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[ 小説のようなモノの書き方 ]
文章を小説っぽくする
人称(誰の目を通して書くか)


 わたしが「人称」という言葉を覚えたのは、たぶん中学一年の英語の時間だったと思います。  
 「I」が一人称。「YOU」が二人称。「HE・SHE」が三人称。  
 小説でも一緒です。地の文(会話以外の部分ですね)で、「わたしが……」ってな書き方をしているのが、一人称小説。「きみが……」ってな書き方をしているのが、二人称小説。「彼が……」「彼女が……」ってな書き方をしているのが、三人称小説。ひらたくいうと、これだけです(笑)  
 一人称小説は、基本的には登場人物の一人の目を通して、物語が語られます。  
 登場人物ったって、必ずしも人間とは限りません。このタイプでは、夏目漱石とかいう人が書いた、猫の目を通して語られる物語が、かなり有名です。  
 「ある朝目を覚ますと、わたしは巨大なブタになっていた」ってな文章です。  
 順番から行くと、普通は次のパターンには、二人称が来るのでしょうが、それは飛ばして三人称。  
 三人称は、別名「神の視点」と呼ばれています。ひらたく言えば、小説の中には登場しない存在の目を通して物語が語られるのです。まあ、一般的な映画やマンガを、文章で表現したと思えばいいでしょう。  
 「ある朝目を覚ますと、彼は巨大なブタになっていた」ってな文章です。  
 通常の小説は、この一人称か三人称のどちらかが使用されます。  
 二人称小説というのは、極めて希です。  
 これは、まるで作者が読者に語りかけるかのように、物語が語られます。この形式の小説を読んでいると、だんだん異様な気分になって来ます。  
 なんせ、「ある朝目を覚ますと、きみは巨大なブタになっていた」ってな感じになるんですから。  
 実際には何人もの作家が書いているのでしょうが、わたしが知っているこの形式の小説は、都筑道夫の「やぶにらみの時計」という小説だけです。  
 どれを選ぶかは、作者の自由。ただし、ひとつの小説では、基本的にはひとつの人称で書き進めてください。意識して、章毎に人称を変えるのはいいのですが、みっつの人称がごっちゃになると、それはもう、小説以前に、文章ではなくなると思います。そのうちためしてみましょう(笑)  
 ちなみに、いずれ<ふろく>の<小説のようなもの>の中で発表する予定(あくまでも予定)の「グラン」という小説は、意識的に章毎に一人称と二人称を書き分けています。お楽しみに(しないか、誰も)  
 さて、理由は「視点」で述べますが、ド素人が小説を書く場合、一人称にするのが一番いいでしょう。  


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