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[ 小説のようなモノの書き方 ]
書くための練習のようなモノ
ひとりディベート

1998.05.05

 最近はあまり話しを聞かなくなりましたが、ディベートというやつ、一時期やたらとはやりました。まあ、話しを聞かないからといって、世の中からディベートがなくなったわけじゃなくて、単にマスコミが騒がなくなっただけですけどね。書店へ行って、ビジネス書関連の棚を見れば、今でもちゃんとディベート関連の本はあります。  
 一応、ディベートを知らない方のために説明しておきましょう。  
 まず、二手にわかれます。これはひとり対ひとりの場合もありますし、複数対複数の場合もあります。通常は、この他に審査員のようなものも用意します。  
 で、何らかのテーマを用意します。これはまあ何でもいいんですが、今時のテーマでいけば、「援助交際について」とか「中学生がナイフを持つことについて」なんてぇのがあるでしょうか? その決められたテーマに対して、二手に分かれた双方が、一方は賛成派として、一方は反対派として意見を戦わせるわけです。  
 その場合、自分本来の意見が反対だろうが賛成だろうが関係なく、与えられた側の意見を提示しなければならないわけです。  
 通常は、テーマと賛成派か反対派かを決めたあとに、多少の時間が与えられます。その間に、情報を仕入れ、資料をまとめ、対決に備えるわけです。で、本番になったら、順番に何分かごと交互に、意見を言い合うわけです。その場合はもちろん、先に相手が言ったことに対する反論を、資料に基づいて行わなければなりません。  
 これはもちろん、最終的にどちらが正しいかを決めるものではなく、どちらの情報収集能力が高く、意見の提示の仕方がうまく、相手の意見を正しく理解しているか、ということで勝敗を決めるゲームなわけです。  
 さて、ひとりディベートです。  
 ひとりディベートの場合は、本当のディベートとはちょっと違います。本当のディベートの場合は、ひとつのテーマに対して、賛成派と反対派に分かれるわけですが、ひとりディベートの場合は、賛成と反対に分かれるというよりも、それぞれの意見を言い合う、という形になります。  
 もちろんひとりディベートってぇぐらいですから、二手にわかれるわけにはいきません。もちろん、自分の頭の中に二人の人間を用意するわけです。その場合、一方は自分にしておいた方が楽でしょうが、両方とも架空の人物設定でもいいでしょう。どちらの場合でも、必ず二人の性格設定をしてください。まあ、簡単なのは、一方が賛成派、一方が反対派という、通常のディベートと同じ設定ですが。  
 テーマは、別に重たいものでなくてもかまいません。今日の昼飯は何にしよう。なんて単純なものでもかまいません。もちろん、社会派に徹してきちんとしたテーマでもいいわけですが。今日の昼飯をテーマにした場合、さすがに頭の中の二人の性格設定を賛成派と反対派にしてしまうわけにはいかないでしょうから、一方は健康重視型、一方は味重視型なんてぇのにするといいかもしれません。  
 あとは、頭の中(もちろん、ちゃんと文章にしてもかまいません)でこの二人に意見を戦わせるわけです。できるだけきちんと性格設定にのっとって。まあ、半分は自分の作り出した登場人物に、お話しの中での会話以外の会話をさせるようなつもりでかまいません。  
 これをすることによって、自分の中にできるだけいろいろな物の見方、いろいろな考え方を用意することができるようになります。  
 小説のようなモノの中には、いろいろな人が現れるわけですから、それぞれの人がそれぞれの考えを持たなければ、お話しは成り立ちません。出てくる人がみんな善人で、同じ考え方の人ばかりでもかまいませんが、お話しとしてあんまり面白いものができそうな気はしませんよね。  
 「人間観察」の項で紹介したのは、人間の外側、見た目の状態を観察する練習でした。外側の観察というのは、実は自分自身でやるのは非常に難しいことだということは、充分想像できることだと思います。自分が怒っている最中に、どんな表情で怒っているのかなんて、なかなか観察できるものではありません。そこで、他人を観察するわけです。その場合は、相手が実際に怒っているかどうかはあまり問題ではありません。どういう表情が怒っているように見えるか、を分析すればいいわけです。  
 しかし、小説の中に登場する人々だって、頭の中では何かを考えているわけです。それぞれの性格にしたがって、それぞれ違ったことを考えているはずです。ところが、現実の世界では、まわりの人が実際に何をどう考えているかはわかりません。想像するしかないわけです。そこで、自分の頭の中で、架空の人物を作って、それぞれの性格に基づいていろいろなことを考えてもらう練習をするわけです。  
 ただ、この練習を外でやる場合は、頭の中で考えるだけにして、間違っても声に出さないように注意してください。そうしないと、「人間観察」の項で紹介した電車の中の変な人のようになってしまうことも・・・・あ、もしかしたら、あの人はすでにそれをやっていたのかも。  


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