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[ 映画の感想文のようなモノ ]
映画「大脱走」
監督:ジョン・スタージェス 主演:スティーブ・マックイーン/リチャード・アッテンボロー

2004.03.07

 公開40周年記念のニュープリント公開だそうです。残念ながら、今のところ東京での単館上映なので、遠く離れた所に住んでいる方は、劇場で観るのはきついでしょう。来月にはもうひとつ、公開劇場が増えるのですが、それも川崎ですから。まるでわたしのために公開してくれたみたいです(笑)  
 そんな、みんなが観られないような映画の感想書かれても困るでしょうが、以前「エッセイのようなモノ」でも書いたように、この映画は、映画に対するわたしの好みを決めてしまった、運命の映画だもんで、興味のない方は、今回は(今回も、か?)読み飛ばしちゃってください。  
 この映画のテーマ曲は、今でも時々、CMだのテレビ番組だののBGMで使用されることもあるので、若い人でも聞いたことはあると思うのですが、その曲とこの映画が一致していない人もいるかもしれません。それ以前に、この映画自体、知らない人がほとんどかな?  
 そういう人は、はっきりいって損をしていると思います。まあ、わたしの好みの問題なので、趣味が違う方には、面白い映画ではないかもしれませんが。  
 実は、わたしはこの映画を劇場のでかいスクリーンで観たのは、今回がはじめてだったんですが、面白いというか、衝撃的な体験をしてしまいました。  
 本編が始まるまえに、近日公開予定の映画の予告をやるわけですが、これの音響はドルビーなんですね。少なくともステレオなわけです。音の広がりがあるというか、右の音は右から左の音は左から聞こえてくる、というあたりまえの状態なわけです。それが、本編が始まったとたんに、すべての音がスクリーンの方から聞こえてくるんですよ。つまりこの映画、ドルビーでないだけでなく、ステレオでもないんです(笑)  
 まあ、40年前に作られた作品ですから、しょうがないといえば、しょうがないんですが。なんとかして音だけでも広がりをもたせることできなかったのかなぁ……  
 劇場で売っていたプログラムには、特に目新しい情報は載っていませんでしが、過去に何度かリメークの話しが出ていたらしい、というのは初耳でした。  
 しかし、この映画をリメークするとして、監督はまだなんとかなるかもしれませんが、役者はもう、このキャスティング意外には考えられませんから、下手なリメークなんぞしてほしくありません。  
 物語としてはかなり単純ですし、ひとつひとつのエピソードも、実は単発で出てくるような感じで、伏線を張っているようなところは少ししかありません(ないわけではありませんが)。その代わりといってはなんですが、編集がとても巧みです。  
「これで捕まったら、彼らはまた独房入りだぞ」というセリフの直後に、脱走するシーンも捕まるシーンもなく、いきなり独房に入るシーンが来ているところなど、最近の冗長な編集をする監督たちに、もう一度観て(観てないはずはないよな、この名作を)、勉強してもらいたいものです。そういう、無駄のない編集をしているのに、約3時間という長い作品になっているのは、つまり見せるべきところがたくさんある、ということなんだろうと思うのですが、今回劇場で観て、ちょっと思ったのが、やっぱりクライマックスのマックイーンのバイクのシーンは、ちょっと長いかな、という気もしました。  
 そういえば、この映画で有名な、スティーブ・マックイーンがバイクで鉄条網を飛び越えるシーンですが、あれは、かなり長いことマックイーン本人がやっていたと思われていましたが、実はスタントマンだった、ということは、マックイーン自身が生前語っていました。代わりに、マックイーンにバイクを奪われるドイツ兵は、こっそりマックイーンが演じていたのだそうで。  
 個々のエピソードの配置のしかたや見せ方も、非常に巧みで、映画が始まって30分ほどで、かなり数が多いはずの主な登場人物たちの紹介がきっちり行われているし、緊張と弛緩の入れ替えも本当にみごとです。  
 まあ、最近の新作と比べると、色々なところで落ちるかもしれませんが、もし当時、今と同じ程度の映画技術があったら、この映画はもっと面白くなっていたに違いないのです。あるいは、今と同じ技術なんぞ使わなくても、充分面白い映画に仕上げていたか、どちらかでしょう。  
 特撮なし、CGなし、激しい銃撃戦なし、ラブシーンなし。それでも、面白い映画は充分作れるんだ、という見本です。  
 ラストは、脱走が成功したとは言えないのに、なぜか爽やかな余韻が残ります。  
 ビデオもDVDも出ているはずですから、是非観てください。特に男の子は必見。  


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