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[ 小説の感想文のようなモノ ]
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小説「粗忽拳銃」
竹内真著(集英社)
全国書店ネットワーク e-hon

2000.01.16

 小説すばる新人賞を受賞した作品です。とはいっても、作者はまるっきりの新人ということではないようで、過去にもいくつかの賞を取っているようです。というような情報が、カバーの折り返しに書いてあったんですが、わたしは、作品を半分ぐらい読むまで気がつきませんでした(笑) というのも、結構読みやすくて、さくさく読めちゃったんですよ。で、ふと「いやに読みやすいなぁ。すげぇ新人だなぁ」と思って、よくよく見たら、かなりの人だった、と。  
 じつは、これまでの「小説の感想文のようなモノ」を見ていただくとわかるんですが、わたしは、こういう感じの作品を読むことはめったにないんですね。こういう感じったって、読んでない人にはどういう感じかわからないでしょうが。  
 前座の落語家と、その友人で役者の卵、映画の助監督、ライター見習いの四人が、たまたま拾った本物の拳銃を手に……と書くと、なんだかアクション物のような感じもしてきますが、そんなことはまったくない、純粋な青春ストーリーなわけです。  
 普段わたしが読むお話しといったら、SFかホラーか推理小説か。そういった傾向の作品が多いので、たまにはこういうのもいいかな、と。もちろん、さいしょはタイトルに拳銃という文字が使われていることと、空を破って突き出されている拳銃の表紙に引かれたんですが、帯を読んで、推理小説やアクション系のお話しではないことは、予想がつきました。  
 タイトルの感じといい、主人公が前座とはいえ落語家という設定といい、中にはたくさん落語のネタがでてきます。わたしはあいにく、寄席に行ったこともありませんし、落語ファンということでもありませんが、基本としてある程度の落語は押さえていますので、なかなか楽しく読むことができました。もちろん、落語を全然知らない人でも、充分楽しめる作品だと思います。  
 ただ、例によっていくつか気になった点が。  
 わたしも、若いころには、多少モデルガンなんぞで遊んだ経験もありますし、映画なんぞでも銃を見ることができます。グアムだかハワイだかで、銃を撃ったこともありますが、あいにく、トカレフという銃には詳しくありません。詳しくはないんですが、本文を読むかぎり、トカレフがオートマチックの銃だということぐらいはわかります。  
 オートマチックの銃って、いちいち遊底引いて次の弾を薬室に送り込まないと撃てないんだっけ? 通常は、ブローバックしてそれをやってくれるから、オートマチックなんだと思うんだが。しかも、空薬莢を排出してる様子もないし。ひょっとして、トカレフってそういう銃なんだろうか。って、そういう銃ってのがどういう銃なんだか、わたしにもよくわかりませんが(笑)  
 最後に記載されている参考資料を見るかぎり、この作者は落語に関することはかなり調べたようですが、銃に関してはあんまり調べなかったんじゃないかなぁ、という気がしないでもありません。  
 あと、これはもしかしたら、わたしが読み飛ばしちゃたのかもしれませんが、四人が知り合ったきっかけというのが、いまひとつはっきりしないんですね。天馬と広介に関しては書いてあったのを覚えていますが、他のふたりと、どう知り合ったのか、よくわかりませんでした。まあ、本筋に関係ないことですから、なくてもべつに問題はないんですが。  
 あ、あとひとつ。広介の家の電話って、最初料金未払いで止められてたんですが、途中からいつのまにか使えるようになってました。使えるようになったのって、オーディションの結果を待っているときよりも前だったんでしょうか? 電話が通じている、という描写は、それよりも後だったもんで、ひとごとながら、ちょっと気になってしまいました。  


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