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小説「ブレイン・ヴァレー」 瀬名秀明著(角川書店) |
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'98.01.11
あの「パラサイト・イブ」の瀬名秀明の新作です。とはいっても、知らない人は知らないでしょうけど。 「パラサイト・イブ」は、角川が主催している「日本ホラー大賞」ってので、大賞を取って、映画にはなるわ、ゲームにはなるわ、アニメには・・・・まだなってないな。 角川は、「角川ホラー文庫」ってぇのを出していて、「日本ホラー大賞」はその系列で募集してるんだから、受賞作も文庫で出るのかと思っていたら、「パラサイト・イブ」はハードカバーで出ちゃうし。ハードカバーで買っちゃいましたけどね、わたしは。 学術的な記述が多くて、慣れない人には実は非常に読みにくい作品でした。それに、わたしはあんまり「ホラー」だと思わなかった。ひとむかし前なら、単純にSFの範疇に入っていた作品でしょう。 で、この「ブレイン・ヴァレー」ですが、これも、ハードカバーです。しかも、上下二冊に分かれていて、一冊千四百円(税別)。上下巻とも買ったら、三千円ですがな。文庫になるまで待とうと思ってたんですが、ここに書くネタがなかったもんで、買ってしまいました。 読んでみてこれが、文庫じゃなくてもいいけど、せめてノベルズのサイズがよかったなぁ、というのが感想でしょうかねぇ。 前半は「パラサイト・イブ」同様、学術的な記述が多いです。小説読んでるのか、専門書読んでるのかわからなくなります。それでも我慢して読み続けると、やがてエイリアンに誘拐されるわ、臨死体験はしちゃうわ、超能力みたいなものは出てくるわ、宗教の話しは出てくるわ。さてどうやって収拾させるのかと思っていたら、結局結論らしい結論は、「全ては脳が見せている(もしくは見ている)幻覚のようなものである」というような持って行き方で。まあ、基本的には、人間が認識している全ての事柄は、単に脳がそう認識しているだけ、というのは確かなんですけどね。あそこまで話しを大きくしておいて、あの結末はないんじゃないの、という感じです。 そのうえ、最後にしっかり幽霊なんだか宇宙人なんだか出てきて、「愛がすべてだ」みたいな流れだし。 登場人物たちの色々な体験が、現実なのかリアルな幻なのか判然としない、という点では、似たような小説はいくつかあります。わたしが知っているのは、どれも超リアルなバーチャル・リアリティ・ゲームを題材にしたもので、ひとつは高畑京一郎の「クリス・クロス」、もうひとつは岡嶋二人の「クラインの壷」。どちらも、あまりに現実に近いバーチャル・リアリティのために、現実と虚構の区別がつかなくなる、という作品で、かなり恐いです。特に、「クラインの壷」は岡嶋二人最後の小説ということも含めて、一度読んでみることをお薦めします。新潮文庫から出てますので。 さて、値段が高い理由の一つが、下巻の巻末を見ればわかります。 参考文献、参考書籍の一覧が、二十五ページにも渡って記載されてます。これだけの資料を集めたとなると、それだけ金もかかっていることでしょう。しかし、なんであの中に「聖書」が入っていないんだろう? 入れなくていいのか。それとも、わたしの見落としかな? 内容的な疑問もいくつか。 ブレイン・テックという、脳に関するエキスパートが集まっている研究所に、なぜ脳に関する教育ソフトなんぞあるんだろう? すごくできのいい教育ソフトのようで、読んでいてわたしも欲しいと思ったんですが、専門家ばかりが集まっている研究所じゃあ、あっても誰も使わないと思うんだが。まあ、対外用に作った、ということにしましょうか。 あと、ミスプリントじゃないかと思う箇所が何個所かあって、それがちょっと気になってしまいました。 たとえば、上巻の三十ページの三行目。 「額や両目、両耳は覆われていたが、目と鼻と口、そして顎は辛うじておもてに晒されていた。」 という記述があるんですけどね。これ、明らかに変でしょ? 両目が覆われているのに、目と鼻と口は晒されているんですから。最初に読んでいた時には、ここで五分ほど止まって、いったい何の誤りなのか考えたんですが、結局わからなかったんですが、今この文章を書いているうちに、「ひょっとして”眉”じゃないか?」と思いはじめました。 正解をご存知のかた、ぜひごご一報ください。 確か、下巻にもひっかかった箇所があったはずなんですが、場所を忘れてしまいました。小説読みながらメモを取る習慣がないもんで・・・・つけなきゃだめかな? |
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1998.08.14 追記
最後に書いた「ミスプリントじゃないか?」の件で、作者本人からメールをいただきました。やはり誤植だったようです。 「額や両目、両耳は覆われていたが、目と鼻と口、そして顎は辛うじておもてに晒されていた。」 のうち、「目と鼻と口」の部分は、「鼻と口」の誤りなのだそうです。重版の際には訂正なさるということです。 念のために書いておきますが、「誤植」というのは、作者が誤って書いたものではなく、印刷の段階で発生した誤りのことを言います。たぶん、大勢で手分けしてやるのでしょうから、間違いも出るってもんでしょう。で、そういった間違いをなくすために、作者がゲラと呼ばれる製本前の印刷物に目を通してチェックするわけですが、なんせこの作品は長いですし、書いた本人としては読み飽きてるでしょうから(笑)、多少のモレはありますよ。あんまり突っ込むのはやめましょうよ。って、突っ込んだのはわたしですが(笑) まあ、わたしの場合、細かいところに目が行く作品っていうのは、気に入った作品ってことですから、勘弁してやってください。 で、このメールをもらった時点で、上の文章を読みかえしてみたら、なんだかわかりにくいですねぇ(笑) わたしが、「眉なんじゃないか?」と思ったのは、「額や両目」の部分の「両目」、これが「両眉」なんじゃないか、と思ったわけで。こんな文章書いてるようじゃ、他人のあげあし取れる立場じゃないやね。こんなわけのわからない文章を読んでメールをくださった瀬名秀明氏に感謝いたします。 ちなみに、わたしのページの随所にあらわれる「ご一報ください」に対してご一報くださったのは、瀬名氏がはじめてでした、たぶん。(って、ちゃんと覚えてないのか>おれ) もし、「以前に一報入れたぞ!」という方がいらっしゃいましたら、ご一報ください(笑) |
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