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[ エッセイのようなモノ ]
プリプリ

2001.08.29

 プリペイドカードというのがある。プリペイ、つまり前払いしてあるカードという意味で、有名なところではテレホンカードやら、JRのオレンジカード、イオカードなどがある。最近では、私鉄各社間で共通に使えるカードも出てきているそうだ。その他にはパチンコのカードなんぞもあるし、大きな病院では、入院中に病室でテレビを見るためのカードなんてぇものまで売っている。  
 便利なことは便利なのだが、これがあまりお得な感じがしないことが多い。なぜかというと、事前にまとまった金額を払っているというのに、それに対する金額的なサービスがほとんどないからだ。昔はそうでもなかった。テレホンカードが初めて出てきたころには、3000円分のカードを買うと、プラス数十円分ぐらいは使えた。それが今ではできなくなっている。  
 なんでそんなことになってしまったかというと、これが明らかに犯罪者の皆さんのせいなんですね。つまり、不正にカードを改造して、度数を上げたカードを作ったりしたから、そういうことができないように規制しちゃったわけだ。  
 パチンコのプリペイドカード、通称パッキーカードなんぞ、昔は買った店でなくても使用可能だったのが、今では買った店でなければ使えなくなっている。これも、不正カードが出回ったからだ、ということらしい。嘘かホントか知らないが、この不正パッキーカードの出現は、神戸の震災が原因だとか。地震でつぶれたパチンコ屋から、カードの機械をくすねていって解析したのだそうな。すばらしい技術と才能とひらめきをお持ちの方がいらっしゃる。その技術と才能とひらめきを、もっと別のことに使ってくれれば、日本の未来も明るくなるだろうと思うのだが、そういう方々は、自分の技術と才能とひらめきは、自分のためだけに使うことにしていらっしゃるようで、広く世の中のために使ってくれることはまずない。だって、そんなことしたって自分が儲からないんだもん、という意見なのだだろう。あるいは、そんなことしても面白くないじゃん、かもしれない。  
 テレホンカードなんぞも、同じようなことかもしれない。こっちは公衆電話を盗んで行ったり、電話ボックスに設置してあるテレホンカードの販売機をくすねて行って解析したに違いない。そのうち、駅の自動改札やら自動精算機をかっぱらう奴が出現するかもしれない。まあ、そのあたりは、またでかい地震でも来ない限り大丈夫だろうが。  
 このプリペイドカードというやつ、金銭的なお得感はあまりないが、それ以外の便利な部分がどのぐらいあるかという点で、使うかどうかが決まってくる。たとえばJRのイオカード。切符を買わずに自動改札を通過できちゃうのである。しかも、カード対応の自動販売機なら、財布を出さずに切符が買える。自動精算機もしかり。なんでイオカードというのかと思ったら、ギリシア神話とも星の名前とも関係なく、INとOUTの頭文字なのだそうだ。で、このイオカードがあると、切符の販売機の前に大勢の人が並んでいても関係ない。並ばなくても大丈夫、というのがJRの売り文句である。  
 こりゃ便利だ。と思ったら、そうでもなかったりもする。  
 たとえば定期券を持っている人の場合。途中までは定期券を使い、降りる駅で精算するとしよう。その場合には、イオカードで改札を出ることはできない。自動精算機に定期券をつっこみ、指定された精算金額を現金またはプリペイドカードで払うかしなければならない。どんなに精算機の前に人が並んでいようとも、だ。この時ばかりは、乗車駅から切符を買ってきた人の方が、先に改札を出ることができる。  
 つまり、イオカードという奴は、定期券を持っていない人、あるいは持っていてもその有効範囲外で乗り有効範囲外で降りる場合にしか、便利感はないのである。それでもまあ、便利は便利なんだけどね。  
 しかし、よく考えてみると、実際にはほとんどの乗り物が、通常プリペイド(前払い)だったりするのである。電車、船、飛行機はまず前払いだし、バスも路線や会社によっては、距離に関係なく一律の金額で前払いというのがある。完全に後払いの公共の乗り物というと、タクシーぐらいのものじゃないだろうか。たしか、そういうクイズがある。  
 タクシーに乗るときにお金を払わない方法は? というのである。答えはもちろん、降りるときに払う、なのだが。  
 しかし、タクシーがプリペイドカード制だったら困るよなぁ。カードの残高が切れた時点で、そこがどこだろうが叩き降ろされるわけだから。もちろん、実際にはそんなことはありえない。降りるときに不足金額を精算すればよいはずだから。  



2001.11.20 追記

 JR東日本で始まった「Suica」というやつは、こんなことをここに書いたから出てきたわけではない。そりゃ絶対に間違いない。過去に何度か、ここで書いたネタをぱくられた、というようなことを冗談半分本気半分で書いたこともあるが、Suicaに関しては、ここでわたしが書くよりも前から、JR東日本では開発を進めていたはずだ。Suicaって何だ、という人もいらっしゃるだろう。平たくいえば、金額のチャージが可能な、ICカード式の定期券もしくはIOカードのことである。「Super Urban Intelligent CArd」の頭文字を取ったのだそうだが、「スイスイ行けるICカード」から「スイカ」とつけて、もっともらしい英語の名称は、後から無理やりつけたのは間違いない。わたしも過去に似たようなことをした経験がある。  
 こいつの定期券は、以前ここで書いた、定期券を使った場合の区間外での清算の面倒臭さを、一応解消してくれているようである。清算等に使った分はチャージしていけばまた使えるし、現状で見た限りでは便利そうな気配はする。ただ、今朝も改札でおろおろしている人を何人か見かけたのだが、使い方をよく理解せずに購入している人もいるようだ。でっかい看板に説明が書いてある横で、駅員さんに「これはなんなの?」と質問していたおばちゃんもいた。しかも、まだJR東日本の中でも、首都圏近郊の駅でしか使えないようだし。定着するにはまだ少し時間がかかりそうだ。  
 で、定着するよりも先に、改造Suicaなんぞが出たりする。上野あたりで怪しい外人さんが「すいかアルマスよ」なんぞと言って売っていたりする。買ってみたらホントに果物のスイカだったりして。逆に、果物屋に「スイカ入荷しました」かなんか書いてあって、金を払うとこっそり裏の方から改造Suicaが出て来たり。んなわきゃないか。  



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