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2000.03.23
もし透明人間になることができたら何をしたいか、と聞かれた場合、男性の九割は「女湯に入りたい」だの「女子更衣室に入りたい」だの「女性用のトイレをのぞいてみたい」だの、と下品なことを言うらしい。そんな下品なことを言わない残り一割の男性は、まだ子供か、あるいはホモか、さもなければ死んでる奴に違いない。
同じ質問をされたとき、女性がなんと答えるのかあいにくわたしにはわからないが、「男湯に入りたい」などという人はまずいないだろう。そういうことを考えている女性がもしいらっしゃったら、悪いことはいわない。透明人間になどならずに男湯に入っていただきたい。
さて仮に透明人間になることが可能だったとしよう。仮にもなにも、不可能といいきってしまったら、今回はこれ以上書くことがなくなってしまうので、はっきり断定する。透明人間になることは可能であると。現在の科学ではどうだか知らないが。
その場合、どんな問題が起きるか。女湯に忍び込む男が増えるとか、そういう問題のことではない。透明人間自身の問題のこと。
一般的に、透明人間が透明になったとしても、着ている服まで透明になることはないということになっている。したがって、透明人間が透明でいるためには、服を着ていてはまずいのだ。冬場は辛い。しかし、裸でなければならないってことは、風呂に入りやすいってことになって、やはり透明人間は女湯に入るようにできているのかもしれない。いや、そういうことじゃなく。
たとえば透明になる薬というのがあったとして、それを飲んで透明人間になった場合は、どう考えても、身につけているものまで透明になるとは思えない。少なくとも、飲んだ薬が浸透する部分、平たくいえば血の巡っている場所しか透明にはならないことになる。となると、歯だの爪だの髪の毛だのは残ってしまいそうな気もするが、そこはそれ、体の一部ということで目をつぶっていただきたい。
身につけているものが透明にならないとなるとどうなるか、着ているものが透明残る以外にも、少し困ったことが起きる。まず、飲み食いしたものは透明にならない。口から入ったものが、食道を通り胃に落ちて、消化される過程をつぶさに見ることができてしまうのである。そのうえ、消化されたものが吸収され、これから排泄されようと腸に溜まっている状態まで見えてしまうわけだ。これはちょっといただけない。
それだけではない。虫歯の治療をして、歯に詰め物かなんかしてあれば、当然それも残る。過去に骨折した経験があって、骨をボルトかなんかで止めていたりすると、それも見えてしまう。それも勘弁してもらいたい。
まあ、指先にトゲが刺さったりした場合には、見つけやすくてありがたいかもしれないが、どこに刺さっているのかはわからないわけだから、結局あまり役には立たない。
これらの問題を解決するためには、薬を飲むという方法から離れなければならないだろう。
透明になる塗料を全身に塗る、というアイデアもあるのだが。この塗料にも欠点はある、鼻の穴だの口の中だのまで塗料を塗らないと、なにかの拍子に塗っていない部分が見えてしまうことになるのだ。で、一番の問題は、目にもその塗料を塗らなければならないということ。そんなことできないってば。コンタクトレンズを使っても、白目の部分はカバーできないので、結局残る。
以前見た映画では、特殊な光線を浴びたために透明になってしまった、という設定を使っていた。これならば、その時点で身につけていたものは、服をはじめ虫歯の詰め物まで、全部一緒に透明になる。食べたものは、とりあえず消化されるまでは消えないが、消化されると消えてしまう、という設定だったと記憶している。この考え方が一番都合がいいので、これを採用することにしよう(笑)
ところが、これにも大きな問題がある。その問題を考える前に、ちょいと生物の勉強をしてみよう。なぜものが見えるか、ということ。目玉の仕組みをごちゃごちゃ説明するのも面倒なので、途中ははしょらせていただくが、早い話しが網膜に写った映像を、脳が認識しているのである。これがどんな問題になるかというと、透明人間の網膜に見た映像が映るかどうか、ということ。なんせ、網膜まで透明になってるはずなんだから、そこに映像が映るなんてことはまず有り得ない。つまり、透明人間は、誰にも見えない代りに、透明人間自身も何も見えなくなってしまうのである。
そういう事情で、仮に透明人間になれたとして、首尾よく女湯に潜り込めたとしても、結局なんにも見えませんので念のため。って結局それかい!
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