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[ エッセイのようなモノ ]
2001年雨中の旅

2000.02.10

 ふと気がつくと、今年も残すところあとわずかに十ヶ月と少しとなった。まだ十ヶ月もあるじゃないか、なんていわないように。それを過ぎたら、二十一世紀になってしまうのだから。二十世紀もあとわずか。千二百分の十ヶ月なのである。  
 わたしが子供のころには、二十一世紀といえば、街には超高層ビルが建ち並び、高速道路が網の目のように張り巡らされ、弾丸列車が走っていることになっていた。ロボットが職場や家庭で活躍し、人類の何パーセントかは人工衛星やら月やらで生活し、海底にも都市ができていたりするはずだった。  
 と、こうやって考えてみると、とりあえず前半の項目のいくつかはクリアしつつあるような気がしないでもない。あと十一ヶ月で、残りがどのぐらいクリアできるかが問題だが。  
 かつては色々と勝手な想像を膨らませて、中には「こんなことができたらいいなぁ」ってなものもあったのだが、その中で確実に予想を超える進歩を遂げてしまったものがある。通信手段。つまり携帯電話の普及である。  
 はっきりいって、ほんの十年前、いや五年前だって、ここまで携帯電話が普及するとは思えなかった。それがいまじゃぁ、はっきりいって、ほとんど一人に一台の割合ぐらいには、なっているんじゃぁないだろうか。もちろん、世の中には携帯電話を持っていない人だっているだろうが、その分、一人で二台も三台も持ってる人がいるわけだから、平均したらそのぐらいにはなるに違いない。  
 なにしろ普及速度が異常に速い。そのせいかどうか、電車での忘れ物の増加率が、ダントツトップなのだそうである。そりゃそうだろう。ほんの数年で、0からスタートしたばかりなのに、もう大勢の人が持っているわけだから、たとえ「忘れ物の」ということであっても、その増加率はダントツでなければならないはずだ。  
 ただ、残念なのは、まだあくまでも「増加率」がトップなだけで、忘れ物自体のトップにはなっていない、ということだろう。みんなでじゃんじゃん忘れて、早くトップの座をゲットさせてやりたいものである。  
 忘れ物のトップといえば、これはもうみなさんご存知の傘である。この傘というやつがなんともまた、携帯電話とは逆の意味で、登場以来すばらしい快挙を成し遂げているのではないかと、わたしは常々思っている。  
 傘というやつが人類の歴史に登場してから、どのぐらいの年月が過ぎ去っているのか知らないが、これほど進歩していないものも珍しいんじゃないだろうか?  
 たしかに、折りたためるようになったり、ボタンひとつで開いたり閉じたりできるようになってはいる。だが、本来の「雨を防ぐ」という機能の点では、まったく進歩していないのだ。ちょっと風が吹いただけで全身濡れる。下手をすればおちょこになる。しかも、確実に片手はふさがる。  
 これほど進歩のない品物ってのも、ひょっとしたら貴重なのかもしれない。なにしろ、考えようによっては、発明された時点で、すでに完璧に近い状態だったことになるわけだから。これ以上進歩しようがないほど、登場時点で完成されていたとしたら、これほどすごいことはない。発明した人に拍手を送りたい。で、誰が発明したの?  
 傘と同じように、登場以来まったく進歩のないものが、じつは他にもある。これは明らかに、傘よりも進歩していない。せいぜい、手動だったものが電動になったぐらいで、これは今の文明からすると、進歩とはいえないだろう。  
 それは何かって?  
 自動車のワイパーですがな。これって、登場以来ずっとあの形、あの動き、あの機能なのである。  
 奇しくもどちらも雨がらみ。二十一世紀には大きく進歩するんだろうか?  



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