縦書きで読む
[ エッセイのようなモノ ]
カウントダウン開始!

1999.11.10

 さて。そろそろ、十一月も半ばに近づこうとしている。それがどういうことかといえば、つまり、「2000年問題」勃発まで、あとほんのちょい、ということなのである。まあ、ほんのちょいとはいえ、よく考えてみれば、小学校の夏休みと同じぐらいあるわけだから、世のお母さん方にしてみれば「なんだよ、まだそんなにあるのかよ」という感じかもしれない。当のお子さんたちにとっても「まぁだまだじゃん」てところだろう。宿題を始めるのは、まだずっと先のことだろう。  
 「2000年問題」がなんなのか、いまさらここで説明する必要は、たぶんないと思うのだが、念のために説明しておこう。簡単に説明すると、コンピュータが誤動作する可能性がある、ということなのである。  
 まあ、ちょいと昔のコンピュータは、メモリなんぞほとんどなかったから、プログラムを組むときには、できるだけメモリを節約するように努めたわけだ。で、どうやってメモリを節約したか、というと、当然ムダを省くところから始まる。その中に日付の問題というのがあった。  
 西暦の年は、現在四桁である。つまり今年は1999年だから、数字だけであらわせば、1999ということになる。で、十年ぐらい前に作られたプログラムは、この頭の19を取っ払って作ってしまったのだ。「まあ、なくても大丈夫だろう」と。  
 考えてみれば無茶なことをする。だが、もっとよく考えてみれば十年も前のことなのである。冒頭にも書いたように、一ヶ月と少々が「まぁだまだ」なのだから、十年もあったら、そりゃもう遥か先のことになってしまうのだ。そこで、当時プログラムを作っていた連中は考えた。  
 「どうせ、2000年になるときに、このプログラム使ってる奴なんていねぇよ」  
 だから、頭の二桁削っても、特に問題はないだろう、と思われていたのである。仮に、  
 「ちょっとやばいんじゃないの?」  
 と考えたプログラマがいたとしても、次に頭をよぎったのは、  
 「でも、たかが日付だし。直すのもたいしたことないし。もし大変だったとしても、どうせ直すの俺じゃぁないし。時間はたっぷりあるんだし」  
 かくして、ここ数年は、夏休みが終わる直前の小学生のような大騒ぎだったのである。  
 まだよくわからない? 平たくいえば、人工衛星が落ちて来るかもしれないし、核ミサイルが誤って発射されちゃうかもしれないし、銀行の預金が0になるか莫大になるかのギャンブルが、否応なくできてしまうかもしれない、という、今世紀最後にして最大の、華麗にしてスリリングな一大イベントなのである。って、信用しないように。  
 念のためにいっておくが、2000年問題がからむのは、日付を使ってなんらかの処理をしているコンピュータに限る、ということである。なんらかの処理というのは、日数の計算とか、日付で順番を入れ替えるとか、そういったことを指す。単純に日付の表示をしているだけの場合には、特に問題はない。だから、冷蔵庫が人間を食ったり、掃除機が勝手に走り回ったり、ましてや電子レンジが勝手に犬をチンしちゃったりはしない。単なる電卓が計算を間違えたりもしない。そういや昔「ファジー」なんてのがあったが、どこいった?  
 たしかに、こういうものにもICとか言われる、一種のコンピュータのようなものが搭載されていたりもするが、2000年になったからといって、こいつらが叛乱を起こすことは、まずない。  
 まあ、他人事としてとらえると、七月に肩透かしくらっちゃった者としては、正直いって「なんか起きてくれなきゃつまんねぇよ」ってな心境なのは確かなのではあるが。  



Copyright(c) 1997-2007 Macride
ご意見ご感想は メール 掲示板