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1998.02.15
考えてみたら、この人の作品を読むのはこれがはじめてだった。今までなぜ読まなかったのかはわからないが、今回は書店で見つけて思わずレジに走ってしまった。
理由は簡単、わたしの好きなSFのジャンルがふたつ、融合した作品のようだったからだ。わたしの好きなSFのジャンルというのは、「超能力」「時間旅行」のふたつ。
超能力でいうと、古くはシオドア・スタージョンの「人間以上」や「夢見る宝石」、アルフレッド・ベスターの「虎よ、虎よ!」などが有名だし、時間旅行に関してはあの有名な「タイムマシン」なんぞもある。最近の作品では、超能力ものならスティーブン・グールドの「ジャンパー −跳ぶ少年−」がなかなか秀逸だったし、旅行ではないし、少し古いが、「リプレイ」という作品も好きだ(なのに、作者の名前がわからない。本はどこかにあるはずなんだが、積み上げられた本の山のどこにいったやら・・・・ご存知の方、ご一報ください)。
超能力ものの話しは次回にまわすとして、今回は時間旅行のはなし。
映画で有名な「バック・トゥ・ザ・フューチャー」があるので、かなり多くの人がご存知だと思うが、時間旅行もののSFの大きなテーマとして、「タイム・パラドックス」というのがある。これは、単純にいえば、「タイムマシンに乗って、自分が生まれる前の過去に行き、自分の先祖を殺したらどうなるか」という問題である。
過去に行って自分の先祖を殺してしまったら、自分は生まれないわけだから、タイムマシンに乗って過去に行くことはできなくなる。そうなれば、先祖は死なないわけだから、自分は生まれて、やがてはタイムマシンに乗って過去へ行き・・・・と、わけのわからない状態になるわけである。
あるいは、過去を変えてしまったために現在や未来が変わってしまったり。といった内容の作品が多い。映画では、あまり評判にならなかったようだが、ジャン・クロード・バンダム主演の「タイムコップ」という作品がある。この作品、わたしは非常に好きなのだが、その理由として、通常のタイム・パラドックスものとは逆のパターンを使っていることにある。つまり、正しいと思っていた歴史が、実は歪められた歴史だった、と。
この「タイムコップ」もそうだし、今回の「タイム・リーパー」も、そういった歴史の改変や歪みを正す、通称「タイムパトロール」というのが物語の中心にいる。
本作「タイム・リーパー」では、時間跳躍能力を持つ主人公が(自覚症状はまだない)、三十年ほど先の未来に跳んでしまうところから話しが始まる。その時代には、超能力者を集めた秘密警察のようなものがあり、これが主人公の能力に気づいて彼を狙い始める。一方、遠い未来のタイムパトロールは、時間跳躍能力を持つ主人公を、自分たちの組織にスカウトすべく、行動を開始する。と同時に、時間の歪みをも修復しなければならない。しかも、自分の時代から三十年後に跳躍してしまった主人公は、本来の時代からわずか五年後に、自分が死んでしまうことを知る。さて、主人公の運命やいかに。
といった感じで、全体の雰囲気は日本のSFというよりも、翻訳ものの雰囲気がある。話しは、おおむね三十年後の世界で展開されるのだが、時間経過にそって話しが進むわけではない。各章ごとに時間は前後している。場合によっては、一度終わった章が再開されることもある。
全体としては面白いし、読んでいて「さて、どうする?」といった展開もワクワクさせられるが、わたしはたぶん、この作者の他の作品は読まないだろう。
それは、地の文の文体がわたしの感性にあわないから、というつまらない理由に他ならない。こればっかりは、作者の感性とわたしの感性の問題だからしかたがない。
実は、わたしが小説のようなモノを書き始めた理由もこういうところにある。「ここの表現は、俺だったらこうするのになぁ」と思いはじめてしまうと、読んでいてイライラしてくる。この作品の場合には、そういう部分は非常に少なかったのだが、それでも他の作品を読んでみたい、と思わせるのには充分な障害になってしまった。
話しとしては充分面白いですからSF好きな方にはお薦めします。
ただし、時間が行ったり来たり、やり直したりするので、頭の悪い方には理解し難いかも(笑)
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