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[ 小説の感想文のようなモノ ]
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小説「デスペレーション」
スティーブン・キング著(新潮社)
全国書店ネットワーク e-hon


 実をいうと、わたしはキングの作品をあまり読んでいません。それでも、十冊程度は読んだと思うのですが、なぜかあまり記憶に残っていません。一番鮮明に記憶に残っているのが、小説ではなく、映画の「シャイニング」で、これはキングの力というよりも、ひとえに主役の力だと思うのですが。次が小説版の「シャイニング」。これを読んだときには、確かにかなりわくわくどきどきしたのを覚えています。キングの作品に触れたのは、この逆の順番で、小説の「シャイニング」を先に読み、その後映画を(ビデオで)見たのですが、わたしの中のランキングでは、順番が逆になっています。  
 その後も、キングの書いた小説はいくつか読みましたし、キング原作の映画も(ビデオで)見ましたが、わたしにとっては、小説も映画も「シャイニング」よりも面白い作品にあたった記憶がありません。もちろんこれは、わたし個人の感想なので、人それぞれ意見は異なるでしょう。  
 で、この「デスペレーション」も「シャイニング」を超えることはできなかったようです。どうやらわたしには、キングよりもディーン・クーンツの方が肌にあっているようです。  
 ところが、この「デスペレーション」という作品の雰囲気は、多少初期のクーンツっぽいところがあって、かなり面白く読むことができました。それでも、やはり「シャイニング」よりは、下。  
 他のキングの作品をあまり覚えていないので、比較することが難しいのですが、読み終えた後の感想としては、「キングって、こんなに愛や神を前面に押し出す人だった?」というのが一番強かった。まあ、ホラーとして面白い作品は、大抵の場合、敵と戦うための力として「愛と勇気と友情」のどれかを使ってますが。これはまあ、ホラーにかぎらず、娯楽作品の基本といえば基本なのかもしれません。とくにアメリカの作品では、「最後に愛が勝つ」というパターンは王道のようで、クーンツの最近の作品はほとんどすべてそれです。日本でもやはり、正体不明の敵と戦う場合には、敵の弱点を突いて倒すよりも、愛と勇気と友情で倒すことの方が多いのではないでしょうか? 「ドラゴン・ボール」なんかの場合だと、対象がことも向けってこともあって、「愛」は抜けちゃうようですが。  
 ただ、この作品には、ラスト近くで二ヶ所ほど、うれしくなるシーンがありました。  
 どちらもかなり前の方でしっかり伏線を張っていたにもかかわらず、単にわたしが忘れていた、ってだけのことなんですが、それでも「おお! ここでそれが出てくるか」といった感じで、うれしい限りです。  
 ただ、もちろん欠点もあって、キングの作品の特徴として、その時点でのアメリカの風俗が多く盛り込まれているために、リアリティがある、ってことになっているのですが、それを翻訳で読んでも、いまひとつピンと来ない部分がある。それは、アメリカはやっている歌であったり、はやっているテレビ番組であったりするわけですが、それが出てきてもわたしには実感がつかめない。まあ、今の日本の小学生を描写するときに、腰にデジモンを二つばかりぶら提げていて、鞄からゲームボーイを取り出してポケモンやっているところを描写すれば、それっぽく見えるでしょうが、それを翻訳してアメリカで出版してもわからないかもしれない、といった程度のことでしょうが。  
 この作品は、帯やあとがきにも書いてあるように、リチャード・バックマンの「レギュレイターズ」と対になる作品になっているそうです。ご存知の方はご存知でしょうが、バックマンというのは、キングのペンネームのひとつで、何本かの作品を書いたあとに、死んでしまったことになっています。  
 あいにく、「レギュレイターズ」の方は、まだ読んでいないので、比較することはできませんが、そのうちきっと読むでしょう。じゃないと、片手落ちになってしまう。__DATE__1998.06.15  


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