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[ エッセイのようなモノ ]
ぐわんばれニッポン

2000.09.21

 人から聞いた話しなので正確なところはよくわからないのだが、なんでも今世間では、オリムピツクとかいう病気が流行っているらしい。しかもこの病気は、全世界に広まっているのだそうで、国によっては、ジサとかいう現象のせいで、国民の大半が慢性の睡眠不足に悩まされているのだそうだ。幸いなことに日本ではそのジサとやらの影響が少ないらしく、そういう症状を訴える人はいないらしい。不幸中の幸いというべきだろう。  
 なんでもこのオリムピツクというやつは、数年に一度猛威をふるって、世界を恐怖のどん底に落とし入れているという。かつては4年だか5年だかに一度だったのが、現在では2年に一度というハイペースになっているらしい。まあ、以前の4年だか5年だかに一度の場合には、その1年の間に夏冬二回、世界を震撼させていたらしいのだが、今は2年に一度になったおかげで、夏は夏だけ、冬は冬だけという比較的楽な状態になってはいるようだ。それにしたって世界中を巻き込むこの猛威に、誰も不安にならないのだろうか。なんとかしてこの恐怖を食い止めよう、という計画を誰かが立てた、という話しは、聞いたことがない。  
 なんでも、食い止めようにもその猛威の中心が、毎回毎回異なる国に出現するために、阻止しようにも網の張りようがない、ということもあるらしい。しかもその猛威の中心となる国には、なんらの規則性もないのだという。せいぜいが、アジアの某国で発生した直後は、同じアジア圏内で発生する確率は少ない、というていどの規則性なのだそうだ。  
 幸いなことに、今年この恐怖の中心にあるのは日本ではなくオーストラリアなので、我が国は比較的安泰なようだが、現地では、かなりの混乱が起きているようだ。なんでもあちらでは、金だの銀だのの貴重な金属を食い荒らす化け物が跳梁して、市民を震えあがらせているらしい。たしか、数年前の冬には、日本でこの恐怖が発生していたと記憶しているが、たしかその中心だった長野は、ひどい打撃を受けたと聞いている。誰かがどうにかできないものなのだろか。  
 なんでも、IOCとかいう組織が、その発生国の予知に成功しているという話しを聞いたこともあるのだが、数年おきにかならずこの恐怖が起きてしまうところを見ると、どうも発生の阻止にまでは、至っていないようだ。そもそも、IOCこそがオリムピツク蔓延の元凶である、というまことしやかな噂も流れているのである。こうなってくると、何を信じて生きればいいのか、何も信用できなくなってくる。  
 このオリムピツクという流行病のもっとも恐ろしい点は、病にかかった人々よりも、病を免れた人たちに襲いかかるのだという。それも、実際に襲いかかって来るのは、なんとオリムピツク病に冒された人々なのだ。白い眼で見る、無視する、罵倒するなどはまだましな方で、ひどい場合には、奇声を発して罪のない人々を脅かしたり、手足を振り回して襲いかかって来たりもするのだそうだ。昨日までは温和だった人物が、ある日いきなり危険人物になっていたりする。こうなってくるともう、ドラキュラだのゾンビだのと一緒で、手のつけようがない。ドラキュラやゾンビの場合は、まだ外見で判断する、ということもできるだろうが、オリムピツク病の患者の場合、見た目は普通の人とほとんど変りがないので、なおさら始末に困る。  
 襲われた場合、ほぼ確実に死は免れないという。特に、相手が上司だったり得意先であったりした場合には、抗う術を持たない者の行き着く先には、多かれ少なかれ地獄が待っているのだそうだ。  
 それでもまあ、対抗手段を講じることは、できなくもない。病に冒されている人に襲われそうになったら、とりあえず「昨日の試合はすごかったですねぇ」という呪文を唱えれば良い。この呪文によって、病に冒されている人の脳は、一時的に麻痺するのだそうだ。その隙に、とりあえずすばやく動いて逃げるしか、助かる道はない。ただし、相手によっては、病気がかなり進行していることがある。その場合「どの試合?」というカウンターが返ってくることもあるので、油断してはいけない。これに対抗するためには、恐怖の中心となっている現地の動向を、できるだけ早く、正確に仕入れておかなければならない。どうやら、テレビや新聞などのマスコミでも、このオリムピツク病の恐怖は充分わかっているのだろう。日々現地の状況が事細かに報道されていて、人々に注意を促している。  
 とここまで書けばおわかりの通り、死んだ爺ちゃんの遺言で、仕事とオリンピックに近づいてはならない、といわれているわたしは、極力オリンピックには触れないようにしている。それでもやはり、ここで取り上げてしまう程度には、冒されてしまっているらしい。  



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