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[ エッセイのようなモノ ]
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2001.05.30

 以前、この「エッセイのようなモノ」を読んで「落語みたいだ」とおっしゃった方がいらっしゃった。たしかに、中にはそうでないものもあるのだが、ほとんどのエッセイのようなモノは、落語のノリかもしれない。マクラから入ってサゲで終わるというパターンのものが、結構多い。まんま「ノストラ落語」なんてぇものもあったような気がするし。  
 と思ったら、そういう意味じゃぁなかった。その人が言いたいのは「文体が落語だ」ということだったらしい。つまり「なんてぇの」とか「ってぇと」とか、そういう言葉使いが落語を思い出させるのだそうだ。  
 自分では気づかなかったが、言われてみればなるほどそうかもしれない。まあ、人によっては「こんな変な文体、落語調じゃないやい」というご意見の方もいらっしゃるだろうが、そこはそれ。ここでのわたしは他人の言うことなんぞ聞いたりしない。いや、ここでじゃなくても聞いていないような気もするが。  
 なんにしても、文体が落語調といわれて、過去に書いたものを、そのつもりで読み返してみると、たしかにそんな気がしないでもないでもないでもない。  
 ところがここで疑問が生じる。  
 「俺ってそんなに落語聞いてたっけ?」  
 である。はっきり言おう。わたしは、落語をちゃんと聞いたことはない。いやもちろん、まったくないわけではない。テレビで見たことは、何度もある。特に、最近はどうだか知らないが、NHK教育あたりで時々深夜にやっていたのを、時々見ていた記憶がある。やっていたのが時々のうえに、それを見るのが時々なのだから、その回数はかなり少ない。しかも、見ようと思って見たわけではない。たまたまチャンネルを変えていたら落語をやっていたので見た。というような主体性のない見方でしかない。  
 生の落語は、一度だけ。地元のなんとか会館のようなところに、林家喜久蔵師匠がいらっしゃったのを見に行ったことがあるだけだ。時期としては、ひょっとしてもう十年ぐらいは前のことかもしれない。少なくとも三年や五年ってぇことはないはずだ。そのときは、師匠の他に前座の方と二つ目の方も出ていたのだが。さすがに前座はへたくそだなぁ、という印象しか残ってない(笑)  
 その他の落語の知識というと、たしか講談社あたりで出している「古典落語(上)」ってぇ文庫本を持っていたぐらいで。「(上)」ったって、他に「並」だの「特上」だのがあるわけではない。「上下」あるは「上中下」のうちの「上」。つまり、続きがあるのに最初の一冊しか持ってないということ。その程度の興味なわけだ。  
 テープだのレコードだのCDだのビデオだのというものも出ているらしいのだが、それを買ったことはない。  
 じゃあ何で落語調の文章になってしまうかというと、これはおそらく時代物の小説を読むからじゃないか、と。特に都筑道夫の「なめくじ長屋」シリーズあたりが影響しているんじゃないか、と思うのだが、自分に自覚がないので、なんともいえない。  
 なんにしても、文体が落語調だ、といわれたのに、落語をよく知らないんじゃぁまずいなぁ、と思ってしまったわけだ。思ってしまってどうしたか、というと、いきなり寄席に行こうとは思わない。とりあえず、CDでも探してみようか、ということになる。  
 で、レンタルショップに行ってみた。  
 うちの近所には、ある程度大きなレンタルショップが3軒ほどある。小さな店もある。そのほとんどでビデオ、CD、DVDが借りられる。小さな店にはビデオしかないが。  
 で、探したわけだ。ところが、ない。どこにもない。ビデオにもCDにもDVDにも、落語はなかった。大きな店の3軒が3軒ともである。小さな店には、あえて行かなかった。そこには、女の人の裸の出てこないビデオは置いていない、ということを知っていたからだ。なぜ知っていたか、ということは、あまり深く追求しないように。  
 とにかく、落語のビデオやCDはどこにもないのである。店員に聞こうかとも思ったのだが、シャイなわたしにはそんなことはできなかった。  
 こうなってくると不安がよぎる。落語のビデオやらCDやらというのは、ひょっとするとこの世に存在しないんじゃないか、と。で、レコード屋……じゃないな(笑)。CDショップに行ってみると、これがちゃんと置いてある。ってことは、落語のCDは買うことはできても借りることはできない、ということか。これは「落語協会」のお達しなのかもしれない。落語のビデオやらCDやらは、レンタルではなくちゃんと買ってください、ということか。衰退する一方の落語文化を、保護しようということなのかもしれない。つまり落語家はトキと一緒ということか。  



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