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[ 小説のようなモノの書き方 ]
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99.09.30

 いくら「のようなモノ」とはいえ、仮にも小説の体裁を持っているものを書こうというのですから、タイトルがついていないとさまになりません。というよりも、中味が多少小説っぽくなくても、もっともらしいタイトルをつけるだけで、なんとなく「小説を書いたぞ」という気分になってくるものなんです。  
 で、タイトルのつけかたですが・・・・  
 基本的には、ルールはありません。  
 書店にいって、小説の置いてある棚を見ればわかると思いますが、ありとあらゆるタイトルがあふれています。別に小説でなくても、映画やマンガのタイトルだって、参考になります。  
 ただ、ルールはありませんが、気をつけなければいけないことはあります。  
 まず、あまり奇をてらったタイトルはつけないこと。これはもちろん、「基本的にルールはない」というルールに従えば、奇をてらおうがどうしようが、かまわないのですが、なにしろ「のようなモノ」です。下手をすると、見た目も内容も小説らしくないかもしれません。「見た目を小説っぽくする」「内容を小説っぽくする」を読んで、それをきちんと実践しているからといって、ちゃんと小説っぽく見えるかどうかは、わたしには責任は負えません。なんせ、わたしも素人ですから。  
 内容に絶対の自信があるのなら別ですが、そうでない場合は、素人は自分の作品には、できるだけ小説っぽいタイトルをつけることをお勧めします。そうしないと、見た目も内容も小説っぽくないうえに、タイトルまで小説っぽくなくなって、書いた本人がいくら「これは小説だ」と主張しても、読んだ人が小説とは認めてくれなくなります。まあ、天才というのはいつの時代でも受け入れてもらえないものだ、と開き直ってしまう手もありますが、どうせ書くなら小説として認めてもらいたいじゃありませんか。  
 では、小説っぽいタイトルというのはどういうものか、というと、これがまた難しい。はっきりいって、一口では説明できません。ただ、逆に小説らしくないタイトルというのは、比較的簡単に説明することができます。  
 たとえば、  
 
 ・UNIXコマンド ポケットリファレンス  
 ・システム手帳のリフィル術  
 ・姓氏苗字辞典  
 ・気には無限の力がある!  
 ・タロット占い入門  
 ・室内トレーニング  
 ・小説のようなモノの書き方  
 
 とりあえず、わたしの部屋の本棚にある、目についた本の中で、小説でない本のタイトルをあげてみました。あ、最後のひとつはまだ本になってませんし、その予定もありません。  
 見た瞬間に、明らかに小説ではないことがおわかりいただけると思います。  
 プロが書いた作品の中には、小説なのか、そうでないのかがわかりにくいタイトルの作品もあります。  
 たとえば、  
 
