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[ エッセイのようなモノ ]
悪夢ふたたび!?

2004.05.07

 たしか、二月の上旬のことだった。  
 で、いきなり話しはそれてしまうのだが、上旬とか中旬とかの「旬」という言葉が、どういう意味を持っているのか、知っていて使っている人はどのぐらいいるのだろうか? というよりも、知らないで使っている人の方が多いのではないかと思うのだが、いかがだろう。あなた「旬」がどういう意味か知ってます?  
 いや、今回はそういう話しじゃないんだが。  
 二月の上旬のこと。仕事中にやけにだるさを感じた。仕事中に「かったりぃなぁ」と思うのはいつものことなのだが、それはまた意味が違う。そのときは、精神的にではなく、物理的にだるかったのだ。それでも、真面目で仕事熱心で頑張り屋のわたし(って誰のことだ?)は、とりあえず定時までいつも通り仕事を続けた。正確には「いつも通り、仕事をしているフリを続けた」だが。  
 家に帰って体温を計ると、概ね三十八度とか九度とか。とりあえず、咳だのくしゃみだのは出ていないが、こりゃまぁ風邪だな、と思うのが人情ってもの。翌日は会社を休んで病院に行った。  
 そこで選んだ病院は、もちろん、過去にわが家で「ヤブ」と認定したあの医者ではない。ちゃんと別の内科医に行った。  
 で、医者いわく、  
「扁桃腺だと思うけど、時期が時期だけに、念のためインフルエンザの検査もしておきましょう」  
 なんでも、扁桃腺が腫れている場合に使用する薬と、インフルエンザの治療薬とは、まったく違うものなのだそうで、間違って使うと、とんでもないことになるのだそうだ。どうとんでもないことになるのかは、そのときには聞く元気がなかった。  
 ついでにいっておくが、このときのインフルエンザは鳥インフルエンザではない。普通に人間がかかるインフルエンザなので、お間違いなきよう。  
 で、検査の結果扁桃腺が腫れているだけ、と言われて、点滴を打ちの、薬をもらいのしたのだが、そのときにわたしの頭をよぎったのは「またか?」という不安だった。  
 そう、五年半ほど前のあの一件だ。  
 当然、わたしは医者に確認した。医者の回答は、  
「現状では、そこまでひどくはなってませんよ。とりあえず、薬を飲んで様子を見ましょう。ただ、それで良くならなかったら、耳鼻科で手術の可能性もありますね」  
 ということだった。とりあえず一安心。ひどくならないことを祈りつつ、おとなしく薬を飲んで様子を見た。  
 真面目で信心深くて普段から健康管理に気を使っているわたし(だから誰のことだよ)の祈りが通じたのか、おかげさまで一日寝込んだだけで健康を取り戻した。  
 かに見えた……  
 恐怖は、一ヶ月ほどあとに現れ始めた。  
 まず、のどが時々痛むような気がする。口の中が苦いような感じがする。明らかに口臭がひどいときがある。  
 これはひょっとして、例のあの症状と同じじゃないのか? やはり薬を飲んだだけでは良くならなかったのか? 神はわたしを見捨てたのか?  
 そうなったら、早めに病院に行った方が良いはずだ。早ければ早いほど良いはずだ。だがしかし、万が一即入院などとなったときのことを考えると、仕事の状態に問題がある。今仕事を休むわけにはいかない。真面目で仕事熱心で頑張り屋のわたし(んだから誰だよそれ)は、微かなのどの痛みと、時々口に広がる苦味と、漂っているであろう口臭に耐えて、仕事にはげんだ。いや、口臭に耐えたのはまわりの人間か?  
 とにかく、一週間ばかり休んでも支障がない程度に仕事に余裕ができるまで、ひたすら耐えた。一説には、わたしがいなくても一向に支障はない、という話しもあるのだが、まさかそんなことはないだろう。  
 で、やっとめぐってきた、一週間ばかり休んでも支障が出ない時期。そう、ゴールデン・ウィークである。バッグに数冊の本とノートパソコンを突っ込み、わたしは万全の準備を整えて、あの耳鼻科の門をくぐった。いや、実際には、あの耳鼻科に「門」は存在しないのだが、あくまでも言葉のあやってことで。  
 のどを見られ、鼻の穴をのぞかれ、レントゲン写真を撮った結果、医者の口からでた言葉は、  
「のどには異常なし。痛むとしても、気にしなくて大丈夫。副鼻腔に若干の影が出ているので、そこに少々膿がたまっているのだろう。とりあえず、通院で治るよ。でも、しばらく様子見て、治らないようだったら入院だね」  
 って、人がせっかく時期を狙って準備して来たのに、嫌がらせかよ。  



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