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2000.09.28
いったい何を思い立ったのか、最近のわたしは、週末のたびに部屋の掃除をしている。かなり徹底的にやっている。たしか、最後にまともに部屋の掃除をしたのは、明治維新のころだったと思うのだが、もしかしたら、大化の改新のころだったかもしれない。そのぐらい長い間、まともに部屋の掃除をしていなかったわけだ。
それが、何の心境の変化か知らないが、このところ毎週休みになると、せっせと部屋を掃除している。こう書くとお気づきの方もいらっしゃるだろう。ここ数週間というもの、関東地方は週末のたんびに雨が降っているのだ。どうやらそれは、わたしのせいらしい。わたしが血迷って部屋の掃除なんぞをしているから、雨だの雷だのと、ひどい天気になってしまうのだろう。申し訳ないとは思うが、どうかいましばらくご辛抱いただきたい。
とにかくいらないものが多いので、まずはそれを捨てることから始めているのだが、これが一向に終わる気配がない。予定では二日もあれば終わるはずだったのだが、とんでもない。このペースで行くと、どうもこのまま年末の大掃除に繋がりそうな気配である。
おそらく、他人が見ると、いらないものの筆頭は山のような本、ということになるのだろうが、そうはいかない。それよりも前に、着なくなった服の始末をしている。正しくは、着なくなった服というよりも、長い間着ていない服、といった方がいいのかもしれないが。
わたしの部屋には、開かずのタンスというものがある。かなり大きな、両開きの扉を持つりっぱなタンスなのだが、これが開かない。べつに、扉が壊れているとか、そいういう理由ではない。扉の前にやたらと物が置いてあって、開けることができなくなっているのだ。もちろん、やたらと物を置いたのはこのわたしだし、物を置いた理由が、このタンスはめったに開けない、という理由だったのだから、開かなくても、わたし自身はまったく困らない。だが、よくよく考えてみると、そんなタンスがあること自体、部屋を狭くしている原因なのである。となると、そのタンスを捨てるか、ということになるのだろうが、これがなかなか立派なタンスで、どこが痛んでいるわけでもない。あたりまえである。使っていないのだから。で、同じ捨てるなら、他の衣装ケースになるわけだ。立派な方のタンスの、何年も使っていない中身を捨てて、しょっちゅう着ている服をそちらに移す。で、それらが収納されていた衣装ケースを捨てれば、部屋は広くなるはずだ。
だいたい、着るものに無頓着なわたしが、そんなに服を持っているわけもなく、収納するべき服がないのだから、タンスだの衣装ケースだのがある必要もないのだが、どういうわけか、わたしの部屋にはそういうものが置いてある。理由は簡単、服を捨てないからだ。新しく服を買うことはあっても、着なくなった服を捨てるという発想が、じつはわたしの中にはなかったのである。
今回大棚ざらえをしてみてわかったことだが、下手したら十代のころに着ていたんじゃないか、というようなジャケットまで出てきて、どれほど長期にわたって服を捨てていなかったか、驚きの連続だった。ほとんど、遺跡の発掘状態である。もちろん、いまさら着ようったって着られやしない。はいはい、昔に比べたらかなり太ったよ。
まあとにかく、片っ端から捨てることにして、ゴミの袋に詰め込んだ。
リサイクルしろとか、寄付しないのか、と思うかたもいらっしゃるかもしれないが、かの神戸の震災のときに一番困ったのが、その手の、寄付と称して送りつけられてきた、誰にも着られないような服だの、穴のあいた毛布だのだったらしい。捨てようと思っていた服を、これ幸いとみんなが送ったというのは、あながち間違ってはいないだろう。結局現地ではその始末にかなり困ったとか。つまり、捨てるべきものは捨てなきゃいかんのだ。寄付として送るなら、新品同様のものを送らなきゃいかんのだ。
詰め込んだゴミの袋がいくつぐらいになったかは、想像におまかせする。はっきりいって、わたし自身も覚えていない。まあ、五つや六つでなかったことはたしかだ。
おかげさまで、タンスの中身はだいぶすっきりした。うーんよかった、と部屋の中を見回してみたが、これがどうも解せない。いままでとちっとも変っていないのである。そりゃそうだ。もともと見えないところにしまい込まれていたものを捨てただけ。見えるところには、まだ手をつけていないのだから。それどころか、いらないものを捨てると称して、あっちのものをこっちに動かしたり、こっちにあったものをそっちに積み上げたりして、部屋の中の乱雑さは、今まで以上にひどくなっている。まだ、山のように詰まれた本は残っている。今年中に終わるのだろうか。
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