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[ 映画の感想文のようなモノ ]
映画「スターシップ・トゥルーパーズ」

'1998.05.22

 ロバート・A・ハインラインの原作で、映像化は絶対に不可能、と言われていた、と言われても、ハインラインの原作を知らない人には、何がどう不可能だったのかはわからないでしょうし、原作を知っている人に言わせると、「パワード・スーツの出てこない『宇宙の戦士』なんて、『宇宙の戦士』じゃない」と言うことになるらしい。幸か不幸かわたしはハインラインは知っていても、「宇宙の戦士」は読んでいないので、映画は映画として純粋に楽しむことができました。  
 で、どう楽しむことができたのか、というと、この映画実はダイジェストなんじゃないか。ダイジェストじゃない完全な作品を見たいぞ、と思ったほど楽しむことができたのです。もちろん皮肉ですが。  
 映像としてのできはいいです、すごく。噂の敵、昆虫にしか見えない宇宙人「バグ」の動きなんぞ、実際にこういう生き物がいるんじゃないか、と思わせるぐらいすごいです。そのうえ、死体や怪我人が非常にリアルで、足はちょん切れてるわ、手はなくなってるわ、頭は吹き飛んでるわ、内臓は飛び出してるわで、そういう映像がゴロゴロ出てきます。そういう意味では、この映画は時代を未来に設定した、というだけの、悲惨な戦争映画です。  
 しかも、一人の若者が精神的にも肉体的にも成長していく過程を描いていて、なかなかにおもしろい。  
 おもしろいんですが、残念ながらそれを二時間程度の中に収めるのは、少々無理があったようで。主人公も、まわりの登場人物も、もう少し色々と書き込んでいれば(って小説じゃぁないんだから「書き込む」はないか)、主人公の成長の過程や、仲間や上司との関係ももっとはっきりしたのではないか、と思ってしまうわけです。で、結局、「これはダイジェストに違いない」という結論に達してしまうわけですが。  
 残念ながらアメリカではテレビ番組にはかなり強い規制があって、あんなにはっきりと凄惨な死体や怪我人を写すわけにはいかないでしょうから、テレビシリーズにはできませんので、作るとしたらオリジナル・ビデオでしょうかねぇ。全十巻ぐらいで、一本二時間ぐらいのシリーズが出たら、わたしはきっと借りることでしょう。買いはしませんが。  
 さて、内容はいつものごとく、どこかで見てもらうことにして(笑) 文句をつけておきましょうか。  
 まず、主人公ジョニーが惚れる相手、カルメンが、どうにもわたしには好きになれません。なんでジョニーがこの女に惚れるのか、映画の中で彼女の魅力をもっと表現してくれていれば、その気持ちがこちらにも伝わってくるのでしょうが、それがありません。なにしろ彼女、いつも口を半開きにして歯を見せているせいで、あんまり知的に見えないんですよ。もちろん、ちゃんと口を閉じているシーンもありますが、それがなんだか、むりやり閉じているように見えちゃって。  
 彼女に比べれば、逆にジョニーに惚れているディジーの方が、わたしにはずっと好感が持てました。それはそれとして、映画の中で歩兵たちがシャワーを浴びているシーンが出てくるんですが、これがなんとも。男女同権を強調しているのか、混浴なんですよ。いいなぁ(笑)  
 歩兵たちといえば、彼らの訓練シーンが、これまたなんとも間が抜けてて。  
 武器なんぞは最新式の装備なのに、旗を取り合うという間抜けな訓練。処罰をするときにも、「鞭打ち十回」はいいんだけれど、なにもホントに革の鞭を出すことはないだろうが、という感じです。  
 さて、彼らの持っている武器ですが、最初は最新式のすごい武器だと思って見ていたんですが、途中で今のマシンガンと変わらない、ということに気がつきました。空薬莢は排出しているし、弾はなくなるし。ただ、弾がなくなるときと、いったい何発撃てるんだ、と思ってしまうときとあって、ちょっと御都合主義っぽいところがあります。  
 敵のバグたちについても疑問があります。  
 彼らの生息する星ってぇのが、どう見ても荒れ果てた星なんですが、あの連中はいったい何を食って生きてるんでしょうか?  
 そもそも地球人と彼らが何で争い始めたのか、ちゃんとした説明がどこにも出てこない。これが一番気になるところですかね。感じとしては、地球人が植民の名のもとに彼らの星にたどり着いて、「たかが虫だ」とか考えて殺し始めたんじゃないか、と。そのあたりは全然説明されていませんが、なんせアメリカだしなぁ、と考えてしまうのは、わたしだけでしょうか?  
 さてさて、荒れ果てた星を歩兵隊が歩いているときに、左右の崖から時々岩がガラガラ落ちてきます。それに気づいているのに、通信兵が「崖のせいで電波が届きにくい」というと、「上にあがって通信しろ」とひとりで行かせちゃうし。軍隊って、そういうもの?  
 そういうもの? といえば、軍隊って所はやっぱり、手柄を立てた人が昇進するところなんでしょうか? 上に立つ資質があるとかないとか、そういうこととは関係なく、訓練のときに敵の旗を取ったら、それで昇進しちゃうものなんでしょうか? そういう奴が上にいると、下の人間はやりにくかろうなぁ、と「宇宙戦艦ヤマト」の時代から思ってるんですが。  
 だいたい、ラスト近くで敵の罠にはまって囲まれたときに、救助を求めるんですが、その時に救助艇を操縦してくるのが、なんと宇宙戦艦のパイロット。それも、二人のパイロットが二人とも救助艇に乗って来ちゃうんですから。その間宇宙戦艦の方はどうしてたんでしょう?  
 まあいろいろと文句はつけてますが、SFXは期待通りにすごいです。まあ、ビデオが出たときには、見ておいてもいいかもしれません。凄惨な死体がいやでなければ、のはなしですが。  
 そうそう。わたしは個人的にカルメンよりもディズの方がいい、といいましたが、ちゃんとエンドロールでもプログラムでも、カルメンよりもディズの方が先に出てきて、ヒロイン扱いされていました。やっぱりわたしは正しかった。  


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