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[ 小説のようなモノの書き方 ]
有名な作品のパクり方
疑問を抱いてみる
次のステップはない>

2001.06.03

 さて、ご存知のように、ここはわたしの得意分野です(笑)。今回、これが書きたいばっかりにこの章を書き始めたといっても過言ではない、かどうかは知りませんが。  
 「シンデレラ」のお話しには、読者には知らされていないことや、そのままでは少々つじつまのあわないような部分が、いくつもあったりします。まずは、思いつくことを片っ端から上げてみましょうか。  
 
 シンデレラの実の両親はどこにいったのでしょう? 母親は死別、生別? 父親はどこにいる? だいたい、父親という人は、再婚相手になんでこんな女を選んだのか。これが大きな疑問です。  
 逆に継母やその連れ子の行動にも納得がいかない部分があります。なぜそんなにもシンデレラをいじめるのか。本によっては、シンデレラがあまりにもできが良すぎて、そのために自分の娘が劣って見えるので、それで継母はシンデレラをいじめた、と書かれている場合もあります。それにしたって、そういうことがシンデレラの父親である亭主にばれたら、大変なことになると思うのですが、継母はそういうことは考えなかったのでしょうか。  
 そもそもシンデレラは、いじめられていることを、なぜ父親に訴えなかったのでしょう。それすらもできないような性格だとしたら、いくら魔法で着飾ったとしても、舞踏会で堂々と踊るなんてことはできないと思うのですが。これもまた、本によっては「お父様にそんなことを言ったら叱られる、と思った」と書いてあるものもありましたが、いくら継母たちが内緒にして、シンデレラ自身も口をつぐんでいたとしても、シンデレラのみすぼらしい姿を見れば、父親だって気づきそうなものだと思うのですが。  
 こういう疑問が出てくると、やはり最初の疑問に戻ってしまいます。つまり、父親はいったいどこで何をしていたのか、ということ。  
 父親は一応、貴族のはずなんですよね。お城の舞踏会に娘たちが招待されるぐらいには、地位のある人物なんです。だから、ひょっとしたら、どこかに単身赴任してたりするのかもしれません。  
 このあたりは、そのまま現代の家庭を舞台にしたお話しに使えそうです。仕事ばかりの父親。うまくいかない後妻と子供。……なんだか陳腐なドラマの設定みたいですけどね。  
 魔法使いにも謎はあります。なぜいきなり現れたのでしょう? なぜもっと早く、シンデレラが継母や義理の姉妹にいじめられているときに、助けに来てくれなかったんでしょう。そもそも、なんでシンデレラに魔法をかけてくれたんでしょう。事前に伏線でも張ってあれば別なんですけどね。  
 0時を過ぎると魔法が解けてしまうのに、ガラスの靴だけなぜ残っていたのか、という点を疑問に思う方もいらっしゃるでしょうが、これは実は問題ないんですね。実はガラスの靴だけは、魔法で出したりしたものではなく、魔法使いがくれたものなんです。それにしたって、なぜ靴だけ魔法を使わなかったのか、という問題は残りますが。そうそう、ガラスの靴というのも、本当はガラスではなく革だったとか、色々な説があります。まあそれはここではどうでもいいことですが。  
 ガラスの靴がシンデレラ以外の誰の足にもあわなかった、というのも疑問ですね。たしか国中の娘に履かせたはずなんですね。国中に若い娘が何人ぐらいいる国なのか知りませんが、同じサイズの足の持ち主がまったくいない、というのも謎です。  
 シンデレラ本人に対する疑問もまだあります。彼女は、継母やその連れ子に対して、どういう気持ちを持っていたのでしょう? はっきりいって家を乗っ取られたような状況なのに、それに対するシンデレラの心境や、そこから来る言動というものは、あまりはっきり見られないようです。父親に対してはどう思っていたのでしょう? 自分がこんな目にあわされているのに、それを放置しておく父親に対する怒りはなかったのでしょうか?  
 王子様のやってることだって変です。  
 唯一の手がかりであるガラスの靴を使って、謎の美女を探すというのは良いアイデアでしょうが、靴のサイズがぴったりだからといって、それだけで決めてしまってよいのでしょうか? まあ、これに関しては、シンデレラが残るもう一方の靴を持っていた、という明らかな証拠があることになっているようですが。  
 一番の謎は、服だの髪型だのが変わっただけで、毎日同じ家で生活している継母や姉たちに、シンデレラだということがなぜ見抜けなかったのか、ということ。同じ疑問が、クラーク・ケントとスーパーマンに対しても言えるんですが。まあ、女性の場合、うまく化粧をすると別人のようになってしまうこともあるようですから、そのあたりはまあ、よしとしましょうか。でも、声は変わらないと思うんだけどなぁ。  
 
 こうやって考えていけば、他にも色々と出てくるでしょう。とにかく、ほんのささいなことでも疑問を持ってみてください。あるいは疑ってかかる。中には、調べればわかるようなこともあるかもしれません。本来なら、疑問はきちんと解消するべきでしょうが、ここで必要なことは、正解を出すことではありません。深夜0時を過ぎてもガラスの靴が消えなかった本当の理由は、どうでもいいことなんです。  
 「0時過ぎてもガラスの靴が消えないのは、変じゃないか?」  
 と思うことが大切なんです。そして、それに対する自分なりの答えを出してみる。ひとつだけではなく、できるだけ多くのアイデアを出して見る。このあたりの手法は、うちには「メモの達人への遥かなる道のり」なんてぇコーナーがありますので、そのうちそこで取り上げてみましょう。あ、まだ作ってないんで、今行っても無駄ですよ。  
 
 こういったようなことを念頭に置いて「新説シンデレラ」なんてぇお話しを作ることもできそうです。すでに誰かがやっていそうな気もしますが。  
 とりあえず、継母がシンデレラをいじめたのには、大きな理由があった、というのを考えてみましょうか。  
 たとえば、シンデレラは本当はそれほど心の優しい娘ではなく、じつはシンデレラの方が先に、義理の母にひどいしうちをしていた、とか。実はシンデレラの父親はろくでもない男で、飲む打つ買うで家が傾きかけていて、それを立て直すために、金目当てで再婚した。結婚してからそれに気づいた後妻だったけれど、亭主本人は、なんだかんだと理由をつけて家によりつかないので、その怒りをすべて娘にぶつけた、とか。すべてはシンデレラの狂言で、実際にはいじめはまったく行われていなかった、とか。  
 このあたりは考えていけばいくらでも出てきそうです。  
 他にも、シンデレラを助けるために出てくる魔法使いは、実はシンデレラの本当のお母さんだったとか。王子様は足フェチだったとか。ガラスの靴がシンデレラ以外の足にあわなかったのは、シンデレラが非常に背が高く、それにあわせて足も女性にしては大きかったから、とか。もちろんその場合、王子様は大女フェチもしくは大足フェチということになりますか(笑)。  
 ここまで来ると、疑問を抱くとかそういう世界ではなくなってしまいますが。それはそれでOKでしょう。要はいかにして「シンデレラ」からオリジナルのお話しを作り出すか、ということなんですから。  


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