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1999.06.13
いきなりですが、今回も思い切りネタばらしをしちゃいますので、覚悟のない方はお読みにならないでください。
この作品は、1994年に雑誌に連載され、1996年に一度単行本として刊行されている作品ですが、近年映画でだいぶ活用されている世界崩壊系の内容です。
ある日を境に、子供たちがひとり、またひとりと姿を消し始めます。それが、誘拐や単なる失踪でないことは、読者にはすぐわかるようになっています。読み進むうちに、これは世界の滅びが近いんだ、ということもわかって来ます。子供達の行動は、船が沈没する前に鼠が船から逃げ出す、といわれている、あの現象に近いんだ、ということがわかります。何が起きるのか、ということは、後半まで明確になりませんが、とりあえず「津波が来るんだな」ということは、途中でなんとなくわかります。子供達が、高いところに移動しようとしてますからね。
実際には、単に津波が来るだけではなく、地軸の移動がおきるんだ、ということが後ではっきりしますが、「それでこの程度で済むの?」と思いたくなってしまう部分もあります。
疑問なのは、この大移動が、人間にしか起きなかったこと。他の動物にこの現象が起きなかったということは、ほとんどみんな滅びちゃったんでしょうか? そのあたりの説明はありませんでした。
この作品が、他の破滅ものと少し違うところは、子供たちが新しい人類だ、というところでしょうか。正確には、「新しい」というよりも、おそらくは「文明に毒されていない」という表現の方が近いかもしれません。
いろいろな説明がされていますが、平たくいうと、「全体意識」のようなものがあって、それが、人類という種が滅びないように手を打った、というところでしょうか。
それに加えて、少しオカルトっぽいところも入っています。オカルトというか、ホラーというか。そのあたりは、他の破滅ものとはだいぶ違います。それに関しては、個人の好みで評価が分かれるところでしょうが、わたしが気になったのは、妨害者が自分の手下としてかなり大勢集めたようなのですが、どこでそれだけ集めたんだ、という点。集め始めたのが町中ならわかるんですが、山に入ってからで、こんなに集められるのか? という疑問が少し残りました。
あと、これこそ個人の好みの問題かもしれませんが、文体がわたしの好みに合わない部分がかなりあって、ちょっと読みにくく感じてしまいました。
たとえば、百十六ページの二行目にある、「時速八〇キロを、速度計は指していた。」という記述。単なる倒置法といえばそれまでですが、ここで使う必要があるのか? とひっかかってしまいます。
あるいは、百八十九ページの五行目。
「身体は、兆よりも、ひとまわり大きいが、おかっぱ頭でオレンジ色のポロシャツを着ている。」
という記述。「兆」というのは、「きざし」と読んで、登場人物の一人の小学生です。この記述は、ある女の子の説明なのですが、気になったのは、真ん中にある「が、」の部分。わたしの感性では、「体は大きいが」と来たら、次にはその外見からは異なる記述が来てほしいんです。たとえば「体は大きいが、年齢はずっと下だ」とか「体は大きいが、手は兆の方がずっと大きい」とか(笑)
ここは単に「ひとまわり大きくて」でいいんじゃないかなぁ。
他にもいろいろと、ひっかかるところはありました。まあ、気にしすぎといえば気にしすぎなんでしょうが、全体の内容が嫌いでない内容なだけに、余計に気になってしまいました。
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