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[ 小説のようなモノの書き方 ]
まずはいきなり書いてみる
どこから書き始めるか


 机に向かい、眉間にしわを寄せ、腕組みをして真っ白い原稿用紙を睨みつける。やがておもむろにペンを取り、何文字か書いては原稿用紙を丸めて捨てる。机の横のごみ箱は書き損じた原稿用紙で溢れ、入りきらない紙屑にごみ箱自体が埋もれている。廃棄された苦労の産物は、ごみ箱のまわりだけでなく、部屋中に散乱して産みの苦しみを象徴している。  
 これが、小説を書く、という事に対する、昔からのイメージでした。  
 もちろんこれは日本のイメージで、海外、特にアメリカやイギリスでのイメージでは、原稿用紙とペンの代わりに、タイプライターが使用されます。  
 いまでもこれを頑なに守り続けている人もいることでしょう。それほど、小説を書き始める、という作業は大変なものなのだそうです。  
 基本的に、最初の数枚で読者の心を捕らえなければいけない。  
 印象的な書き出しで、その作品のできの半分が決まってしまう、と考えている人もいるようです。確かに有名な作品の中には、そういう作品がたくさんあります。  
 それぐらい、小説の書き出しは重要なのでしょう。  
 しかし、このホームページは、「小説の書き方」のページではありません。あくまでも「のようなモノの書き方」のページです。なにも、苦しい思いをしてまで、たかが「のようなモノ」を作り出さなくたっていいじゃありませんか。どうせ、ちゃんとした小説にはなりきれない(いや、もしかしたら世紀の大傑作が生まれるかもしれませんが、それはあくまで結果論。目標はどこまでいってもお気楽な世界です)、単なる趣味の世界の産物を作り出そうっていうんですから。本格的な小説の書き方に囚われるのはやめましょう。  
 しかも、このホームページのタイトルには、「ワープロを使った」という文句も付いていますから、原稿用紙とペンも出てきません。タイプライターも出てきません。  
 ワープロもタイプライターも似たようなものじゃないか、と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、それは大きな間違いです。  
 ワープロには、タイプライターには絶対にできない、すごい機能がついています。  
 それが、削除と挿入。  
 気に入らない部分を後で削除することも、新しいアイデアを後から挿入することもできるのです。  
 この二つの点、「お気楽に」と「ワープロで」を踏まえて、小説のようなモノを書く場合、こりゃもうどこから書き始めるかは、一目瞭然。  
 好きなところから書き始めちゃってください。  
 主人公が危機に陥るクライマックスから書こうが、すべての事件が解決したエンディングから書こうが自由です。もちろん、最初のシーンが頭に浮かんでいるのなら、先頭から書き始めてください。  
 推理小説を書こう、なんて思っている場合、いきなり探偵が謎を解くシーンから始めちゃうって手もあります。  
 もちろん、その時には、小説の全体なんて決まってる必要はありません。そんなものは、あとからどうにでもなります。ちゃんとストーリーを組み立てて、なんて考えちゃいけません。そんなことをしている間に、せっかく思い付いたすばらしいシーンが、どこかに消えてしまう可能性だってあるんですから。  
 書きたい所から書き始める。頭の中にあるシーンから書き始める。  
 これが「小説のようなモノ」を書く時の、一番正しい方法です。  
 場合によっては、ちゃんと小説のように書けることもあるでしょう。場合によっては、イメージだけがあって、小説風に書くことができない場合もあるでしょう。  
 頭の中に、映像が出来上がっている場合は、それを片っ端から文字にしてください。  
 この時点では、まだ小説の体裁を整えていなくてもかまいません。もちろん、いかにも小説風になっていれば文句なしですが、それを気にするあまり、大事なひらめきが逃げてしまっては意味がありません。  
 たとえば、映画やドラマの予告のように、断片だけを書いていってもかまいません。  
 
 どしゃ降りの雨に打たれ、新宿の雑踏の中、人をかき分けて走る主人公。  
 恐怖に引きつるヒロイン。高笑いする悪役。  
 
 そういうイメージが頭の中にあったら、それを文章にしちゃいましょう。  
 最初は、今書いたようなイメージだけでいいんです。まずはとにかく何か書き始める。修正は、あとからいくらでもできます。そのためのワープロなんですから。  
 文章にしたものを後から読み返すと、そこからまたイメージがわいてくる場合もあります。走る主人公の服装やら、高笑いする悪役の顔やら。  
 これが、頭の中にしっかりできている場合は、いきなり小説風に書き始めることも可能ですが、気をつけないと、イメージが消えてしまいます。  
 絵を書くようなつもりで。  
 いきなり細かい部分をかかないで、まずは輪郭だけ。そこから、少しずつ細かくして行きましょう。  
 とにかくまずは、頭の中にあるイメージを、キーボードに向かって吐き出してください。  
 ただし、書いた内容は、できるだけ保存してください。  
 どんなに断片的な内容でも、残しておいて損はありません。印刷までする必要はありません。フロッピーディスクにでも、ハードディスクにでも、保存用のメモリにでも、残しておいて、後でまた引っ張り出せるようにしておきましょう。  
 で、後でまた引っ張り出して、走る主人公の服装を細かく書いてみたり、余計な部分を削ってみたり。  


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