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[ エッセイのようなモノ ]
貸し出し禁止

2001.06.08

 念のために書き添えておくが、って例によって先週の続きなんですが。実際には落語界は「落語協会」だけで仕切っているわけではない。他にもいくつかの団体があって、それが互いに牽制……じゃない、威嚇……でもない、協力しあっているのである。  
 で、落語の他にも、同じように「なんとか協会」のようなものがしきっているもので、レンタルビデオ屋には置いてないジャンルがある。それはご存知「相撲」。  
 相撲の場合、落語と違ってCDを探そうとは思わない。もちろん、相撲のCDだって、作ろうと思えば、ラジオ中継をそのままCD化すればよいのだろうとは思うが、そんなものはたぶん実在しないだろうし、あっても誰も欲しいとは思わないだろう。が、ビデオは存在してもよさそうだ。過去の取り組みの名場面集なんてあったら、ファンはきっと欲しいに違いないと思う。だがレンタルショップで見たことはない。で、実在するのかしないのか、ビデオやCDをレンタルではなく、売っている店に行って見た。ところがないんだこれが。相撲のビデオというのはみつからないのだ。実在しないのか、本数が少なくてほとんど店頭に出回らなかったり、すぐに完売して残っていないのか、そのあたりの事情はよくわからない。通販のみかもしれいないし。なんにしても、とにかく、ないのだ。  
 可能性としては、絶対数がむちゃくちゃ少ない、ということが考えられる。なにしろ、聞いた話しでは、テレビや新聞雑誌で使う映像だって「相撲協会提供」のものしか使えないらしいから、その制限はかなりのものなんじゃないだろうか。  
 道端で関取に出会って、  
 「一緒に写真撮らせてもらえませんか」  
 と声をかけると、  
 「協会の許可をもらって来てください」  
 と言って断られるとか、内緒で関取の写真を撮った写真週刊誌のカメラマンが、その数日後には隅田川に浮かんでいたとかいう噂もあるとかないとか。  
 もちろん、この噂はあくまでもフィクションであり、実在の事件・団体・個人とは一切関係ありません、たぶん。  
 落語にしろ相撲にしろ、「協会」の力が強いから、その意向を無視してビデオだのCDだのを、作ったり売ったり貸したりしてはいけないのだろう、ということは想像がつく。  
 そうなるともう、闇で売買するしかないのかもしれない。ほとんど覚せい剤か偽造カードの世界である。上野やら新宿やらで、怪しげな日本語を巧みにあやつる外人さんから、  
 「イイビデオ、アルマスヨ。おっぱいボイーン。ハダカタップリ」  
 なんて声かけられたら、ほぼ相撲のビデオだと思ってよい。って、買いに行ったりしないように(笑)。いや、逮捕されるからとか、そういうことじゃなく、そんなものはないんだってば、たぶん。絶対にないか、と聞かれると、自信はないのだが……  
 もちろん、中古ビデオ、CD、書籍を販売している店にも、落語のものも相撲のものも置いていなかった。もし闇ではなく、正規のルートで販売されているとしたら、少しぐらいは中古で売られていても良いと思うのだが、それがない。これはつまり、買った人は決して手放さないということか。そんなにすごいのか。何があっても手放したくないぐらい、すごい内容なのか。  
 そう思うとよけいに手に入れたくなる。だが、高い金出して買ったは良いが、ろくでもなかったら大変だし。しかも、面白くなかったからといって、それをついうっかり中古買取の店に持っていったりすると、「落語協会」だの「相撲協会」だのから刺客が差し向けられたりするから、始末におえない。しかたがないので、上野やら新宿やらに出かけ、怪しげな外人のふりをして「イイビデオ、アルマスヨ」と他人に売りつけたりすることになる。  
 いや、実際にはわたしの探し方が悪いのかもしれないから、ほんとは置いてある店も存在するのかもしれない。落語や相撲のビデオやCDの、違法ではないレンタル品や中古販売品を見たことがある、という方は、ぜひご一報いただきたい。ただし、その情報が協会に流れると、暗殺されちゃったりするかもしれないので、あくまでも内密に(笑)。  
 同じように裸の男の取っ組み合いでも、プロレスのビデオはレンタルできるのになぁ。  
 そういえばレンタルビデオ屋で相撲のビデオを探したときに、アダルトビデオのコーナーをチェックするのを忘れていたな。相撲のビデオがホモビデオの棚にさりげなく置いてあったりしたら……ビデオ屋の店員のしゃれっ気を誉めちゃうんだが(笑)。でも、そんなことをしたビデオ屋の店員は、ある日突然行方不明になっちゃったりして、隅田川あたりに浮かんじゃったりするわけだ。って、いいかげんくどいか(笑)。  



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