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2000.07.16
1996年に公開された「ミッション:インポッシブル」の続編です。もともとは1960年代の終わりごろにテレビで放映されていたテレビシリーズ、日本では「スパイ大作戦」として有名だった作品の劇場版ということになっているようですが……
はっきりいってテレビの「スパイ大作戦」と、この「ミッション:インポッシブル」シリーズとはまったくの別物です。テーマ・ミュージックも同じような感じですし、司令が「おはよう××君」で始まるのも同じようですが、これはあの「スパイ大作戦」ではありません。念のためにいっておきますが、テーマ・ミュージックはほとんど同じようですが、アレンジがひどいです。もともと5拍子の曲なのに、それを4拍子にしちゃったりしてますから。まあ、5拍子バージョンもありましたけど。それから、「スパイ大作戦」というとテーマ・ミュージックしか思い出さないのか、あの曲ばかりつかってますが、もうひとつ有名な「ザ・プロット」というBGMがありまして。これは、聞けばだれでも「ああ!」と思いだす曲のはずです。映画版でこの曲を使わないのは、使いどころがないからだと思うのですが。それこそが、映画版がテレビシリーズのテイストを失っているという、はっきりした証拠ではないでしょうか。
そもそも、前作でのジム・フェルプスの扱いを見れば、映画の方がテレビシリーズを否定してしまっているのは歴然です。別に、フェルプス役がピーター・グレイブスじゃなかったからとか、そういう意味ではなく。あのフェルプスの扱いを脚本の時点で見たら、グレイブスもやる気にはならなかったでしょう。フェルプスがどんな扱いを受けたかは、前作「ミッション:インポッシブル」をまだご覧になっていない方のために伏せておきますが、もしあなたがテレビシリーズ「スパイ大作戦」のファンで、「劇場版をまだ見ていないから、ビデオで観ておこうか」と思ったのならば、ぜひ観ないことをおすすめします。
さて、前作で「スパイ大作戦」ではないことをほのめかした「ミッション:インポッシブル」ですが、二作目で完全に別の作品として独立したようです。
一応、プロデュースもかねている主役のトム・クルーズは、テレビシリーズの大ファンで、テレビの「スパイ大作戦」を映画化したかったらしいのですが、どこでどう間違えたか、アメリカ版007を作ってしまったようです。そう、このシリーズは、だれがどう考えても、「スパイ大作戦」の劇場版ではなく、007シリーズのアメリカ版なんですね。
そもそも「スパイ大作戦」で、こんなにバカスカ銃を撃ったり、カーチェイスをしたりなんてことはありませんでした。たしかにスリリングな内容でしたが、それはスピード感だの銃撃戦だといった派手なものではなく、あくまでも心理的な要素、緊張感からくるスリルだったのですから。
テレビシリーズで秀逸だったのは、途中で正体がバレたりして、作戦が失敗したように見せておいて、じつはそれも作戦のうちだった、といったような、観客までをもだますようなストーリーがあったこと。
残念ながら、映画「ミッション:インポッシブル」にはそういった心理的な緊張感はほとんどありません。かろうじてそれがあるとしたら、競馬場のシーンと本社ビルに潜入するシーンでしょうか。もっとも、それもあまり「スパイ大作戦」という雰囲気ではないのですが。
まあ、文句はいろいろありますが、ストーリーに関わる部分でひとつ。
女が警察に捕まったことにするシーンですが、あれが「スパイ大作戦」だったら、ちゃんと何らかの仕事(泥棒)をするシーンを入れて、そこでドジ踏んで捕まったように見せるでしょうね。
で、色々と文句を連ねてきましたが、この作品がおもしろくないのかというと、じつはそうでもない。結構見せ場もあるし、アクション映画としては悪くないです。スローモーションのシーンが多いのが気になりますが、監督がジョン・ウーだから、しかたないでしょう(笑) そういう意味では、この作品、「ミッション:インポッシブル」というタイトルじゃなくても良いわけです。ただ、よくよく考えてみると、この組織にも色々なチームがあるでしょうから、地道な作戦遂行をするチームもあれば、派手な騒ぎをするチームもあるということで、テレビシリーズと映画とは、異なるチームの活躍を描いてるんだ、ということにしてしまえば、それはそれでOKなのかも。できれば次回作は、テレビシリーズ風の展開にしてほしいものですが。
ところでこのシリーズタイトル、このまま「MI3」「MI4」と続けると、やがてイギリス情報部になってしまうと思うのですが、それはいいのかな(笑)
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