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1999.03.07
たしか、「ドラゴン・ティアーズ」の解説に、「今後クーンツの新作は、超訳でしか読めなくなる」というようなことが書いてあって、一読者としては「ああ、そうなのか」としか思わなかったんですが、先日書店に行ったら、クーンツの本が山ほどあって、「あれ?」ってな感じでした。で、よく見たら、どれも再刊です。全六冊(「12月の扉」は上下二冊なので、実質五作)が、創元社から再刊されました。中にはタイトルが変更されているのもあったんですが、それはそれとして、ほしかったのに手に入らなかった作品が、やっと手に入ったのは、うれしいかぎりです。
再刊されたうちの「12月の扉」だけは、すでに持っていましたので、残りの四冊を買って、とりあえず、二冊は読み終えたところ。
どれも基本的にはクーンツの中期の作品ですから、今読むといまひとつだったりするのもあるんですが、逆に、今のクーンツの基本となっている部分もありますので、そういう読み方をしてみると結構面白いでしょう。
まずは「ストーカー」。
これはもともと「狂った追走」というタイトルだったんですが、今回の再刊で邦題が変更になりました。まあ、今なら「ストーカー」の方がわかりやすいでしょうね。
内容としては、クーンツお得意の追跡と逃走、襲撃と反撃の物語です。ただ、最近の作品と違うのは、追う側も追われる側も特殊な能力を持っているわけでも、特別な組織に属しているわけでもない、という点ですか。まあ、「ストーカー」というタイトルに変更になったことから見ても、追う側が正常でないのは当たり前といえば当たり前なんですが、それ以外は単純なサスペンスに近いでしょう。
気になったのは、追う側が時々、ひどい頭痛に襲われるんですが、この理由が提示されていないこと。この頭痛のせいで彼がおかしくなったのか、おかしくなったから頭痛がひどくなったのか、このあたりははっきりしていません。それに、出てきた警察も、結局なにしに出てきたのか、何の役にも立っていません。もしかしたら、このあと死んだと思っていた犯人が・・・・という展開になって、いきなりホラーに変わるようなことを考えていたのかもしれません。つまり、この作品はプロローグにあたる。でもそのためには、そこに至るまでの話が長すぎます。で、これはこれでやめちゃった、と。そのアイデアは、別の作品に使った、と考えるのは、考えすぎでしょうか?
今のクーンツから考えると、このパターンの作品にしてはかなり短くまとまっています。それがいいのか悪いのかは、別にして。
さて「悪魔は夜はばたく」です。
これは、あの有名な「ベストセラー小説の書き方」でも、導入部が参考作品として紹介されていますので、一度読んでみたかったんですが。まあ、最近のクーンツ作品を読んだ後では、少し物足りないような気もしますが、それでも充分に楽しめる作品です。
誰が犯人か、ということは、途中で見当がついてしまいますが。
読者を誤った方向に導いて、あっと驚かせようとしているのだろうと思われる記述が、何箇所もあるのですが、それをやられればやられるほど、「こりゃもう間違いないな」と確信させられてしまいました。これはまあ、わたしの性格が素直じゃなかったから、ということもあるのでしょうが。
とりあえず、残りの二冊「人類狩り」と「逃切」は、まだ読んでいないのでわかりませんが、この「ストーカー」と「悪魔は夜はばたく」は、クーンツファンでなくても、読んでおいて損はない作品でしょう。
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