|
1999.09.29
先日、昔の知り合いからメールが届いた。最後に会ったのは、かれこれ・・・・何年前だかわからないぐらい昔のことだ。で、その人物は「著者近影」のわたしの写真を見て、「これだれ!?」といってきたのである。いや、べつにわたしが他の誰かと入れ替わっているとか、整形手術によって顔を変えてしまったとかいうわけではない。単に太ったというだけのことなのだ。
もともとわたしは細かった。三十前には、体重が六十キロを肥えた(ええいっ!)越えたことは一度もなかった。せいぜい五十五、六キロというところか。身長は当時で百七十二、三センチ。まあちょっと痩せ気味かな、という感じだった。それが今では七十キロもあるのである。現在の身長はなぜかちょっと伸びて百七十四、五センチぐらいだから、まあ、ちょと絞った方がいいかな、という感じである。とはいえ十五キロ近く太ってしまったわけだから、感覚的にはかなり太ったことになる。
かつてのわたしは、痩せているのがいやだった。やっぱり、もう少し肉がついていた方が、見栄えがするだろう、と思っていた。で、太る努力を続けていたわけだ。一般的には「ダイエット」とか称して、いかにして痩せるか、という努力を続けている人の方が世間には多いようだが、中にはこうして、太る努力をしている人だっているのである。
ちなみに「ダイエット」とは、本来「食事制限」といったような意味だから、「ダンベル・ダイエット」などというのは、いったい何を食わされるのやらわかったものではない。いや、ダンベルを食べてはいけない、という制限なのかもしれないが、そんなものが流行るということは、普段そういうものを食べている人がいる、ということか。恐ろしい時代になったものである。
それはそれとして。がんばって太る努力を続けていたのに、わたしはちっとも太らなかった。太るからやめなさい、といわれるようなことは大抵やっていた。死んだ爺ちゃんの遺言で、仕事と酒は控えるように言われているので、酒は飲まない代りに、甘いものをジャンジャン食べた。もちろん、間食や夜遅くに食べるのは当たり前である。それでも太らなかった。書店へいって、「太る方法」とかいうような本を探してみたが、これがない。どれもこれも「痩せる方法」なのである。やっと見つけた一冊を買い込んで、ページを開いて、いきなりわたしは投げ捨てた。そこには「まず煙草をやめなさい」と書いてあったのだ。わたしには、「あきらめろ」と書いてあるように見えたのだ。
まあ、そんなわけで、努力といっても真剣にしていたわけではないので、太らなくても一向に気にしてはいなかったのである。それが結局太ってしまったのにはわけがある。
実はわたしは二十代の前半ごろから、ずっと肩凝りに悩まされてきた。凝るというよりも、肩から背中にかけて、ほとんど痛みに近いものがあった。で、さっさと病院に行けばいいものを、いつまでたってもそのままにしていて、三十を過ぎてからやっと病院で看てもらった。その結果、首の骨がずれている、と診断された。背中の痛みは、骨の歪みが原因だという。で、長い治療の末、骨の歪みが直ったのかどうかは知らないが、長いこと悩まされてきた背中の痛みはとりあえず解消されたのである。で、気がついたら太っていた、と。ついでに身長も少し伸びたのを見ると、歪みも直ったらしい。やはり、体が歪んでいることで、どこかに無理があったということなのだろう。ということは、また骨をずらせば痩せるということだろうか。
骨をずらしてみんなで痩せよう!
これが新しい痩身術としてマスコミに取り上げられる日は、永遠に来ない。
|