縦書きで読む
[ 小説のようなモノの書き方 ]
書くための練習のようなモノ
あらすじを書こう

2003.11.23

 小説の公募の応募要項を見ると、たいていは「×枚程度の梗概をつけること」と書いてあります。指定されている梗概の枚数は、本編の規定枚数によって違うでしょうが、ほとんどの場合は三枚から五枚程度。長い場合でも十枚ぐらいでしょうか。  
 「梗概」は「こうがい」と読んで、平たくいえば「あらすじ」のことです。ただし、ここでいうあらすじとは、文庫本の背表紙などに書いてあるような、「さて××の運命は!」とか「名探偵の推理が冴える!」とか「やがて衝撃の展開に!」というような、途中で終わっている、読者に期待を持たせるためのあらすじではありません。結末まできちんと書かれたものでなければならないのです。推理小説ならば、誰が犯人で、どんなトリックで、ということまできちんと書かれている必要があります。  
 なぜそんなものをつける必要があるか、というと、それはもちろん審査を楽にするためですね(笑)  
 もちろん、応募している側としては、あらすじなんかで決められてたまるか、という気持ちもあるでしょうが、選ぶ方としても、はっきりいってろくでもない話しばかりを何本も読まなきゃいけないんだから、少しぐらいは楽させろ、という気持ちがあるでしょう。いや、ホントにそういう理由かどうかは知りませんが(笑)  
 まあ確かに、読者が初めて書店でみかけた作家の小説を、読むか読まないか決める要素のひとつに、あらすじで決める、というはあるはずですから、その選考のしかたはそれほど間違っちゃいないはずです。  
 あらすじが面白くない作品は、本編も面白くない可能性が高いでしょう。中には、あらすじは面白そうだったのに、本編がちっとも面白くない、ってな作品もあるでしょうが、そういう作品はあらすじつけなくても面白くないはずですから、あらすじのせいにしちゃいけませんね。  
 また公募の場合、あらすじを書かせることによって書き手の能力がある程度わかる、ということもあるのだそうです。ここではそのあたりも含めた練習の方法を紹介する予定ですが、応募する場合のあらすじについて、もう少しお話ししておきましょうか。  
 とはいっても、わたしはその方面の専門家ではありませんし、応募したこともありませんから、絶対に正しいかどうかはわかりません。気になる方は、どこかできちんと調べた方が良いでしょう。  
 まず、基本的には読み物としての体裁になっていなければいけないようです。つまり、箇条書きなんかじゃいけない、と。もちろん、句読点は一文字分使うだの、段落が変わったときに一文字あけるだのといった原稿用紙の基本的な使い方もきちんとしていなければいけないでしょう。梗概の規定は三枚だけど、とても三枚に収まりきらないから、という理由で、改行なし句読点なし、なんてぇあらすじは書いちゃいけない、ということです。  
 また、本編は一人称でも、梗概は三人称で書かなければいけない、という噂もあります。このあたりは本当かどうかわかりません。  
 あとは、最初にも書いたとおり、エンディングまできちんと書くこと。  
 このぐらいでしょうか。  
 が、今回ここで話題にしたいのは、実は公募のときの梗概の書き方ではないのです。  
 あらすじを使った練習方法というのがあるのです。それを紹介します。  
 やり方はこう。  
 まず、好きな小説を用意します。自分で書いた作品でなくて構いません。というか、自分で書いた作品じゃない方が良いかもしれません。長編でも構いませんが、先のことを考えたら短編の方がよいでしょう。  
 で、好きな小説ですから、当然内容はご存知のはずでしょうが、もう一度きちんと読み直してください。そして、お話しを頭の中に叩き込んでください。お話しを頭にしっかり叩き込むつもりで読み返してください。  
 頭の中に叩き込むのは、お話しだけで結構です。細かい描写まで覚える必要はありません。ましてや丸暗記なんてする必要はありません。というよりも、そこまでしないようにしてください。やれっていっても無理か(笑)  
 お話しは叩き込めましたか?  
