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2000.11.09
その人がどこかにでかけると、必ずといっていいほど雨が降る、という人がいる。あるいは逆に、いつも晴天に恵まれるという人もいるだろう。一般に「晴れ女」だの「雨男」だのと呼ばれる人だ。
もちろん、何の根拠もないことで、そういったことで人を区別すると、もしかしたらどこかの団体から抗議が来るかもしれないが、抗議の手紙が来ようが座り込みをされようが、「晴れ男」だの「雨女」だのが存在するのは、厳然たる事実である。
たとえばうちの母親。この人がまた旅行が好きで、しょっちゅうどこかにでかけている。日帰りだったり一泊だったり二泊だったり、まあ長くてもその程度だし、最近は年も年だから、そうしょっちゅうでかけているわけではないのだが、この人が実にしっかりと晴れ女なのである。
まず、彼女が出発したとたん、地元に雨が降り出したことが何度あったことか。しかも、地元で雨が降り出したにもかかわらず、彼女がでかけた先では降っていなかったりする。そしてもちろん、帰って来たらその状態は逆転するのである。すなわち、それまで行っていた先で雨が降り出して、地元が晴れる。
出発前から雨が降っている場合もある。その場合は、目的地に近づくにしたがって、雨が小降りになり、雲が少なくなり、着いた時には陽が照っている、などということもあるという。最も強烈だったのが、場所はどこだか忘れたが、霧の名所と呼ばれるような場所で、霧を晴らしてしまったことだろうか。ツアーのバスガイドさんが「こんなことは年に数回しかないんですけど」と、困った顔をしたらしい。おそるべし、うちの母親。
ところが、先日日光に行ったときには、行程の半分近くが雨だったらしい。さすがの晴れ女の神通力も、年とともに衰えたか、と思っていたのだが、どうやらそうではなかったらしい。時期が時期である。もし天気が良かったら、あたりは観光客であふれかえり、道路は渋滞し、移動に時間を取られて、ろくな観光はできないような状態なのだそうだ。ところがあいにくの雨である。そんな中、わざわざ日光に紅葉を見に行こうなんてぇ人は少ないのである。その結果、移動はスムーズで、通常ならばまわれないようなところまでしっかりゆっくり観てきたという。そのうえ要所要所で雨はやむわ日は照るわ。まあ、こうなってくると、晴れ女と呼んでいいのかどうか、疑問は残るところだが。
一方には、雨男という人もいる。わたしが部屋の掃除をしたり、真面目に仕事をしたりすると雨が降っちゃうわけだが、これは通常「雨男」というのとは分類が違う。
わたしが知っている雨男で一番すごいのは、以前一緒に仕事をした人。その人を含む数人で、とあるビルから出て、道路の反対側にある店まで行こうとしていた、と思っていただきたい。小雨は降っていたが、傘をさすほどではないだろう、と彼らは駆け出した。究極の雨男と呼ばれる彼が、最後にビルから飛び出した瞬間、それまで霧雨のようだった雨が、いきなりどしゃ降りに変わったのだそうだ。まあ、わたしはその瞬間に立ち会ったわけではないので、ひょっとしたら多少の誇張はあるかもしれない。その人に関する逸話は色々あるのだが、最強のものは、真冬のスキー場で、雪ではなく雨を降らせた、というものだろう。こういう人には、アフリカあたりの、干ばつで人々が苦しんでいる国にぜひ行ってもらいたい。
晴れ女や雨男のほかに、雪女や雪男というのもいるが、これはどうやら分類が違うらしい。その存在も、はっきりとは確認されていないようだ。真冬のスキー場で雨を降らせる男がいるのだから、真夏に雪を降らせる女がいても、いいような気がしないでもないのだが。まあ、真夏に雪が降れば、飛葉ちゃんの運命も変わろうってもんだろうが、これはわからない人にはなんのことやらさっぱりわからないだろう。「新・ワイルド７」はいまいちだった。
いそうでいないようで、実はいるかもしれないのが、曇り男や曇り女。これは考えようによっては、雨男や雨女よりも悲惨かもしれない。なにしろ、中途半端なのである。どこへ行っても天気が悪く、晴れていることはほとんどない。いつでも降り出しそうな空模様だから、どうしたって傘は手放せない。だからといって雨が降ってくるわけではないから、結局は傘を開いたこともない。いっそ雨ならあきらめもつくのだろうが。降ることもなく照ることもなく、人生ずっと曇り空。そんな人生の方、いらっしゃいましたらご一報ください。なんにも出ませんが。
実は今回のネタ、わたしひとりで考えたわけではない。職場で雑談をしていて出てきた内容を、ほぼそのままメモって使った次第。
こんな感じでいいかなぁ、矢島さん？
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