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[ エッセイのようなモノ ]
わたくし改造計画(暗示編)

2000.07.20

 で、自己催眠である。  
 最初に手にした本は、催眠術というよりも自己暗示系の本だった。どう違うかというと、この説明はちと難しい。まあ、本文中に催眠という言葉が出てくるか出てこないかの違い、程度のことだと思っていただきたい。本当はもう少し違うのかもしれないし、全然違わないのかもしれないが、書いてあることはほとんど同じなのである、少なくとも素人が見るかぎり。まあ、それも後になってからわかったことで、その当時は特に意識していなかったのだが。  
 実際には、その本は「自己暗示」という表現も使っていなかった。イメージの力が人間を変える、ということで、色々な例が載っていた。有名なスポーツ選手なんぞもその方法を使っているらしい。「そんなことして何の役に立つんだ?」といいたくなるような例も載っていたが、著者の言葉によれば、それ自体が何の役にも立たないとしても、イメージの力を理解してもらうための例としては役に立つのだそうだ。  
 その後も何冊かの自己暗示やら自己催眠やらの本を読んだ。先に書いた通り、通常どの本にかかれていることも同様である。やり方はおおむね一緒。まずリラックスできる場所で、リラックスできる状態になる。椅子に座るか仰向けに寝る。その状態で、まず腹式呼吸をゆっくり何回か繰り返す。  
 余談になるが、この腹式呼吸というやつに関して、おもしろい話しがある。わたしは、どういうわけか小学校のころに合唱をやっていて(めちゃくちゃ奇麗なボーイソプラノだったのだ、これが!)、中学高校のころには吹奏楽なんぞをやっていた上に、演劇なんぞも、ほんの少しだけだがかじった関係で、腹式呼吸は一応できる。ところが、ある日知り合いと話しをしていて驚いた。その人物は、腹式呼吸というのは、本当に腹に空気を入れるものだと思っていたらしい。  
 「上手くお腹に空気が入らない」  
 と悩んでいた。たぶんみなさんおわかりだと思うが、念のために書き添えておく。腹式呼吸ったって別にホントに腹に空気を入れるわけではない。膨らむのは腹だが、実際に空気を入れるのは、やっぱり肺なのである。お間違えのないように。  
 さて、腹式呼吸を繰り返してリラックスしたあとは、何らかのイメージを浮かべることになっている。手が重いだの暖かいだの、広々とした草原にいて気持ちがいいだの。とにかく、そのあたりから実際のイメージトレーニング、すなわち自己暗示が始まる。  
 これがまあ、難しかったり簡単だったり、色々とあるわけだが、ここで大きな問題にぶちあたる。自己暗示にしろ自己催眠にしろイメージトレーニングにしろ、これまでに立ちふさがっていたのと同じ問題をはらんでいたのだ。つまり、継続は力なり、ということ。一回や二回やっただけでは効果がない。毎日繰り返すことによって、その効果が出てくるのである。つまり今までのパターンと一緒ということ。意志の弱いのを克服するためには、やっぱり意志が強くなければならないのである。たしかに、自己暗示やイメージトレーニングは、スポーツとは違って、やろうと思えばいつでもどこでもできる。場所も道具も必要ない。夜寝る前に、毎日繰り返せば良いのだから、意志の強さなんぞ関係ないように見える。ところが、だ。  
 意志の弱い人間にとっては、意識して毎日同じことを繰り返すというのは、実は至難の技なのである。もちろん、まったく意識せずに毎日繰り返していることはあるだろうが、自分で「よし、やろう」と決めたことというのは、なかなか定着しない。だから結局、イメージトレーニングにしろ自己暗示にしろ、続けることができないのである。これはもう、救いようがない、といっていいだろう。  
 これでは意味がないではないか。そこでわたしは次の手を考えた。同じ暗示でも、サブリミナル効果に期待しよう、というのである。  
 サブリミナル効果というのは、人間の深層心理に働きかけてなんたらかんたら、である。有名なのは、映画のフィルムの中に、一コマだけコーラの映像を入れておいたら、コーラの売り上げがあがった、というやつである。この手法、今では禁止されているらしいが、本人が認識した上で使用するのならばかまわないらしい。サブリミナル効果のあるCDというのが、かなりたくさん売られている。  
 その中の「意志を強くする」ってなCDを買って来て、それを聞くだけで意志が強くなるのである。こりゃもう願ったり叶ったり。なにしろ、自分からはなにもしなくて良いのである。まあ、CDプレーヤーのボタンぐらいは押さなきゃならないが。その結果、わたしの意志はかなり強くなった。なんせ、朝は何があっても絶対に起きないぞ、というほどの意志の強さなのである(笑)  



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