 では、その小説のあらすじを書きましょう。作品を手元に置いて、本をパラパラめくりながら書くのではなく、自分の頭の中に残っているお話しを、そのまま文章にしてみてください。好きな作品を選んだはずですから、そのぐらいはできますよね。  
 原稿用紙三枚から五枚ぐらいで。長編だったら十枚ぐらいは必要かもしれません。  
 あらすじを書く場合の注意としては、それほど多くのことはありません。公募に使う梗概の書き方とほとんど同じ。  
 大切なことは、あらすじとして必要な部分と不要な部分をしっかりと見極めること。本文に書かれていることでも、あらすじにまで書く必要のないことは、山ほどあります。というより、本文に書いてあることを、何も削らずにすべて書いてしまったら、あらすじになりませんね(笑)。  
 逆に、本文ではあっさり流している部分が、実は非常に重要な部分、ということもあります。そういう場合は、そこをきちんと書いてください。  
 どこかに伏線が張ってあるかもしれません。それもきちんと書いておきましょう。ただし、「これが伏線」などと書いてはいけません。可能な限りお話しとして書くように心がけてください。  
 気をつけることはこのぐらい。  
 もし、好きな小説が思いつかないという方がいらっしゃいましたら、一日も早く好きな小説を見つけてください。  
 はっきりいって、好きな小説のひとつやふたつ、すぐ出てこないような場合には、いくら「のようなモノ」とはいえ、小説を書くのはかなり困難なのです。まあ、場合によっては「俺が読みたい小説が世の中に存在しないから、俺が自分で書くんだ!」という方もいらっしゃるでしょうが、そういう方はこんなサイトでウロウロしているはずがありませんね。さっさと書いてさっさとどこかに発表しているはずです。  
 それでも、どうしても好きな小説がない、という方もいらっしゃることでしょう。うちはそういう方も救済しちゃいます。なにしろ「ド素人によるド素人のための」ですから。  
 好きな作品が思い当たらないという方は、毎度おなじみ有名なむかしばなしや童話を使いましょう。桃太郎でも浦島太郎でも、シンデレラでも白雪姫でも。あるいはマンガでもかまいませんし、映画でも結構です。ただ、マンガや映画は映像で見せる部分が多いジャンルですので、まったくの「ド素人」が小説用のあらすじに直すのには、もしかしたら適さないかもしれません。  
 あと、むかしばなしや童話を選んだ場合、気をつけなければいけないことに、一般に知られているその物語が、すでにあらすじレベルの内容でしかない場合もある、ということです。桃太郎や浦島太郎は、通常は絵本レベルでしかみなさん知らないでしょうから(わたしも知りません)、それをまたあらすじに直そうとすると非常にきついことになります。  
 その場合には、かまいませんから、知っているお話しをそのまま書いちゃってください。  
 ひょっとすると、みんなこのあたりから練習した方が良いのかもしれません。つまり、既存のむかしばなしや童話を、何も見ないで書く、という練習を。でも、それだとあまり面白くない可能性がありますし、小説のようなモノを書く練習っぽくないでしょ(笑)  
 だからまあ、とりあえずは好きな作品のあらすじを書いてみることにしましょう。  
 好きな小説にしろ、むかしばなしや童話にしろ、それをきちんと三枚から五枚のあらすじにしてください。あ、十枚の場合もあるって言いましたっけ?  
