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2001.06.13
どういう意味だか知らないが、時々わたしに向かって、「会話が面白いよね」とか、「返しがうまいよね」などといってくる人がいる。わたしの受け止め方が間違っていなければ、どうやら誉めてくれているようである。わたしを誉めるとは、なんとも恥知らずなことをする人もいるものだと思うのだが、お門違いとはいえ、誉められるのはうれしいから、わたしの方からそれをやめさせるつもりはない。ただ、こちらとしては、取り立てて面白い会話をしているつもりはないので、どこがどう面白くて、どこがどううまいのかは、さっぱりわからないのだが。 たとえば、誰かが仕事中に「眠いよぉ」と言ったとする。それを聞いたわたしは「そういうセリフは起きてる人間が言うもんだ」と返すわけだ。あるいは、わたし自身が眠いとき、誰かに話しかけられると「人が考え事してるのに、起こすなよ」と返したりする。 これを面白いとか、うまいとか思ってくれる人がいるのである。ありがたい世の中だという他はない。 これらの返しが、一般的に見て面白いのかどうかはわからないが、中にはこれを面白いと思って、よせばいいのに真似ようとする人がいたりする。同じ真似るなら、もっとまともな人のする、まともな対応を真似た方が良いだろうと思うのだが、どうも世の中そういうものではないらしい。 ところが、これまたどういうわけだか知らないが、わたしの返しを真似るのは、なかなかどうして難しいのだそうである。なんで難しいのか、わたしには理解できない。わたしなんぞのやることぐらい、幼稚園児にだってできると思うのだが。 こういう例もある。以前にも書いた記憶があるのだが、わたしは人に何かを頼んだときに「高いよ」と言われると、ほぼ無条件で「何メートル？」と聞き返す。単純きわまりない、完全なるオヤジギャグである。一度や二度ならば面白いかもしれないが、毎度毎度これをやられたら、言われた方も飽きるのを通り越して、腹が立つに違いない。 ところが、これを真似ようと努力するバカ……失礼。奇特な方がいらっしゃったりするのだ。世の中というのは面白いというか、わけわかんないというか。 で、真似しようと努力はするようなのだが、なかなかそれができなかったりするのだそうだ。できなくったって困りはしないだろうと思うのだが、努力している本人にとっては、重大なことのようで、「なんでできないかなぁ」なんぞと悩んでいたりする。 そりゃあなた、練習が足りないんでしょ。やっぱり世の中何事も練習ですよ。 とはいえ、この世の中でギャグの練習なんてぇものをするのは、笑いを生業にしている芸人の方ぐらいしかいらっしゃらないだろう。だいたい、練習しようにも、どこでどう練習したら良いのか、わからなかったりする。ゴルフなんぞは、通称「打ちっぱなし」という練習場があるのにねぇ。これはやっぱり、ギャグの練習場というのも、世の中には必要なんじゃぁないだろうか。通称「言いっぱなし」。素敵な名前とは言いがたいが（笑）。イメージとしては、こんな感じになるだろうか。 まず、ゴルフの打ちっぱなしと違って、ボールを飛ばしたりすることはないのだから、あんなに広い敷地は必要ない。はっきり言って、壁に向かっていてもいいわけだ。 ゴルフの打ちっぱなしの場合には、ボールひとカゴいくら、という計算になるようだが、ギャグの言いっぱなしの場合には、時間いくらという計算がやりやすいだろう。 まず受付で「１時間」とか言って料金を払う。で、空いているブースに、壁に向かって立つ。やり方はいたって簡単。普段言おうとしても言えないギャグを、ひたすら繰り返すのだ。「何メートル？ 何メートル？ 何メートル？」と。これはかなり間抜け。 同じ発声、同じイントネーションばかりを繰り返してはいけない。これだ、という感覚がつかめるまで、色々なパターンを試してみるのをお勧めする。で、これだという感覚がつかめたら、それを忘れないように繰り返す。 気をつけないと、隣のブースから、 「あなたは、ギャグを言うときの姿勢が悪い。こうやらなきゃ」 なんて、頼みもしないのに教えたがる奴が現れたりする。そういう奴のギャグがおもしろいのかというと、実はほとんどの場合そうではなかったりして、結局ギャグのフォームが崩れちゃったりするのでご用心。 念のために、ギャグの練習を始める前には、ストレッチだの発声練習だのをしておいた方が良いかもしれない。気をつけないと、喉を傷めたり、腕や腰を傷めたりすることもあるかもしれないから。まあ、ほとんどの場合は、練習している本人よりも、はたで見ている人が心を痛めることの方が多いのだが。 |
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