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2001.04.21
ひとから聞いた話しなので、どこまで本当のことなのかは知らないが、人間は、ほとんどのにおいには、いつか慣れてしまうのだそうだ。かなり強烈なにおいでも、しばらく嗅いでいれば、いつかは慣れるのだという。まあ実際には、においそのものが、時間とともに薄れてくる、ということもあるのかもしれない。ところが、決して慣れることのないにおいというのも存在するらしい。これまた伝聞で申し訳ないのだが、正露丸という薬のにおい、これはいくら時間がたってもちっとも慣れない、と聞いたことがある。これはひょっとすると、慣れの問題ではなく、正露丸自体が発するにおいが、いつまでたっても薄れないのが理由なのかもしれないが、あいにく実験したことはないし、しようと思ったこともない。どなたか興味を持ったなら、ぜひ実験してその結果を報告していただきたい。
ときどき、思わず顔をしかめたくなるほど香水のにおいをぷんぷんさせている人がいるが、あれもじつは、自分の香水のにおいに慣れてしまって、次第に量が増えてくるからだ、というはなしだが、本当のところはよくわからない。
この香水というやつ、もともとは、遠い昔の、あまり風呂に入る習慣がなかった時代の人たちが、体臭をごまかすために考え出したものだとか。日本にも「香を焚きこめる」という習慣があったようである。もちろん、現代でもそういう習慣は存在するだろうが、その一方で、アロマテラピーとかいって、香りによるリラクゼーションなんぞもあるようだ。使用するのは、ポプリやら各種オイルやらを使うのが主流のようだが、昔ながらのお香やろうそくなんぞを使うこともあるらしい。お香はまだいいのだが、ろうそくはいただけない。いや、ろうそくに火をつけている間はまだいい。ラベンダーの香りだのレモンの香りだの、なんとなくそれっぽいにおいが、しないでもない。だが、消した瞬間がよくない。その瞬間に、ろうそくの火を消したとき特有の、あのにおいがたちこめるのである。あれはどうにもよろしくない。せっかくリラックスしたのに、ちょっとムッとする。ってことは、やったことがあるということなんだが。
そういえば、アロマテラピーの場合も、次第に鼻が慣れてきて、いつのまにかかなり強いにおいになっている、などということがあるのだろうか？ その場合は、本人にとってはリラクゼーションになるのかもしれないが、まわりの人間にとってはいい迷惑だろう。そうなると、まわりの人間も、対抗して芳香剤だの消臭剤だのを、使ったりするのかもしれない。消臭剤ならまだ良いが、芳香剤なんぞを使った日には、いろんなにおいが混じってとんでもないことになったりする。ちっともリラックスできない。
芳香剤といえば、以前からひとつ気になっていることがある。消臭つぶ入り芳香剤というような商品があるのだが、あれってどうなんだろう。芳香剤であるからには、香りを発するようになっているのだろうが、一方で消臭能力もあるという。自己否定しているような気がするのは、わたしだけだろうか？ もちろん、芳香剤に入っている消臭能力は、悪臭に対してのみ作用するように作られているのだろうとは思うのだが、その場合、悪臭とそうでない香りとの区別というのは、いったいどうやってなされているのかが、新たな疑問として沸いてくる。
においの区別ということで思い出すのが、井上夢人の「オルファクトグラム」という作品。「感想文のようなモノ」では紹介していないが、この作品はなかなか面白かった。平たくいうと、嗅覚が異常に優れている主人公の物語なのだが、その中に、おそらくこの作品のモチーフになったであろうと思われる記述が出てくる。それをかいつまんでいえば、「においには、それを表現するための言葉が存在しない」ということになるか。たしかに「甘い」だの「すっぱい」だのと、本来は味覚に対して使用する表現や、レモンの香りだのバラの香りだのと、別のものの付属品としての扱いしかされていなかったりする。「くさい」という表現はにおい独自のものなのだが、同じ「くさい」でも色々な種類があるはずで、それを細かく分類する言葉は存在しない。実際にはあるのかもしれないが、一般的には使用されていないだろう。
どうやらにおいという奴は、人間界ではかなり粗略に扱われているようだ。これはなぜかといえば、人間が視覚や聴覚を主に使用する生き物だからだろう。これが犬のように嗅覚メインの動物ならば、たぶんはなしは違ってくる。なにしろ犬という奴は、人間の何百倍だかの嗅覚をもっていて、基本的には、においで物事を判別しているのだという。しかも、道端にころがっているンコに鼻を近づけて、そのにおいを嗅いじゃったりするのだから恐ろしい。何百倍の臭さなんだろうか。
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