 ・あなたも人が殺せる  
 ・西洋骨牌探偵術  
 
 これはどちらも小説のタイトルですが、先にあげたグループの中に入れたら、小説のタイトルには見えないでしょう。ちなみに、この二つの本は、わたしが好きな作家、都筑道夫の作品のタイトルです。「骨牌」は「カルタ」と読みます。「西洋骨牌」というのは、一般に「タロットカード」と呼ばれているカードのことですが、英語の発音としては「タロウカード」と呼んだ方が正しいそうです。  
 それはさておき、ド素人が自分の作品にタイトルをつける場合は、「正しい電話のかけかた」とか「人前であがらない方法」などというタイトルにするよりは、もっと小説らしくした方が良いでしょう。  
 でも、「正しい電話のかけかた」なんてぇタイトルの小説も、読みたい気はしますが。  
 たとえば書いた作品を、どこかの新人賞かなにかに送る場合には、本来集まって来る作品はすべて小説のはずですから、その中に「正しい電話のかけかた」というタイトルの作品が混じっていたとしても、とりあえず選考担当者は小説として読んでくれるはずです。その場合には、見た目も内容もちゃんと小説になっていれば、それはそれで読者の目を引く良いタイトルということになって、長所としてみてもらえますが、見た目も内容も小説になっていないうえに、タイトルまで小説っぽくなかったとしたら、たぶんまったく相手にしてもらえないでしょう。  
 まあ、ド素人の場合は、できるだけ小説っぽいタイトルをつけておいたほうが、無難は無難でしょう。  
 では実際に、どんなタイトルがいいか、という問題ですが、これははっきりいって、ひとそれぞれ好みがあるでしょうし、作品の内容やジャンルにもいろいろと違いがあるでしょうから、一概にこうした方がいい、ということはできません。  
 一般的には、印象的でなおかつ内容を端的に表しているものがいい、といわれています。そんなこといわれたって、どんなタイトルが印象的か、なんてことは、ド素人にわかるわけがないんですが。  
 ひとつの方法として、既存のタイトルをパクルというのがあります。  
 もちろん、そのまま使ってはいけません。  
 たとえば「雪国」なんてぇタイトルをつけちゃったら、それを見た人は絶対に、まずあの有名な「雪国」の方を思い浮かべるでしょう。で、それと比較されちゃうわけです。それは確実に損ですから、そういうパクリはできるだけ避けましょう。  
 何にしても、既存の本のタイトルをたくさん知っておくことは、たぶん損にはならないでしょうから、暇なときにでも書店にいって、並んでいる小説のタイトルを眺めてみるのも、いいかもしれません。  
 で、そのタイトルをいつつけるかですが。  
 いつだっていいじゃねぇか。  
 と思ったあなた。あなたは正しい。いつつけたっていいんです。  
 ただ、ちゃんとした「小説の書き方」系の本を読むと、タイトルをいつつけるか、という点では、大きくわけてふたつのパターンがあるようです。  
 まず、先につける、というパターン。  
 この場合は、基本的にすでにきちんと内容が決まっていることが前提です。内容が決まっていれば、タイトルも決まるでしょう。逆に言うと、内容がきちんと決まっていなくて、タイトルもつけられないような場合は、書き始めてはいけない、という戒めでもあるわけですが。  
 まあ、ド素人の場合は、そこまで真剣にならなくてもいいでしょうし、本によっては、「先に気の利いたタイトルを思い付くと、作品を作りやすい」というようなことをいっている本もありますし。つまり、タイトルを決めることによって、その作品のイメージを作者が意識しやすい、ということです。  
 次に、あとからつける、というパターン。  
 これはもう、作品は一応完成しているわけですから、その内容をよく吟味して、それに見合ったタイトルをつけてあげればいいわけです。  
 どちらがいいかは、一長一短。  
 先にタイトルをつけてしまったために、それに引きずられて、作品の広がりがなくなってしまうとか、途中で新しい展開を思い付いたのに、それをやるとタイトルと違ってしまうので、断念しなければならないとか、いろいろなジレンマがあるようです。  
 最後にタイトルをつける場合は逆に、途中の指針がなくて書きにくかったり、展開がフラフラして定まらなかったりと、いろいろな問題があるようです。  
 で、ド素人が小説のようなモノを書く場合、途中でつけるのが一番いいんじゃないか、と(笑)  
 まずはとりあえず仮題をつけておいて、それで書き始める。で、途中で思い付いたタイトルをピックアップしていく。はなしの展開が変わってしまって、最初につけた仮題がしっくりこなくなった場合でも、気にせずに新しいタイトルを考えてしまう。そして最後に、途中で思い付いたタイトルの中で、一番いい奴に決める、と。  
 これがベストかどうかはわかりません。  
 そもそも、この「小説のようなモノの書き方」の中では、「好きなところから書けばいい」なんてぇことをいってますから、どこでどんなタイトルを思い付くかもわからないわけですから。  
 まあ、インターネット上で、連載小説のような形を取るのでない限り、ド素人はいつタイトルをつけてもいい、ということでしょうか。  
 最低でも、他人に読ませる直前までには、ちゃんとタイトルをつけてあげてください。  


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