 このあたりの枚数の加減は、ちょいと微妙な問題かもしれません。とりあえず、自分の頭で「これだったら五枚ぐらいかな」とあたりをつけて、それにそって努力してみましょう。途中で五枚じゃ足りないと気が付いても、基本的には枚数を増やすのではなく、なんとかして最初に決めた枚数内に収める努力をしてください。それも練習です。  
 逆に最初に想定した枚数に満たない場合はどうするか。これは実はそこまででやめちゃっても構いません。ただし、十枚を予定していたのに九枚で終わってしまった、という程度なら問題はないでしょうが、十枚を想定していたのに二枚で済んでしまったとしたら、これはかなり問題がありますね。枚数の想定のしかたに問題がある、ということです。お話しの全体量の把握と、それをあらすじとして言葉に直したときの文字数の換算がうまくできていない、ということです。これはまずいですね。  
 これは正直いって、ある程度の訓練が必要になると思います。何回か練習を重ねるうちに、感覚がつかめるようになるはずですから、くじけずに練習してみてください。  
 いきなりうまくやろうったって、天才じゃない限り無理です。って、いきなりうまくいったから自分は天才なんだ、なんて思い込んだりしないように(笑)  
 あらすじが完成したら、それを印刷しましょう。たぶん、ほとんどの方がワープロやパソコンで入力したでしょうから。もちろん、手書きの方は印刷しなくて結構です。って、あたりまえか(笑)  
 このとき、かならず縦書きにして印刷してください。そこに何の意味があるのか、ということは考えずに。まあ、日本語で小説を印刷物として出す場合は、基本的に縦書きなんだ、と考えておけばよいと思います。  
 ですから、手書きの方も必ず縦書きで書くようにしてください。  
 で、印刷したものを読んでみてください。  
 どんなお話しなのかは、すでに知っているはずですが、それでもきちんと読んでください。そのあらすじを読んで、本編を読んでみたいなぁ、とおもいましたか? 思いますよね。なにしろ好きな小説のあらすじなんですから。  
 もし、あらすじを読んでも本編を読んでみたいなぁ、と思わなかったら、それは誰がどう考えても、あなたが書いたあらすじが悪いんです。だって、自分の好きな小説のあらすじのはずなんですから。読みたくならないはずはないんです。  
 あらすじを書く練習の最初の目的はここにあります。つまり、面白いはずのお話しを、面白いままに要約する、ということ。実はこれが結構難しい。でしょ?  
 これは逆にいうと、自分が考えついたお話しをきちんと要約する能力になります。要約するということは枝葉をそぎ落とすということです。きちんと要約できるということは、全体をきちんと把握できている、ということになりますし、余計な部分を削り取った結果、お話しのバランスだのおかしなところだのがはっきり見えてくるんです。  
 でもまあ、ここではそんなことはあまり気にする必要はありません。とりあえずあらすじです。あらすじはあくまでもあらすじです。粗いんです。筋だけなんです。多少面白くなくなっても気にしないことにしましょう。って、言ってることがコロコロ変わってますが。  
 あらすじを書く練習は大事なことだけれど、今はとりあえずそこまで深く考えなくてよい、ということです。  
 いまの練習では、とりあえずあらすじから大まかなストーリーがわかれば充分。プラス、伏線だとか、ストーリーの流れに必要な最低限の要素が入っていれば、少なくともここでは問題ありません。場合によっては、登場人物の名前が明記されていなくても、これから先の練習には問題ありません。  
 とはいっても、練習時にはちゃんと必要な要素はすべて決めなきゃいけないんですけどね。練習で手を抜くと、本番でも手を抜く癖がついちゃいます。練習ではうまくできたのに、本番ではうまくいかない、なんてぇことは世の常ですから。練習は本番以上に気合を入れてやりましょう。ううむ。難しい。  
 ここでやりたいことは、とりあえず既存のお話しのストーリーラインを明確にする、ということ。贅肉をこそげ落として、骨格だけにしてしまう。もちろん、やればもっとこそげ落とすことはできますが、それは別の練習になります。ここではとにかく、ストーリーを明確にすることを重点にあらすじを書いてください。  
 書いたあらすじは、ちゃんとお話しになっていますか? 箇条書きではなく、きちんと読み物になっていますか?  
