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[ 映画の感想文のようなモノ ]
映画「エイリアン4」

1998.05.13

 前作で死んだはずのリプリーを、無理矢理復活させて作成された、エイリアンのシリーズ最新作です。結論から言えば、復活したリプリーは強さも色っぽさも増して(とは言っても、すでに五十歳近いという年齢には勝てませんが)、作品としてもなかなかの出来でした。そこまでして続編作るか、なんて言ってたのは、どこのどいつだ?  
 原題は「ALIEN/RESURRECTION」。RESURRECTIONとは、辞書によれば、「復活」という意味の他に、「(死体)発掘」という意味もあるようで、なかなか凝ったタイトルです。もちろんこれは主人公リプリーの復活と、エイリアンの復活の両方をかけた上に、映画としてのシリーズの復活にもひっかけているのでしょう。  
 今回はひさしぶりに、思い切りネタばらしをしますので、これから見ようという方は、ここから先はお読みにならないことをお勧めします。  
 さて、ご存知の方はご存知の通り、前作「エイリアン3」のラストで、リプリーは溶鉱炉に身を投げて死んでいます。この新作では、それから二百年たって、リプリーのクローンが作られているわけです。ところが、よく考えてみると、リプリーは溶鉱炉に身を投げたわけですから、DNAなんてないはずなんですよ。それが実は非常に気になっていたんですが、映画の最初の方でちゃんとその説明はされています。血液サンプルが冷凍保存されていたそうです。そんなシーン前作にあったかなぁ、という気がしないでもないですが、まあべつに、シーンとしてなくても、あったことにしちゃえばいいわけですから、あんまり深く考えないことにしましょうか。そのうちビデオで確認しますけど、注射をするシーンがあったような気はしています。  
 で、映画はいきなり、リプリーの復活からはじまります。しかも、科学者とおぼしき連中が腹を切り裂いている。もちろん、そこからエイリアンの幼生を取り出すためなんですけど。ここでまた疑問がわきあがります。  
 クローンを作るのに使用されたのは、リプリーの血液です。そこからリプリーの複製ができるのはいいでしょう。しかし、その場合、体内に寄生している別の生物も、一緒に作られるものなのでしょうか? 血液からクローンを作るったって、もちろんDNAを取り出して使うはずだと思うのですが、その場合、DNAの中にエイリアンの情報も入ってたってことになるんでしょうか? そのあたりの説明は、一切ありませんでしたが、リプリーだけ復活させても、映画としては成り立たないでしょうから、まあよしとしましょうか。  
 さて、復活したリプリーの腕には、「8」という字が刻み込まれています。これは、ある程度小説や映画を見慣れている人ならばすぐにわかるでしょう。クローンとしては八番目なわけですね。で、このリプリー、力は強くなってるし、目つきもこれまでとは全然違う。そのうえ、どうやら血液が酸性のようで。つまり、エイリアンが混じってしまっている、と。このあたりの設定を見ていて思い出したのが、「ザ・フライ」という映画。いくらなんでも、最後にリプリーがエイリアンになってしまう、などということはありませんが、なんとなく感じが似ています。実は他にももうひとつ、「ザ・フライ」を彷彿とさせるものがあるんですが、それはまたのちほど。それともうひとつ思い出したのが、日本のマンガで「寄生獣」という作品。これも、主人公と他の生物が混じってしまう設定なので、このあたり個人的には目新しさは感じませんでした。  
 ストーリーとしては、あたりまえのことですが、再び(よたびか?)リプリーとエイリアンの壮絶な戦いが繰り広げられるわけで。ただ、このシリーズのおもしろいところは、二作目以降、それぞれちゃんと設定を変えていて、前の作品の単純な続きにしていないところ。今回の作品でいえば、今までも充分強かったリプリーが、強いというよりも、少し凶悪な表情になっていますし、リプリーと一緒に戦う連中が、一作目は宇宙船のクルー、二作目が軍隊、三作目が囚人と来て、今回はまあ一般人といえば一般人。まあ、密輸なんぞをしている連中ですから、まともな連中じゃぁないんですけどね。  
