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[ 映画の感想文のようなモノ ]
映画「A.I.」
監督:スティーブン・スピルバーグ 主演:ハーレイ・ジョエル・オスメント

2001.07.22

 スピルバーグ監督の映画の根底には、基本的に「愛」があります。まあ、「激突!」に愛があったかどうかという問題もあるでしょうから、近年の映画には、と言い直しましょうか。  
 で、この作品は、「愛」を根底にではなく、前面に押し出した作品です。なにしろタイトルからして「AI(あい)」ですから。って、一時まことしやかにささやかれていたこの冗談は、ホントなんでしょうかね?  
 それにしても、もしこの作品の愛の形が、スピルバーグの考えている愛の形だとしたら、スピルバーグという人はかなり自己中心的な人なんだなぁ、という感じがしてきます。なぜか、という話しはあとにして。  
 アンドロイドがあたりまえになった未来で、愛情をもったアンドロイドが作られます。この物語は、そのアンドロイドの不幸を描いたお話しなんです。どうにもわたしは好きになれませんでした。だいたい、各種状況が、どう考えてもこのアンドロイドが幸せになれないような設定になっているんです。  
 まず、テスト用に里親を探すわけですが、「最適」という判断が下されたわりには、里親夫婦があまり最適には思えない。そもそもこの時代は、出産制限が引かれていて、子供を持たない多くの親のために、という名目で開発されたアンドロイドのはずなのに、なぜその家が里親候補になったのかがわからない。なにしろその夫婦には、ちゃんと子供がいて、重い病気にかかって冷凍睡眠状態ではあっても、死んではいないんですから。そんな家がテスト用に最適とはとても思えないでしょ。  
 最初から子供のいない夫婦、あるいは、子供が死んでしまった夫婦のところに預けられれば、彼だってきっと幸せになれたんです。でもそれじゃあお話しとしてはおもしろくない。だから、という感じの展開です。  
 しかもこのアンドロイド、母親に対する愛がどうのこうの、ということになっているのですが、愛を与える、ということをまったくしません。要求する一方です。母親に愛されることのみを考えています。通常、こういう奴は好かれませんね。  
 やがてあたりまえのように、本当の息子の病気が治り、家に帰ってくるわけです。そうなると、親の愛情というのは、本当の子供に向けられてしまいます。しかも一方は、いくらかわいいとはいえアンドロイドですから。そのうえ、復活した息子というのが、結構いやな奴で。アンドロイドをちょいといじめる。その他にも、度重なる誤解やすれ違いが、主人公をどんどん不幸にしていきます。  
 このあたり、かなりあざとい。  
 やがて、ジャンクショーと呼ばれる、ロボットを破壊して楽しむショーが出てくるころには「ああ、この映画はピノキオ」なんだ、とはっきりわかります。というよりも、それ以前にピノキオの物語が出てきますし。コオロギのジェミニイの代わりには、クマのテディが出てきますし。個人的には、このテディにもっと活躍してほしかったんですけどねぇ。  
 この、ジャンクショーのあたりを見ていると、ほとんど「ロボットはみんな良い奴。人間はみんなやな奴」という気分になって来ますが、スピルバーグは一応それを否定する方向に話しを展開します。とはいっても、これも鼻につく演出なんですが。  
 一番残念だったのが「2000年の時を超えて」ってなあおり文句があったのに、物語は2000年にはわたらない、ということ。いや、実際には、2000年後の世界も最後に出てきますが、それはよくある「そして2000年が過ぎ去った」という感じで、いきなりその時代へ飛んでしまうのです。  
 正直いって、この作品よりは、ロビン・ウィリアムス主演の「アンドリューなんちゃらかんちゃら」の方が、わたしはよっぽど好きでした。この「A.I.」では、アンドロイドがあまりにバカすぎる。ただ単純に追い求めるだけで、はっきりいって努力の方向が違うんですね。  
 まあ、スピルバーグとしては、親に愛されない子供がどれほど不幸か、ということを描きたかっただけなのかもしれませんが。それにしたって、この映画で「親」というのが、どうも母親だけのような扱いでして。父親はまるで付属物のような雰囲気です。スピルバーグ自身の幼少期が、ひょっとしたらこんな感じで不幸だったのかもしれませんが、それを観客に押し付けられても困るんだよなぁ、というのが、わたしの素直な感想です。  
 ただ、やはり技術的にはすごいです。もはや、実写の部分とCGの部分の境目は、なくなってしまったといっても良いでしょう。以前は映画を見ながら、どれが実写でどれが特撮かを気にしていたものですが、ここまで来ちゃうと逆に、役者はホントに実在しているのかを疑っちゃうべきかもしれません。  
 この映画、泣く人は泣くんでしょうけどね。  


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