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[ 小説のようなモノの書き方 ]
まずはいきなり書いてみる
書くことがない場合


 書きたいこともないのに小説を書く、というのは、実は非常に無茶なことなんです。まっとうな小説の書き方の本なんぞを見ると、「テーマがどうのこうの」とか「モチーフがなんたらかんたら」とか「その作品で言いたいことは」とか、堅苦しいことが大抵書いてあります。でもそこはそれ、何度も言うようですが、ここは「小説のようなモノの書き方」のホームページですから、なんとかしちゃいましょう。  
 まず、一つの方法として、朝起きてからのことを書く、というのがあります。  
 なんだよ、日記かよ。なんて思わないように。  
 その日の朝のことである必要はないんです。何か思い出に残っている朝のことでも、明日の朝の予定でも、自分が理想とする朝のありかたでもいいんです。つまり、現実の朝のことである必要すらない、ということです。  
 この場合はもちろん主人公は自分ですが、ありのままの自分を書く必要もありません。日記を書くわけじゃないんですから、理想の自分を書いてください。いや、もちろん、自分が主人公である必要もありません。好きにやってください。  
 気を付けてほしいのは、あくまでも「小説っぽくする」ということを忘れてはいけない、ということ。  
 
  九時に目が覚める。  
  トーストとコーヒーで朝食をとる。  
 
 なんてぇ書き方ではいけません。  
 「見た目を小説っぽくする」「内容を小説っぽくする」の項を良く読んで、いかにも小説に見えるように心がけてください。  
 ただし、あまりムキにならずに。肩の力を抜いて。誰に採点されるわけでもないんですから。  
 うまく「小説っぽく」書けない、という場合は、とりあえず情景描写からしてみましょう。  
 目が覚めた時に見えるものを、順番に書いていけばいいのです。こんな風に。  
 
  目を開いても、あたりは闇の中に包まれていた。暗闇ではない。真っ白な闇だった。  
  軽く頭を振ると、覆い被さっていたシーツが落ちて、やっと部屋の中が見えるようになった。  
 
 もちろん、こういう書き出しでなくてもかまいません。ちゃんと、いつものように目覚めて、いつも見えるものが見えたことにしたければ、それを描写してみてください。  
 ここでも、「どこから書くか」で説明したように、はじめから順番に書く必要はありません。  
 
  もう完全に間に合わないとわかっていても、わたしは鞄を抱えて部屋を飛び出した。  
 
 と、まず書いて、その前に、  
 
  時計を見るとすでに九時を過ぎていた。  
 
 と書き足すような方法でもかまいません。  
 さて、時計を見たのは、目が覚めた直後か、それとも目覚めてから何かをした後なのか。それによって状況が変わります。  
 時計を見てから部屋を飛び出すまでに、何かしていたことにしたい場合は、時計を見た一行と、部屋を飛び出した一行の間に、その間の出来事を追加して行きます。  
 時計を見て、あわてて部屋を飛び出したことにしたい場合には、時計を見た一行の前に、それまで何をしていたのかを書けばいいのです。  
 最後の一行を、  
 
  もう完全に間に合わないとわかって、わたしはのんびりコーヒーを飲みはじめた。  
 
 と変えれば、内容はまた変わってくるでしょう。  
 この調子で、朝起きてから家を出るまでの間を小説っぽく描写したら、あとは、その前後にいろいろな描写を付け加えていけば、小説のようになってきます。  


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