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[ 映画の感想文のようなモノ ]
映画「サトラレ」
監督:本広克行 主演:安藤政信/鈴木京香

2001.03.31

 わたしが個人的に、今の日本映画の監督の中では最高だろう、と思っている本広克行監督の最新作です。  
 原作は佐藤マコトのマンガで、実は立ち読みしたことしかないんですが、これがなかなか面白かった。で、こりゃ観に行かなきゃな、ということで観て来たんですが。期待を大きく裏切られることはありませんでした。  
 実をいうと、わたしは結構涙もろいんですね。特に映画なんぞを観ていると、涙を流してしまうことがよくあるんです。だから、最初から泣くことがわかっている映画は、あまり観ないようにしていたんですが。この映画は、久しぶりに、泣くことがわかっていて観に行って、しかもしっかり泣いて帰って来た、と。ちょっと悔しいです(笑)  
 プログラムによれば、本広監督は、この作品を作るときに、いかに観客を泣かせるか、ということを考えたとか。そのあたりのツボは、しっかり押さえていたと思います。  
 とはいっても、この「感想文のようなモノ」で手放しに誉めるのもなんですから、多少はケチをつけておきましょうか(笑)  
 その前に、「サトラレ」について説明しておいた方が良いのかな?  
 正式名称は「乖離性意思伝播過剰障害」と呼ばれていて、早い話しが、頭の中で考えていることが、すべて他人に伝わってしまう、という症状のことなんですね。で、通称「サトラレ」。1000万人に一人という割合で発生する、まあ一種の病気なんでしょうか。作品中では、日本国内に七人のサトラレが存在していて、その全員がIQ180以上という天才である、と。たしか、原作のマンガの中では、このIQの高さが、頭の中でものを考える時の強さになって、その思念が外に出てしまう、というような説明があったような気がします。  
 とにかく、そういう天才的な人物たちですから、国としては、そのIQを有効に活用するようにしてもらいたい。ところが、誰だってそうでしょうが、自分の考えていることが、すべて他人に筒抜けになっている、と知ってしまったら、とても正常ではいられなくなってしまうわけです。そこで、サトラレ保護法というのが作られて、サトラレ自身に自分がサトラレであるということがさとられないように、万全の体制を整えて守っている、ということなんですね。このあたりの説明やら設定やらは、映画の中できちんとやってくれていますから、観る前に予備知識は必要ありません。  
 考えていることがすべて他人にわかってしまうという設定は、実は非常にギャグにしやすいんですね。サトラレが何か変なことを考えたときに、近くにいる人間には、それがわかってしまうわけですから。しかも、わかっていながら、わかっていないふりをしなければいけないわけですから。これはもうギャグの宝庫でしょう。でも、本広監督は、あまりその方向には、話しを進めませんでした。狙いはあくまでも「泣かせ」だったんでしょう。もちろん、ギャグがまったくないわけではありませんし、その狙い自体、大筋では間違っていないと思います。  
 さて、ここからは、いくつかの疑問に入ります。  
 まず、冒頭の飛行機事故で、主人公だけがただ一人生き残るのですが、これがいったいなぜなのか、という説明がありません。サトラレだったから生き残ったのか、生き残ったからサトラレになったのか、単にたまたまなのか。このあたりの説明がないので、ちょっと消化不良を起してしまいました。  
 次に、主人公が外科医だという点。  
 原作のマンガでは、これが第一話になっていて、主人公は国家試験を何度も落ちています。これはもちろん国の陰謀(笑)で、考えていることが相手に筒抜けになってしまうような男を、外科医にするのは問題がある、という理由から、本当は常にトップの成績だった主人公を不合格にしていたんですね。しかし、そういつまでも不合格にしているわけにはいかずに、結局合格させてしまうのですが。ところが、映画の方にはこれがない。これはやっぱり入れておくべきだったんじゃないか、と思いますが、いかがなもんでしょう。  
 それから、無人島のエピソード。これは、少々おかしいのではないか、という気がしてしまいました。特能保全委員会、すなわちサトラレを保護する組織が、この島に関する情報を持っていないはずはないんですね。とすれば、この島にバケーションに行かせた時点、でなんらかの理由があるのではないか、と観ている側としては考えてしまうのですが、どうやらそれはなかったようです。このエピソードは、原作のマンガにもあったのですが、そこでこの問題をどう処理していたのかは、残念ながら覚えていません。  
 そして、最後の手術のシーン。  
 あふれ出る思念波は、ほとんど肉親の情にかたよっていました。でも、個人的な好みからいけば、もう少し外科医としての考えというか、医師としての「必ず助けるからな」という考えや、「助けてやれなくてゴメン」という考えが出ていても良かったのではないでしょうか。その方が、ラストの「思わぬ副作用」がわかりやすかったのではないか、と。ついでに言えば、その思念があまりに強くて、病院内だけでなく、町中に轟き渡った方が、インパクトが強かったような気がします。原作ではそうじゃありませんでしたっけ?  
 まあ、色々とけなしましたが、全体としては良くできた娯楽作。是非劇場で、とまではいいませんが、ビデオが出たら何がなんでも借りて来てご家族で。そういえば、客席に中高年の方が多かったような気がしたんですが、これはひょっとして、八千草薫さんを見にいらしてたんでしょうか。老いてなおかわいらしい、とても素敵な女優さんですから。  


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