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[ 小説のようなモノの書き方 ]
有名な作品のパクり方
一部分を強調する
次のステップはない>

2001.06.03

 ここでは、骨格の一部分を強調してみようと思います。どうやるかというと、「起承転結」のバランスを変えたり、どこか一部を思い切り強調したり、ということをするわけですが。そう考えると、ここまでに紹介した手法では、元ネタになっている「シンデレラ」の骨格をまったくそのまま使っているわけではないので、すでのこの手法の紹介は終わっているようなものなんですが。  
 それでも一応、こう変えるとこんな話しになる、という例をいくつか上げておきましょう。  
 すでに紹介しましたが、「ロッキー」だの「ベスト・キッド」だのジャッキー・チェンの昔の映画だのの場合は、起承転結の転の前半、主人公が目標に到達するまでの努力の部分が強調されています。「マイ・フェア・レディ」や「プリティ・ウーマン」も同様ですね。はっきりいって、ほとんどがこのパターンです。  
 特殊な例もあります。  
 まず「起」と「承」で主人公がいじめられる部分の描写を、これでもか! というぐらいにやっておきます。ほとんど悲惨なまでにしいたげておきましょう。次に「転」で立場が逆転したあと、また主人公が転落する場面を、これまた強烈に描きます。死んだ方がましだと思えるぐらいに強烈に。一度立場が逆転する場面は、そのためにあるようなものです。そして最後の「結」では、主人公がかたき役を徹底的に打ちのめす。はっきりいって殺しちゃったりします。  
 これはもう完全に、スティーブン・キングの「キャリー」ですね。テレビの時代劇「必殺!」シリーズもこれに近いような感じがありますが、「必殺!」シリーズの場合には、これに加えて主人公の入れ替えが行われています。  
 実際には「シンデレラ」の骨格で一部を強調しようと思っても、ほとんどが「ロッキー」パターンにしかならないかもしれません。そこで、ここだけ特例として、ちょっと「桃太郎」に登場してもらいましょう。  
 骨格はこうです。  
 
 起:主人公の生い立ち説明  
 承:目的の設定と仲間との出会い  
 転:目的への到達と達成  
 結:大団円  
 
 説明はしなくてもわかると思いますが、念のためにやっておきましょうか。  
 「起」は、「むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでおりました」からはじまり、桃が流れてきてと話しが進み、桃太郎がすくすく育つあたりまでです。  
 「承」で桃太郎は鬼が島へ鬼退治に行くことになり、旅に出ます。途中で犬と猿と雉に出会うわけです。  
 「転」では鬼が島へ到着し、それぞれが特技を生かして鬼を退治するわけです。  
 そして最後に宝物を手に入れて凱旋するのが「結」になります。  
 さてこの骨格をいじくってみましょう。それぞれの部分を強調してみます。  
 まず「起」の主人公の生い立ちの説明を強調した場合ですが……あるかなぁ、そんな話し。ちょっと思い当たらないんですが。主人公の生い立ちだけを、延々と説明しているお話しなんて、おもしろくもなんともなさそうですし。  
 無理やりあてはめるとすれば、純文学あたりにでもありそうな、主人公のなんでもない日常を描いた作品なんかは、このパターンでしょうか。小津安二郎監督の映画なんかは、これに近いかもしれません。まあ、かなり違うような気もしますが。  
 それにくらべて「承」は強調のし甲斐があるかもしれません。  
 まず、目的地に到達するまで、という部分だけを延々と描くと「ロード・ムービー」といわれるパターンになります。主人公がある目的地に向かって旅を続けるお話しです。途中いろいろな人と知り合い、いろいろなことを経験して成長していく、というやつですね。有名なところでは、かなり古いアニメですが「母をたずねて三千里」なんぞは、完全にこのパターンですね。このおはなしはもう、その部分しかないような感じですし(笑)。まあ、「母をたずねて三千里」自体が「クオレ」というお話しの一部分だけを取り出したものだそうですから、あたりまえといえばあたりまえなのかもしれませんが。  
 逆にあまり旅はしませんが、目的のために仲間を集め、力をあわせて目的を達成するというお話しもたくさんあります。「七人の侍」はそのお手本でしょう。  
 「転」と「結」に関しては、強調もくそも、はっきりいってアクション映画なんぞは「転」のオンパレードでしょうし(笑)、大団円だけ強調してもあまり意味はなさそうなんで、それは考えませんが。  
 まあ、他の有名なお話しをパクる場合もそうですが、基本的には、骨格とはいえそのまままるまるパクってもおもしろくないでしょう。やはりどこかを強調してみたり削ってみたり、全体のバランスを変えたりするわけですから、ここが腕の見せ所かもしれません。  


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