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[ エッセイのようなモノ ]
×2(かける2)

2000.06.30

 おもしろいことに、生き物の体というのはおおむね左右対称にできている。もちろん、ヒラメだのカレイだののように左右対称でない生き物だっているし、ミジンコだのミドリムシだのみたいに、どっちが右やら左やら、素人目にはわからないような生き物もいるわけだから、全ての生き物の体が左右対称とは言わないが、まあ、ほとんどの生き物の体は、ほぼ左右対称になっているといっていいだろう。異議はまあ、認めないでもないが。  
 内臓は左右対称じゃないぞ、という意見もあるだろうが、ここで言っているのは外見の話し。外見にしたって「髪型は左右対称じゃない」とか「俺のは右に曲がってるから対象じゃない」とか「わたしのバストは左の方が大きい」とか言い出す人もいるかもしれないが、ここではとりあえずそれも無視する。まあ、バストの大きさに関しては、わたしがチェックを入れてあげてもいいが(笑)  
 たしかに、正確な意味では生き物の体は左右対称ではない。いや、髪型とかどっちに曲がってるか、という問題ではなく。たとえば、デジタルカメラなんぞを持っている人は、一度試してみるといい。自分の顔をできる限り真正面から撮影して、それをパソコン上でいじくるのである。できるかぎり中心にある縦の線で、自分の顔を左右にふたつに切って、右なら右の映像を、反転させて左に貼り付けると、これがまたえらく間抜けな顔になる。  
 とにかく、細かいことを言ってしまうと、生き物の体は、本来の意味では左右対象ではないのだが、ここではとりあえず、大雑把な形としては左右対称とさせていただく。  
 ここでおもしろいのが、たとえば手足の数。動物だの昆虫だの色々いて、必ずしも「手」があるとは限らないが、とりあえず肢の数を数えると、これがほとんど偶数になる。左右対称の前提に基づけば、奇数にはなり得ないのである。わたしの知る限りでは、手足の数を全部足して奇数になる生き物ってのはいない。タコは八本、イカだって十本も手だか足だかがあるらしいが、それにしたって偶数である。もし、本来の手足の数が奇数になる生き物というのをご存知の方がいらっしゃったら、ぜひご一報いただきたい。  
 手足の数もそうだが、目だの耳だのも、おおむね偶数になるようである。まあ、昆虫の場合は複眼なんぞといって、ひとつに見える片方の目だけで、実はいくつもの目になっているような場合もあるようだが、これもぱっと見、左右対称に偶数という形態が多いようだ。  
 まあ、手足は別にして、目や耳の場合、左右についていることには意味がある。目は、左右にあるおかげで、物が立体的に、距離を持って見えるのだし、耳も複数あるおかげで音の方角なんぞがわかるようになっているということである。もっとも、草食動物の場合、目は頭部の左右に、完全に別れてれてついていて、物を立体的に見たり距離感をつかむことよりも、できるだけ広い範囲を視野に収める、という目的の方が強いらしいが。なんにしても、目や耳が左右についているのには、ちゃんとしたわけがあるのである。  
 ここで不思議なのは、鼻。  
 いや、もちろん鼻は左右にはついていない。ほとんどの場合、顔のほぼ真ん中にひとつだけついている。中には鼻のない人もいるかもしれないが(笑)それはそれとして、問題なのは鼻ではなく、鼻の穴である。これって、なんでふたつもあるんだろう?  
 臭いが立体的に、距離感を持って感じられるわけでもなし、臭いの芳香(じゃなくて(笑))方向がわかるわけでもなし。生物学だのなんだのは詳しくないのだが、そもそも鼻の穴って、少し奥に行くと、すぐにひとつに繋がっちゃうわけでしょ。しかも、臭いを感じ取る部分って、その繋がったあたりにあるんじゃなかったか? ということは、穴がふたつあったって、結局そこでひとつになるんだから、距離だの方向だのを知る、という目的は、最初から放棄してることになる。そうなると、鼻の穴がふたつあることに、いったいどういう意味があるんだろう。  
 これはまあ、わたしの勝手な想像なのだが、ひょっとして鼻の穴って本来ひとつなんじゃないだろうか。ふたつに見えてはいるけれど、間の仕切りは、単に穴がふさがってしまわないようにするための、支えというか柱といか、補強材というか。そんなような目的のためにあるんじゃないだろうか。もしそうだとしても、中にはその支えが役に立たなくて、鼻が自重でつぶれちゃってる人もいるかもしれないが(笑)  
 あとはまあ、左右の鼻の穴の仕切りがないと、鼻輪をつけるのに困る、という意見もあるだろうが、それは物事の順序が逆。  
 鼻の穴がふたつある正しい理由をご存知の方、ぜひ教えてください。  



2000.08.20 追記

 
 先日うちの父親と雑談をしているときに、たまたま鼻の穴の話しが出た。で、わたしが「鼻の穴ってなんでふたつあるんだろう」というようなことをいったら、そこはそれ。さすがはわたしの父親である。みごとに完璧ともいえる答えを出してくれた。血のつながりというのは恐ろしいというか、ああやっぱり俺はこの人に育てられたんだなぁというか。この回答を自分で出せなかったのが悔しかったものである。  
 で、その回答というのは、  
 「そりゃおまえ。ひとつしかなかったら、鼻がかみづらくてしょうがないじゃないか」  
 というもの。なんだかなぁ(笑)  



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