 まずはそのあたりの練習です。うまく読み物になっていないあらすじは、あらすじとしては失格です。  
 もし、なんらかの公募に自分の書いた作品を応募するのであれば。そしてその公募であらすじをつけることが義務付けられているのであれば。あなたが書いたあらすじは、おそらく本編よりも先に、他人の目に触れることになるのです。どんなにおもしろいお話しを考えついたとしても。それをどれほどうまく作品にできたとしても。もし、あらすじがいいかげんで、本編のおもしろさをきちんと伝えられていなかったら、場合によっては本編を読んでもらえない可能性だってあるのですから。  
 あらすじを書く練習をしましょう。  
 実は、あらすじを書くのは、本編を書くよりも難しいのだ、という意見もあるようです。細かい描写や装飾ができないぶん、ストーリーラインがかなりはっきりしてしまいますから。  
 ということは、既存のお話しのあらすじを書く練習をすることによって、かなりの練習になる、ということです。贅肉を削ぎ落とすことによって、「なぜ自分はこの作品をおもしろいと思うのだろう」ということの分析ができるようになるのです。それはつまり、ストーリー自体の面白さがどこにあるのかを分析することにつながります。そこから、面白いお話しというのはどういうものなのか、ということを考えていくことができるようになり、ひいては面白いお話しを考える練習にもなるのです。  
 まあ、うちではそんな難しい話しはたぶんしませんが(笑)  
 とりあえず、既存の作品のあらすじをいくつか書いてみて、あらすじを書く練習をしてみてください。  
 でもここでは、あらすじを書く練習をするためだけに、既存のお気に入りの小説のあらすじを書いてもらったわけではありません。  
 ここからはちゃんと「小説のようなモノ」の書き方の練習です。  
 やることはもうわかりますよね。  
 自分で書いたあらすじを元に、小説を書くんです。もちろん、既存の小説のあらすじだったり、昔話のあらすじだったりするわけですから、それをそのまま発表するわけにはいきません。あくまでも練習用の作品です。でも、小説を書く、ということの練習には充分なるはずです。  
 特に、既存の、自分のお気に入りの作品のあらすじから、自分なりの小説を書くというのは、やってみると実は結構面白い反面、かなりしんどい作業になると思います。  
 なにしろ、お気に入りだった作品が、自分の手で文章化した途端に、駄作になっちゃったりするんですから(笑)  
 それでもがっかりする必要はありません。なんせ、敵はプロですから。こっちが勝てる要素はほとんどないんです。元の作品よりもおもしろくしよう、なんて思う必要はありません。そんな努力は無駄です。だって、いくらおもしろい作品ができたって、そのまま発表するわけにはいかないんですから。  
 もちろん、だからといっていいかげんに書けばよい、ということではありませんよ。ちゃんと、自分なりに真剣に、可能な限りおもしろい作品を書くようにしてください。  
 よく、小説の練習として、既存の小説をまるまる書き写す、とい方法のが紹介されています。うちのサイトでも紹介したかな? 覚えてないんですが(笑)  
 実はこの「既存の小説をまるまる書き写す」という練習方法、どの程度効果があるのか、ちょいと疑問なんです。わたしとしては、そんなことをするよりも、まず既存の作品のあらすじを書いて、それをもとに自力で作品を書く方が、効果があるんじゃないか、と思ってます。  
 まあ、この「既存の小説をまるまる書き写す」という練習方法は、句読点の打ち方だとか、改行のしかたといった、どちらかというと文章の書き方の練習になるようですが。  
 それはそれとして、あらすじを元に小説を書いていると、場合によっては、「こうした方が面白くないか?」と思うこともあるかもしれません。そういう場合、そっちの方向に変えちゃうのも手かもしれませんが、練習としては、きちんとあらすじの通りに話しを進めてください。  
 とにかく、まずはあらすじの通りにお話しを進めて、最後まで書く練習をしてください。それで一本書き上げれば、それはそれで達成感が沸いてでるはずです。  
 まずはこの「達成感」を感じてください。  


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