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[ 小説のようなモノの書き方 ]
書くための練習のようなモノ
本を読むのが苦手な人へ

2000.06.04

 本来、小説を書こうという人が「本を読むのは苦手で」などと言おうものなら、まともな「小説の書き方」系の本ならば「そんな奴に小説は書けない」と一喝されてしまうところでしょうが、そこはそれ。ここは「小説のようなモノ」の書き方のサイトですから、そのあたりもなんとかしてしまいましょう。  
 とはいっても、たとえ「のようなモノ」といっても、まがりなりにも小説っぽいものを書こうという場合には、どうしても小説とはどういうものなのか、ということを知る必要が出て来るのは、しかたのないことです。そのためにはやはり、まったく読まずに済ませるわけにはいかないんですね。できれば、可能な限りたくさん読んでいただきたい。でも、読むのは苦手。さて、どうしましょう。  
 まずは、読みやすい本を読んで、小説を読む練習をしてみてください。  
 では読みやすい小説というのはどういうものか、ということですが。  
 まず、あまり長くないこと。本を読みなれていない人には、長い作品を読むのは苦痛以外のなにものでもないでしょう。できるだけ短い作品を選んでください。  
 つぎに、あまり難しくないこと。たとえ短い作品でも、やたらと難しい内容では、頭に入ってきません。  
 とりあえずこのふたつをクリアする小説としては、星新一や阿刀田高志あたりのショートショートがおすすめです。もちろん、他の作家の書いたものでもかまいませんが。読書慣れしていない人にとっては、ショートショートはかなりのおすすめです。  
 ただし、ショートショートというのは、基本的には細かい描写を極力削っていたりしますから、そういう点での勉強にはあまり向いていません。ショートショートから得られるものは、表現方法や描写というよりも、物語の展開とか、そういうものだと考えてください。というよりも、今ここを読んでいる人は、たぶん本を読むのが苦手な人でしょうから、読んだ本から何かを得ようとするよりも前に、まず小説を読むことに慣れるのが先決でしょう。ですから、そこから何かを得ようなんて考えないで、とにかく数をこなすことを考えてください。物語の始まりからエンディングまできちんと読み終える、ということを、できるだけ多く経験してください。それにはショートショートがうってつけです。  
 ショートショートよりも、もう少し長めのものを、という方には短編が良いでしょうが、そのあたりからやはり、本を読むのが苦手な人にはちょいと辛くなってくるかもしれません。それでも、文庫本一冊におはなしが十本以上入っている短編集ならば、比較的読みやすいはずです。  
 まあ無理をせず、短いものをいくつも読んでみてください。  
 でも、小説を読み慣れていない人の場合、どんな作品が読みやすいか、というのは、少し判断しづらいかもしれません。おおまかな目安としては、紙面が白っぽいものを選ぶのが良いかもしれません。紙面が白っぽいということは、漢字が少ないという場合もありますし、行間が広いという場合もあります。文字ひとつひとつが大きいという場合もあります。とにかく、ぱっと開いて比較的白っぽく見える本は、たぶん読みやすいはずです。  
 しかし、普通に考えた場合には、あまりそういう小説はないかもしれません。もちろん、まったくないわけではありませんが、なかなか探すのが大変です。  
 そこで、ショートショートや短編よりは、多少長めになってしまいますが、それでも読みやすい小説はないか、と考えたときに、ちゃんとあるんですね、そういうジャンルが。それは、子供向けの小説。  
 子供向けったって、絵本とかそういう意味ではありません。小学校高学年あたりの子供のために書かれた小説が、入門用にはかなりいいです。「子供用の本なんか読めるかよ」なんて馬鹿にしちゃいけません。なかなかどうして、あなどれない本が山ほどあるんですから。しかも、よく見れば「子供向け」という大きなくくりの中に、推理小説はある、SFはある、ホラーはある、冒険小説はある、恋愛小説だってなくはありません。つまり、ありとあらゆるジャンルが揃っているわけです。ないのはたぶんポルノぐらいでしょう。  
 しかもこの手の本には、古今東西の有名な作品を子供向けに直したものもたくさんありますから、普通に読んだら面倒臭い名作も、かなり楽に読めるわけです。これはお得。  
 さっそく近くの書店に行って、探してみてください。  
 中には「いい年こいて子供向けの本を買うのは恥ずかしい」と考えてしまう人もいるかもしれません。ホントは恥ずかしくもなんともないことなんですけどね。でも、どうしても恥ずかしくてダメだ、という人のために、いい方法を教えましょう。レジで一言「プレゼント用にしてください」と言えばいいんです。  
 とにかく、子供向けの小説は、読書慣れしていない人の入門用としてはうってつけです。欠点としては、ここを読んでいるあなたが、もし小学生だった場合には、このアイデアはまったく役に立たない、ということぐらいでしょうか。まあ、小学生でここを読むような人は、おそらく「本を読むのが苦手」なんて思ってないでしょうから、よしとしちゃいましょう。  
 そして、本を選ぶときに一番大切なことは、興味のある内容の作品を読む、ということです。なんとかいう賞を取った作品だからとか、人にすすめられたからとか、作者が有名だからとか、なんか聞いたことのあるタイトルの本だからとか。そんな理由で読む本を決めてはいけません。自分が読む本は、自分の感性で決めてください。書店に行って、とりあえず最初は「このタイトルどこかで聞いたことがある」とか「この作者の名前知ってる」とか「なんかおもしろそうなタイトルだな」とか、そんな理由でも良いのですが、目についた本を手に取って、少なくともパラパラとめくってみる。あるいは、帯やら裏表紙に書いてあるあらすじを読んでみるとか、あとがきやら解説やらを読んでみるとか。それで、なんとなくでかまわないのですが「おもしろそうだな」と思った本を読んでください。  
 慣れないうちは選ぶのも一苦労かもしれません。なんせ、書店には売るほど本が並んでますから。ってあたりまえですが。そのうち、なんとなくわかるようになってきます。  
 とにかく最初のうちは、自分で中を少し見て「おもしろそうだ」と思った本を読んでください。  
 で、もし途中で投げ出しそうになっても、我慢して読むことはありません。たかが小説です。途中で投げ出したからって、人生に大きな影響はありません。まあ、お金出して買った本だから、最後まで読まなきゃもったいない、と考える人もいるでしょうが。そういう人は、図書館を利用するとか、古本屋で買うとか、そういう方法で節約しましょう。図書館ってのは、なにも本が好きな人が行く所とはかぎらないんです。本を読むのが苦手だから、金出してまで本を読む気になれない、という人が行ったって、別に誰にも怒られやしませんから。  
 そして、これも大事な考え方なんですが、せっかく「おもしろそうだ」と思って読み始めた小説なのに、読んでみたらおもしろくなかった、という場合。結局途中で投げ出してしまった場合。そこで「選ぶのが下手なんだ」とか「やっぱり本を読むのは苦手だ」なんて考えないでください。おもしろくなかったのは、あなたのせいじゃないんです。それは、あなたをおもしろがらせることができなかった、作者のせいなんですから。  


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