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[ 小説の感想文のようなモノ ]
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小説「警告」
パトリシア・コーンウェル著(講談社文庫)
全国書店ネットワーク e-hon

1999.12.19

 この「検屍官シリーズ」も、これで十作目だそうで。じつは、はっきりいって、過去の九作の内容は、ほとんど覚えてないんです。一作一作の印象が薄いといってしまうと、怒られちゃうかもしれませんが、はっきりと記憶に残っている作品がないんですね。なんとなく、どの作品も似たような印象があって、ひとつひとつの作品の特徴を見出すことができないんですよ。  
 それはまあ、わたしに理解力が乏しいとか、記憶力がないから、というのが、一番大きな理由でしょうが、それよりもたぶん、わたしがこの主人公をあまり好きになれないから、というのも、理由のひとつだと思うのです。なんだか、あんまり魅力を感じないんですね、主人公に。  
 たしかに、地位も実力もあって、仕事の鬼だけど、人間的な弱さもあってと、小説の主人公としては悪くない設定だとは思うのですが、なんだかいまひとつ好きになれない。好きになれないというよりも、もし知り合いにこういう人物がいたら、わたしはたぶん嫌いでしょうね。  
 いっつも何かに悩んでいて。それがほとんどプライベートなことだったりして。それは別にかまわないし、人間として当然のことだとは思うのですが、それを抑えて一生懸命仕事して、でもやっぱり悩んでるということが表面にでちゃって。「それでもわたしにはやることがあるから、やらなきゃいけないんだ」と頑張る。しかも、最終的にその頑張りのおかげで事件が解決するか、というと、実はそうでないパターンが多くて。検屍官として色々調べた結果から犯人を追いつめて、ということはあまりないような印象です。ほとんどが、自分も犯人に狙われて、その瞬間に、他の人間に助けてもらって終わる、と。結局、主人公が頑張って仕事したことというのは、事件の解決そのものに影響は与えてなかったりして。  
 もちろん、この主人公のお仕事は、犯人を追いつめることじゃないわけですから、そういう展開もしょうがないんでしょう。直接犯人を追いつめることにはならなくても、犯人を絞り込む材料になったりはしますし、それが決め手になったりもするんですが。なんだかこの主人公、事件のたんびに連続殺人犯に狙われてるような気がする。  
 そろそろマンネリ化してるんじゃないかなぁ、物語の展開が。登場人物たちの関係は、色々と変わってきているようですが。そのせいで、逆に登場人物がみんなイライラしてるような感じもするし。  
 そういえば、通常仕事やプライベートでこれだけイライラしてたら、とっくに神経性胃炎ぐらいにはなっててもよさそうな気がするんですが、この作品の主要人物達は、本人たちが思ってる以上に、神経が図太いのかもしれません。  
 わたしとしては、そろそろ飽きてきた感じです。なのに、なんで新作が出るとすぐに買っちゃうのか、それが謎なんですが(笑)  
 まあ、今回の作品に関していうと、今までとちょっと毛色が違うような感じでもあるんですが。いや、物語の展開は、今までとそれほど変わらないんですけどね。犯人の設定が、いままでの中では、一番おもしろかったような気がしました。たぶん、単にわたしの好みにあっていた、というだけのことなのでしょうけど。  
 ただ、この手のお話に、主人公の色恋はあんまり前面に出してほしくないんです。まあそれも単にわたしの好みですから、それが好きな人だって大勢いることでしょう。  
 そういえばこの主人公、今回はフランスへ行きましたし、過去にもイギリスなんぞへ行ったりもしてますから、今度は日本にも来てもらいたいもんですねぇ。でもって、警察機構やら検屍のやり方の違いで、今まで以上にイライラしてもらう、と(笑)  


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