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2000.06.11
黒沢明、木下恵介、市川崑、小林正樹という、日本を代表する映画監督四人で、なんと３０年以上も前に作った脚本の、初映画化です。なんでも、最初はこの一本の映画を、四人がそれぞれ分担して監督をやって作り上げよう、という企画だったらしいのですが、あまりに夢の企画だったために実現しなかったもののようです。
それを今回、この四人のうちの、たったひとりの生き残りになってしまった市川崑監督が、やっと映画化した、ということですが。
じつは、わたし、時代劇を劇場で観たのは、これがなんと二本目なんですね。一本目は、１０年ほど前に、あの「七人の侍」をリバイバル上映したときに、二度観に行って。その時も驚いたんですが、今回も、客層にびっくりしました。お年寄りばっかりなんですよ。わたしなんか、まだ洟垂れのガキの部類に入っちゃうんじゃないか、と思われるような場内の雰囲気に、ちょいと唖然としてしまいました。中には、歩くのもちょっとおぼつかないような方もいらっしゃったようですが、こういうのを見ると、日本の映画業界も、こういうファンのためにも、もっといろんなジャンルの、大人の鑑賞に堪える映画を、どんどん作らなきゃいけないんじゃないかなぁ、と思ってしまいます。
さて、「七人の侍」を劇場で観たときに一番驚いたことは、途中で画面にでかでかと「休憩」の文字がでて、場内が薄明るくなり、１５分ほど休憩があったことでしょうか。で、もっとびっくりしたのは、その後「七人の侍」のレーザーディスクを買ったら、ディスクが何枚組かになっていて。それはいいのですが、ちゃんと「休憩」が入っていたこと。あれには、大笑いしながらも感動してしまいました。
って、今回は「七人の侍」じゃなくて「どら平太」だった。
できとしては、かなりいいと思います。痛快娯楽時代劇、という看板を背負って立つにふさわしい作品ではあると思います。少なくとも、近年の映画の中では。
残念ながら、かつての「用心棒」だの「椿三十郎」だのと比較してしまうと、ちょっと落ちるような気がしないでもないのですが。どこがどう、という話しになると、ちょっと難しいことになります。
話しの展開はわかりやすいし、バックグラウンドとしての江戸時代の小国の城下町の雰囲気も、たぶん良く出ていたと思います。ただ、残念なことに、セリフが現代語調なんですね。これはたぶん、意図的にやったことだろうと思うんです。今、まともに時代がかったセリフを言わせてしまうと、それでなくても少ない娯楽としての時代劇のファンが、あまりついて来られないんじゃないか、と。あるいは、それをできる役者さんもあまりいないのかもしれませんし、金と時間がかかってしょうがないのかもしれまんが。そういう意味では、会話も理解しやすくて良かったのですが、出演している役者さんたちが、おそらくみんな、その程度の「時代がかった」セリフまわしぐらいはできる人たちでしょうから、非常に残念でなりません。
特に主役の役所広司は、かなり現代風のセリフ回しが多かったので、体さばきがある程度きちんと時代劇していた分、違和感を感じてしまいました。
男優陣はほとんどみんな芸達者な人たちで、観ていて役を楽しんでいるような感じがあるのですが、唯一しっかりした役どころのある女優の浅野ゆう子が、ちょっと力みすぎというか、うまくこなれていないというか。他の役者さんじゃいけなかったのかなぁ、と。若村まゆみさんなんかいいんじゃないか、と思ったんですが、それじゃあ蔦吉ねぇさんとイメージダブるか。って、知らない人にはわかんないな、こんなこといっても（笑） 一部の人の間では、蔦吉ねぇさんといえば有名な人なんですが。
あ、女優さんでもうひとり。岸田今日子大先生が、出番はむちゃくちゃ少ないんですが、友情出演のような感じでいい味だしてます。それこそ、恐ろしいほどに（笑）
筋立てにひねったところはまったくといっていいほどなく、おおかたの予想の通りの展開です。
見せ場の大立ち回りも、かなり格好良く見せてくれて、気持ち良く見ていられます。ただその中で一個所、ストロボスコープを使った映像があって、それがなぜ必要だったのか、わたしには理解できませんでした。あの映像は、ない方がすっきりしたような気がするんですが、いかがなもんでしょう。
劇場でぜひ、とまではいいませんが、時代劇が好きな方は、ビデオが出たらぜひ観てください。いや、時代劇はそれほど好きじゃない、という方でも、映画が好きという方ならば、観ておいて損はしないと思います。特に得もないとは思いますけどね（笑）
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