 で、その中にウィノナ・ライダー演じるコールという女がいるわけです。  
 この女が、どうも最初から胡散臭い。胡散臭いとはいっても、まわりがみんな悪人みたいな感じの中で胡散臭いわけですから、「善人臭い」といった方がいいのかな? どこでどう知ったのか、リプリーのクローンが作られて、エイリアンも復元されているということを聞きつけて、はっきりいってリプリーを殺しに来たわけですよ。で、どこでどう知ったのか、というのは、もちろんしばらく隠されてるわけですが、途中で「これはひょっとして」と思い始めてしまいます。でコールが撃ち殺された瞬間に「あ、やっぱりそうなんだ」と思っていたら案の定、死んだはずのコールがすぐに現れる。もちろん、撃たれた腹には穴が開いてるんだけど、そこからは血の代わりに白い溶液が。  
 ここらで、ビショップの話題でも出るかと期待したんですが、いくらなんでもそれはありませんでした。  
 まあ、このシリーズは、前作との関係を少しずつ持たせながら違う色を出す、という特色があるわけで、二作目では女王エイリアンなんか出てきて、リプリーもちょっと母親っぽい感じにして、「女の対決!」っぽい感じを出してましたし、三作目では、ついにリプリー自身が寄生される、というショックも与えてくれましたし。  
 で、今回は、というと、悲しみが混じってるんですね。  
 まず、リプリーの悲しみとしては、自分がリプリーであってリプリーではない、という悲しみというか苦悩というか。しかも、腕に「8」とあったように、八番目のクローンで、八番目が主人公ということは、当然のように一番目から七番目は、クローンとしては失敗作なわけですよ。その失敗作も、ちゃんと出てきます。みんなホルマリン浸けにされて。ほとんどが、エイリアンとリプリーがグチャグチャに混じった状態で、下半身が尻尾状になっていたり、口が牙をむいて頬のあたりについていたりと、悲惨な状態です。中にひとりだけ、ホルマリン浸けにされていないクローンがいて、つまり生きているんですが、これもひどい状態で、ほとんど死にかけているのに、体にチューブかなんかを差し込まれて生かされ続けている。このクローンが、リプリーに「殺して」と頼むわけですよ。リプリーとしては辛い辛い。  
 そしてもうひとつ。  
 復活したリプリーにエイリアンが混じってしまったわけですから、そこから取り出されたエイリアンにリプリーが混じっていないはずがない。しかも、取り出されたエイリアンは、ご都合主義といえばご都合主義の女王エイリアンで、卵をだいぶ産んでいるわけですが、やがて体が変化して、卵ではなく、子供を直接産むようになる。この生まれた新種のエイリアンってぇのが、どうやら女王エイリアンを親と思わずに、リプリーを親と思っているようで、変になついて来るわけですが、そこはそれ。エイリアンはエイリアンですから、リプリーは退治するわけですよ。少し母親っぽい感じは出しますが。で、その新種のエイリアンは、死ぬのにたっぷり時間をかけてもらっていて、そのときに、悲しげな声を出す。これがまたリプリーには辛い辛い。  
 しかし。この新種のエイリアンのフォルムは、ちょいといただけない。顔がどう見ても人間の頭蓋骨にしか見えない。まあ、それを意識した造形なんだろうけど。アップになると、頭蓋骨の眼窩の奥に目があって、それが瞬きしたりする。その目が、ちょいと優しげにというか悲しげに見えるときもあって、この演出はちょっと納得できません。しかも、この新種のエイリアンの動きやら全体の感じが、「ザ・フライ2/二世誕生」で、最後に主人公からハエの遺伝子を移されてしまう科学者のなれの果てにちょっと似ている。非常に醜いんだけれども、少し悲しげ。「ザ・フライ2」の場合は、あのラストは好きなんですが、「エイリアン」シリーズにそれを持ち込んでほしくなかったぞ、と。  
