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[ エッセイのようなモノ ]
雅子さま

2001.12.05

 12月1日に、皇太子妃殿下雅子さまが女の子を出産なさったことは、みなさんご承知の通りである。おめでたいことである。  
 暗いニュースが多い昨今、久しぶりの明るいニュースで、日本中が沸き立った。もっとも、マスコミが無理やり明るく盛り上げようとしていたような雰囲気も、しないでもないのだが。天皇家とは縁もゆかりもないような芸能人が、テレビの特番でお祝いの言葉を述べている光景は、申し訳ないが、見ていて多少しらけた。翌12月2日には、どこもかしこも「祝!ご誕生」だった。これはまあ、知り合いの家に赤ちゃんが生まれたら、お祝いするのが当然のように、それの拡張版だと思えば腹が立つことはないが、ここまでくると、ちょいと食傷気味である。  
 わたしは別に、天皇制に賛成するつもり反対するつもりもない。強いていえば賛成派か。その理由も、あの家族は見ていてほほえましいので好きだ、というレベルのものでしかないのだが。  
 そういった事情で、ここでこれ以上天皇家に関する話題を続けるつもりはない。まさか、このままこの話題が続く、と思っていた人はいませんよね?  
 ではなんで今回のタイトルが「雅子さま」か、ということだが。この呼称、実は回文になっているのである。  
 回文ってなに? という方もいるだろう。  
 「怪聞」だの「怪文」だのではない。子供のころから誰でも知っている、上から読んでも下から読んでも同じ言葉のことである。  
 和歌だの俳句、詩の世界にも回文はある。もともと回文があったのをその世界で取り込んだのか、あるいは先にその世界にあった回文が一般にも広まったものなのか、そのあたりの事情は、わたしは知らない。  
 短いものでは「トマト」だの「新聞紙」だの。少し長くなると「竹屋が焼けた」だの「わたし負けましたわ」だのがある。  
 念のために書き添えておくと「山本山」は回文ではない。たしかに、漢字で見れば上から読んでも下から読んでも同じだが、読みでいくと、下から読んだら「まやともまや」になってしまう。  
 少し凝ったものになると「宇津井健氏は神経痛」などというのもある。他にもいろいろあるだろうが、今はちょいと思い出せない。  
 で「雅子さま」も回文になっているわけだ。これは別に「雅子さま」でなくても「正江さま」でも「正雄さま」でも、「まさ」で始まる三文字の人名なら良いのだが。人名回文フルネーム版で、多分実在するだろうと思われるのが「小池恵子」「穂積瑞穂」「今井麻衣」など。もちろん漢字はいろいろ当てはめられるだろうし、他にもたくさんあるだろう。  
 回文の作り方としては、上から読んでも下から読んでも意味の通じる単語を探し、それを組み合わせるというのが、たぶん一番単純だろう。たとえば「イルカ」を逆にすると「かるい」になるので「軽いイルカ」などというものができる。「とんまのマント」などというのもある。  
 まあ、このあたりは、よほどうまい組み合わせにしないかぎり、あまりできの良いものは作れないだろう。複雑にするには、これをいくつか組み合わせればよい。さかさまにしたらとんでもない言葉になる単語だと、面白い回文が作れるかもしれない。  
 「くちなし」を逆さにすると「しなちく」になることに気づいたときと「しらかば」が「ばからし」になることに気づいたときには、わたしもいろいろと考えたのだが、いまだにこれという回文はできていない。  
 この回文というやつ、もちろん日本だけのものではない。英語にも同じような発想の言葉遊びでPALINDRAMEというのがある。有名なものでは「Madam、I’m Adam.」というのがあるという。他にも面白いのはあるのだろうが、あいにくわたしは知らない。名前版で有名なのは、「DRACULA」を「ALUCARD」にする、というものか。もちろん、英語の場合には「上から読んでも……」ではなく「右から読んでも……」になることをお忘れなく。  
 日本語の場合でも、ローマ字表記にすれば回文になる、というものもある。たとえば「井村晴美」という人名。このままでは回文でもなんでもないが、ローマ字にすると「IMURAHARUMI」と立派な回文になる。  
 小説のネタにも、この回文を使ったものがあるようだ。正確には回文ではなく、逆から読んだら違う意味になったり、ローマ字表記が鏡に映っていたために違って読めたり、というパターンになるのだが、推理小説なんぞのネタにはしやすいかもしれない。「大塚」をローマ字表記して逆から読むと「AKUTOO」になるのだが、使えないだろうか?  
 暇つぶしに回文を考えてみる、なんてぇのも、ちょっと面白いですよ。  



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