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[ 小説の感想文のようなモノ ]
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小説「バースデイ」
鈴木光司著(角川書店)
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1999.02.01

 なんですか、世間では「リング2」とかいう映画が公開されているようで。たしか、「リング」の続編は「らせん」だと思ったのですが、この「リング2」も「リング」の続編のようで。なんだかわけがわかりません。まあ、やろうと思えば、例のテープを軸にして、いくらでも話しは作れるわけですが。それはやめた方がいいと思うぞ、角川。  
 さて、今回とりあげる「バースデイ」も、一応「リング」三部作に関連する作品です。もちろん、原作の小説の方の、です。中には三本の中編が収録されていて、順番でいうとそれぞれ「らせん」「リング」「ループ」に対応しています。順番が、ちょっと違う。  
 帯に書かれている作者の言葉をみると、どうやら各作品の外伝のような感じ、ということだそうです。まあ、外伝というよりも、同じ帯に書かれている「映画の編集中に一度は切り捨てられたフィルムのようなもの」というたとえが、一番あっているかもしれません。本編の中では細かく描写されなかった部分、あるいは、まったく描写されなかった部分が、独立した作品として載っています。本書に収録されている各作品を、本編の方に挿入しても、まあそれほど違和感はないかもしれません。もちろん、全体のリズムは壊れてしまうでしょうが。  
 そういう意味では、本編の方を読んでいる人には、そこそこ楽しめる内容ではありますが、本編を読んでいない人にはどうでしょう。いきなりこの本だけ読んで、おもしろいかどうか、疑問が残るところです。あいにくわたしは、本編の方を読んでしまっているので、そのあたりの正しい判断はできません。どなたか、「リング」「らせん」「ループ」を読んでいない方で、この「バースデイ」を読んだ感想を聞かせてください。  
 各作品とも、それぞれ本編と同じような雰囲気を持っているのも、編集作業で切り捨てられた部分だからでしょうか。「リング」の心霊的な怖さ、「らせん」の「誰かがそこにいる」的な怖さ、「ループ」のあまり恐くなさ(笑)という雰囲気に加えて、ちゃんと本編と同じつながり方をもたせていて、見かたによっては、三本の中編にも、一本の作品にも見えるようになっています。  
 まあ、「ループ」の外伝というか、長いエピローグのような「ハッピー・バースデイ」という最後の作品に関しては、そのまま「ループ」の最後に挿入しても、違和感はまったくないでしょうが、入れなくて正解だったんじゃないかな、というのがわたしの感想です。これが「ループ」の最後にあったら、ちょっとしまりが悪くなったような気がします。ということは、「ハッピー・バースデイ」という作品自体が、少し間延びした感じ、ってことになってしまうんでしょうか?  
 個人的には、このみっつのおはなしは、なくてもいい、というか、ない方がよかったような気がしてますが、いかがでしょう?  


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