、携帯電話やPHSの料金。はじめのころには、初期投資だってかなりのものだった。通話料だって高かった。それでも使い続けていた人はいたのである。そういう人たちにこそ、感謝すべきなのである。  
 それがどうだい。  
 今ではむちゃくちゃ安い値段で手に入るし、通話料だってかなり安くなった。  
 たしかに、長く使っていれば、それなりの割引サービスなんぞもある。だが、それは後から入って来た人たちにも、平等に与えられるサービスであって、古くからいるお客様にだけ提供されるサービスではない。  
 安くなったぶん、過去にさかのぼって差額を返してくれるとか、そういうことがあってもいいんじゃないだろうか。  
 いや、べつに、本気で言ってるわけじゃないんですけどね。  



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