|
1998.10.17
あれ? そういえば、「ドラゴン・ティアーズ」の感想文のようなモノを書くのを忘れていた。まあ、いいか。
「ドラゴン・ティアーズ」の解説に、すごいことが書いてありまして。ひらたく言うと、アカデミー出版の「超訳」をけなしていたんですが、名誉毀損で訴えられるんじゃないかと、ひとごとながら心配になってしまうような書き方でした。
ちなみに、その「超訳」というのは、原文をそのまま日本語に置き換えるのではなく、そのあと、再度日本語として再構成をして、読みやすくする、というような感じのものでして。たとえば、原文では韻を踏んでいるような文章も、日本語にしてしまうとそうではなくなってしまうので、別の言い方に置き換えるとか、そういった感じのことがなされるようです。
「ドラゴン・ティアーズ」の解説には「勝手に原文の一部を省略するような」と書いてありますが、なにしろ原書を持っていませんし、持っていたとしても、英語はさっぱりわかりませんから、このあたりのことはよくわかりません。「ドリッピー」も「追跡」も持ってるんですけどねぇ。持ってるだけじゃ、だめってことですか。
まあ、翻訳ものの欠点は、書いた本人のリズムで読むことができない、ということにあります。おそらく翻訳家の方も、できるかぎり原文のリズムに忠実になるように努力しているのでしょうが、リズムというのは人によって受け取り方が違いますから、結局読者が受け取るのは、作家本人のリズムではなく、翻訳家のリズムになってしまうわけですね。そういう意味では、翻訳ものを読む場合に本を選ぶ観点として、作者ではなく訳者で選ぶ、という手もあるわけです。
わたしは一時期それをやったことがありました。ただ、この場合難しいのは、翻訳家は、誰のどんな作品を扱うかわからない、という点でして。書店で捜すのも一苦労。だもんで、やめちゃいましたが。
で、この「生存者」はそのアカデミー出版の「超訳」で出版された、クーンツの二冊目の本です。一冊目の「インテンシティ」も、持ってはいるのですが、実は最後まで読んでないんです。なんで途中でやめちゃったか、というと・・・・自分でもわからないんですよ。たぶん、「超訳」のせいではないと思いますが。ときどき、そういうことがあるんですよ。なぜか途中で止まったまま、何年も放りっぱなしになっていて、何年かぶりに最初から読んでみたら、これが面白かった、なんてことはよくあります。もちろん、何年ぶりに読もうと、つまらない作品はやっぱりつまらなくて、再度途中で投げ捨てられる運命にあるんですけどね。「インテンシティ」は、まだ読み直してませんので、どういう評価になるかはわかりません。
そういう意味では、わたしにとっては「超訳」のクーンツ作品はこれがはじめてのようなものです。
ううむ。
それほどひどいとは思えないけど。まあ、原文との比較をしてませんから(じゃなくて、できないから、だな)、なんともいえませんが。
さて、ここから先は、例によってネタばらしに近いことをします。読むか読まないかは、自分の責任でお願いします。
帯をみると、「自殺志願の男が・・・」てなことが書いてありますが、別に主人公は自殺志願者じゃありません。ただ、生きていることに意味を見出せなくなった、というか、ほとんど生きる屍状態というか。
全体の構成は、「ウォッチャーズ」に似ています。
生きているのが嫌になっている主人公。彼が巻き込まれる謎の事件。実は、事件の裏側にある暗黒部分も、この作品は「ウォッチャーズ」に大変よく似ています。違いといえば、、作り出したものが動物だったか人間だったかということ。しかも、作り出したものの一方は恐ろしいほどの悪で、もう一方はとてつもない善ときては、こりゃもうほとんど「ウォッチャーズ」
ただ、「ウォッチャーズ」と違うのは、それがかなり後にならないとわからない、という点と、最後まで戦うところまでは、作品にしていない、という点でしょうか。そういう意味では、「心の昏き川」と展開は似ています。あるいは、「ミスター・マーダー」とも。
つまり、かつてのクーンツの作品では、少なくとも全体の半ばあたりで敵の正体がわかり、そのあとは敵と戦い、最後には勝利をおさめる、というのが基本的なパターンだったのですが、最近はどうもそうでもないようです。まあ、「ドラゴン・ティアーズ」では、久しぶりに敵との完全対決をして勝ちをおさめますが、ちょっと拍子抜けするような勝ち方だったような気がします。
この「生存者」でも、主人公は敵と対決はしません。はっきりいって、敵の正体がわかった時点で、おはなしが終わってしまうような感じです。いってみれば、「続編作れるよな」ってな感じです。たぶん、作らないでしょうが。
敵のもつ不思議な力というのも、途中でなんとなくわかります。で、その力の持ち主が子供じゃないか、というのも、大友克洋の「童夢」や「アキラ」を読んでいれば、想像がつきます。特に、研究所の描写を読んでいると、「アキラ」のイメージが多少なりとも出てくるのは、しょうがないことでしょう。まあ、「アキラ」を知らない方には、そんなイメージは湧いてこないでしょうが。
余談ですが、この「童夢」と「アキラ」、一般には「アキラ」の方が有名ですが、わたし個人としては「童夢」の方が好きです。ビデオオリジナルでいいから、アニメ化してもらいたいぐらいで。できれば「長さん」の声は永井一郎で。「そーだよ。ぼくだよ」というセリフは、絶対に永井一郎の声でやってほしい。ただこの作品、マンガの時点でほぼ完成しちゃってますから、アニメにしたとしても、マンガ以上のことはできないだろうなぁ、と。まあ、なんにしても「童夢」は、一度読むことをおすすめします。ちょっとホラーっぽい雰囲気ですが、超能力もののSFですから。ただ、かなり古い作品ですから、今手に入るかどうか・・・・
しまった。「生存者」だよな。
まあ、全体としては、あいかわらずのクーンツ節といいましょうか。大きく文句つける場所もありません。
ただ、これはクーンツの責任じゃないと思うのですが、表紙の意味がわかりません。
|