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[ 小説のようなモノの書き方 ]
有名な作品のパクり方
入れ替える
次のステップはない>

2001.06.03

 入れ替えるってどういう意味だ? と思ったかもしれません。単純にいえば、骨格はできるだけそのままで、登場人物の立場を変えてみる、ということです。つまり、主人公を変えてみる、ということ。継母を主人公にしたり、王子様を主人公にしたりするわけです。それによって、同じ骨格でも視点が変わりますので、話しの内容も変わってきます。  
 
 入れ替え方はいくつかあります。  
 まず、本来の骨格ではかたき役として設定されている人物を主人公にしてみましょう。主人公とかたき役の立場が入れ替わります。これはどういうことかというと、物語がはじまったばかりの状態では、かたき役よりも主人公の方が立場が強い、ということになります。立場が強いといっても、あんまりかたき役をいじめていると、読者が主人公に共感してくれなくなりますから、ほどほどにしておきましょう。いや、別に思い切りいじめまくってもかまいませんが(笑)。  
 主人公は、幸せに暮らしているわけです。まあ、それなりの悩み事はあるでしょうが、おおむね人生を謳歌している。そんな主人公に、何らかの目標となる事柄がが発生します。これは主人公を入れ替える前と同じです。主人公もかたき役も、同じ目標を目指すわけですから。  
 で、まずは主人公はその目標に到達します。というか、その目前まで行くわけです。ほとんど幸せの絶頂といってもいいかもしれません。ところが、突然かたき役に協力者が現れます。協力者の助力を得て、かたき役がのし上がって来たために、主人公は叩き落されてしまうのです。このあたりは、うまく書けばかなりのサスペンスになるでしょう。それまで幸せに生活していた主人公が、不幸のどん底に叩き落されるようなものです。  
 しかし、かたき役のミスによるものか、主人公の努力によるものか、かたき役の方も結局転落するわけです。少なくとも、一時的には危機を脱出できるわけです。  
 一度は安心した主人公ですが、心の中に不安は残っています。そしてその不安はやがて的中するのです。かたき役の卑怯な策略によって、かたき役が勝利をおさめてしまうのです。お話しはそれでおしまい。主人公が負けて終わるのです。  
 このままで終わるのはいやですか?  
 その場合は、単純に主人公とかたき役を入れ替えるだけでなく、物語自体も変えちゃってかまわないわけですから、最後には主人公が勝ってハッピー! という終わり方にしても良いわけです。そういう展開のお話しなら、たぶんたくさんあるでしょう。ありがちなお話しとしては、自分の父親の会社を乗っ取った男たちを、次々と破滅に追いやっていくクールな主人公、なんてぇお話しがありそうです。  
 実をいうと、このパターンから前半の「主人公が幸せな時期」を取り払うと、「シンデレラ」のお話しそのものになってしまうんですが(笑)  
 
 次は協力者が主人公の場合。  
 あるところに、しいたげられた者がいました。しいたげられた者は、色々な理由でかたき役にしいたげられています。あるとき、主人公はそれに気づきます。そして、しいたげられた者をあわれに思い、手助けしてあげるのです。主人公の助けによって、しいたげられた者も力を得ます。ところが、しいたげられた者のちょっとしたミスによってか、あるいは主人公の力が及ばなかったためか、結局またしいたげられる立場になってしまったりします。あるいは、前よりひどくなったり。しかし、主人公がかねてより用意しておいたアイテム(ガラスの靴)のおかげで、すべてが見事に解消され、しいたげられた者はしいたげられなくなり、かたき役は破滅します。めでたしめでたし。  
 さて、どこかで聞いたことのあるお話しじゃありませんか? 日本人ならたぶん誰でも知っているお話しです。  
 このあらすじの「かたき役」を「悪代官」に「ガラスの靴」を「印籠」に置き換えてみてください(笑)。そうしたらもう「主人公」は決まってしまいますね。呼び方は「御老公」でも「黄門様」でもお好きなように。  
 有名な西部劇「シェーン」もこのパターンですし、細部にかなり違いはありますが黒澤明監督の「七人の侍」の大筋もこれに近いかもしれません。  
 このパターンの特徴は、主人公が最初からある程度の力を持っている、ということでしょう。もちろん、それなりに何らかの努力はします。主人公に楽をさせるな、という基本は、ここでも採用されますから。この場合主人公の苦労は、しいたげられた者を助けなければならない、ということでしょう。しいたげられた者をいかにして助けるか、これがこのパターンの中心になるかもしれません。  
 
 次に、マドンナを主人公にした話しを考えてみましょう。ただこのパターンは、少々難しいのですが……  
 なにしろ、基本の骨格では、マドンナは「転」になるまで出てきません。したがって、マドンナを主人公にした場合は、基本の骨格をそのまま使うことができなくなってしまうのです。それでもまあ、一応やっておきましょうか。  
 ある日主人公の前に謎の人物が現れます。その謎の人物は、主人公に強い衝撃を与えますが、突然姿をくらましてしまいます。主人公は、わずかに残された手がかりをたよりに、謎の人物を探します。やっと見つけたと思っても、それは偽者だったり別人だったり。でも、最後には主人公も謎の人物にたどりついて、物語は終わります。  
 このパターンは推理小説あたりに使えそうですね。コーネル・ウールリッチという人が書いた「幻の女」はこのパターンと言っても良いかもしれません。細部ではかなり違いますが。  
 
 このように、同じ骨格でも主人公を変えてみるだけで、かなり違ったお話しのようになります。たとえば「桃太郎」の骨格を、鬼の立場から使ってみると「インデペンデンス・デイ」に近くなっちゃったりもします。  
 この手法を使う場合の一番簡単な方法は、各キャラクターをそのまま使うこともできる、ということです。つまり、継母の立場から「シンデレラ」を書くとか、魔法使いの立場から描いてみるとか、それだけでも、別のお話しを作ることができるのです。その詳細はまた「疑問を抱いてみる」「前日談・後日談」あたりで考えてみましょう。  


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