 ラストは、生き残ったリプリーとコールが、宇宙船の窓から地球の景色を眺めて終わり。リプリーが「わたしも来たのは始めてよ」てなことを言いますが、二作目の最初の方って、あれは地球じゃなかったんでしょうか? わたしはてっきり地球だと思ってました。  
 そういえばこの作品、たぶんシリーズ中で一番生き残りが多いんじゃないか? あ、二作目も、一応四人生き残ったんだっけ? アンドロイドのビショップは、下半身なくなってたから、三人半として数えれば、今回が最高の四人ってことで(笑)  
 ラストの感じからは、次回作も当然作れます。作るつもりがあるかどうかは別にして。  
 さて、作品全体としては、とってもおもしろい。普通、続編を作り続けると、どんどんつまらなくなってくるものですが、このシリーズはそれほどでもありません。まあ、たしかに一作目のインパクトはなくなっていますが、それにしたって、他のろくでもないシリーズ物に比べたら段違いでしょう。  
 とはいってもわたしのこと。文句をつけないはずはありません。気に入った作品ほど文句をいうことが多い、という噂もあるぐらいで。  
 まず、これが西暦何年ごろの話しなのかはよくわかりませんが、このころになってもまだ、クレーンをボタンで操作しますか? しかも、ケーブルで繋がった、今でも工場やら倉庫やら港やらで見かける、あの手のボタンで。その上、宇宙空間にいるってのに、わざわざ(どうやってか知らないけど)重力を作り出して、重たい荷物をトレーラーのような物で運ぶか? しかも、タイヤがついてるぞ。なおかつ、操作がこれまたケーブルで繋がったボタンだし。重力なければ、指で押せるだろうに。  
 この時代といえば、まだ煙草にはジッポで火をつけるか。しかも、今とかわらないような煙草だし。まあ、変わりようがないといえばいえるかもしれないけど、なにもジッポを使わなくたってよさそうなものだと思うが。さもなきゃ、煙草を吸うシーンなんぞ入れないか。別に吸わなきゃいけない煙草でもなさそうだし。  
 それと、今回はリプリーには完全にエイリアンが混じってるわけですよ。それを証明するように、リプリーには、近くにエイリアンがいるかいないかわかったりする。で、前作では、体内に幼生がいるってだけで襲われなかったんだから、完全に混じった状態なら、絶対に襲われることはないと思うのだけれど(現に新種には襲われない)、これが結構襲われたりしてるんですね。なんででしょ?  
 そのうえ、近くにエイリアンがいるかいないかわかるはずなのに、扉の向こうに立っているのがコールだとわからない(エイリアンか、と緊張する)シーンがある。勘が鈍ったか、リプリー(笑)  
 それから、ラスト近くで、科学者の一人がコールを人質に取って、他の連中を脅迫します。ところがこの、他の連中というのの中に、コールがアンドロイドだとわかった途端に、態度を変えた男がいて、わたしは絶対に、その男がコールを気にもしないでぶっ放すと思ったんですが、素直に銃を捨ててしまいます。実はやっぱり惚れてたか(笑)  
 まだあるぞ(笑)  
 人体実験用にエイリアンを寄生させられている男を、それと知ってずっと連れていきます。なんでそんなことをするのかと思っていたら、最後に腹から出て来る幼生で、コールを人質に取った科学者を殺させるため、ときた。ちょっと無理矢理な感じがしませんか?  
 でだ。あれだけ巨大な宇宙船が地球に落ちて、映像的にもかなりの被害があったように見えるんだけど、最後に出てきた地球の風景は、きれいだったねぇ。そんなもん?  
 あと、大気圏突入の際に、窓に穴が開いていても平気なものなのでしょうか? わたしは、大気圏突入をしたことがないもんで、なんとも言えませんが。  
 こんなところかな?  
 そうそう。文句をつけるわけじゃぁありませんが、BGMの所々に、昔の「ゴジラ」の雰囲気を持ったフレーズがありました。まさか、夏に来る「ゴジラ」の宣伝のためじゃなかろうな。  


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