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[ 小説の感想文のようなモノ ]
小説「なめくじ長屋捕物さわぎ」
都筑道夫著(光文社文庫)
全国書店ネットワーク e-hon

1999.06.27

 この「読んだ小説の感想文のようなモノ」の「新作で長編のみを扱う」という禁を破って(って、わたしが自分で勝手に決めた約束事ですから、読んでる人には関係ないんですけどね)、今回紹介する作品は新作でもなければ、長編でもありません。しかもシリーズもので、現在全十一冊出ています。  
 禁を破っちゃった理由は、六月二十七日付けの近況を読んでもらうとして、なんでそんな約束事を作っちゃったかという言い訳を少し。まず、新作を扱う、というのは、わたしの書いた感想を読んで、その本を読んでみたいと思った人がいた場合(あんまりいるとは思えないけど)、古い本だと手に入りにくくなって、なんとなく申し訳ないような気になってしまうからです。べつにわたしが申し訳なく思うことはないんでしょうけどね。  
 で、長編のみ扱う、というのは、短編集の場合、そのうちのひとつだけ取り上げたんじゃあ、その本全体の感想にならないし、収録されている作品の感想を全部書いていたんじゃあ大変だから、というわたしよりの都合なんですが。  
 で、このシリーズです。  
 以前にも書いているように、都筑道夫という作家は、わたしにとってはお手本のような人で。もちろん、わたしの文章が、お手本通りになっていないのは承知の上ですが、まあ純粋に、好きな作家の筆頭にいる作家なわけです。ところが、この「読んだ小説の感想文のようなモノ」には、過去一度しか登場していません。なぜかといえば、このホームページを開設して以来、その一冊しか、ここで取り上げる条件に見合った本が出てないからなんですね。それ意外にも理由はあるんですが。  
 なにしろ、自分が手本にしてる作家なわけですから、けなすのがむずかしい、と(笑)  
 そんなわけで、今もなんだかんだいって、ちっとも感想らしきものを書いてませんが。  
 おおまかな内容の紹介をすると、江戸も末期のころのおはなしで、武士でも町人でもなく、乞食や大道芸人ばかりが住み暮らしている長屋があって、そこの面々が、中の一人、同じく大道砂絵師のセンセーの采配で、ちまたの謎をときあかす、と。そんな設定の場合、下手をすると、そんな彼らも実は世を忍ぶ仮の姿で、実は・・・・なんてぇことを考えそうですが、裏も表もそのまんま。謎を解くのも、正義や真実のためなんかではなくて、裏にまわって金もうけをしよう、という、とんでもない連中だったりするわけです。  
 このシリーズ、かつては角川文庫から出ていたんですが、今では光文社文庫で全巻そろいます。ただ、大きな欠点がひとつあって。角川から八巻目の「おもしろ砂絵」まで出ていた関係からか、光文社文庫から最初に出たのが、九巻目の「ときめき砂絵」からで、次に十巻目の「いなずま砂絵」が、それから順にさかのぼって、八、七、六と一巻目の「ちみどろ砂絵」まで出て、その後最新巻の「さかしま砂絵」が出る、という変則的な出版のしかたをしてまして。まあ、全部短編なんで、どれから読んでもいいんですが、やっぱりシリーズものは最初から順に読みたいですよね。  
 ところがこのシリーズ、本のどこにも、第何巻と書いてないんです。全部「くらやみ砂絵」とか「からくり砂絵」という本のタイトルだけで、どれが何巻目かを知ろうと思って裏の折り返しを見ると、最新巻の「さかしま」以外、順番が光文社文庫での出版順なんですね。困ったもんです。  
 ってことで、結局感想らしきものは書きませんでしたが、ひとつだけ。砂絵のセンセーは、いつも八辻が原で砂絵を描いているんですが、砂絵を描いているシーンが出てくるのは二作目から、しかもそこは八辻が原ではなく、実際に八辻が原で砂絵を描いているシーンが出てくるのは、なんと五作目から、という。なんというか。すごいです(笑)  


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