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[ 小説の感想文のようなモノ ]
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小説「闇へ降りゆく」
ディーン・クーンツ著(扶桑社ミステリー)
全国書店ネットワーク e-hon

2000.02.13

 本来この「感想文のようなモノ」では、新作の長編小説を取り上げることにしているのですが、今回は新作は新作ですが、短編集です。まあ、過去にもこういうことは何度かしてますし、作者がここではお馴染みのディーン・クーンツですから、勘弁してやってください。  
 元は「ストレンジ・ハイウェイ」という短編集だそうで、本国ではたぶん一冊なのでしょうが、日本では三冊に分けて発行されている、そのうちの第二集です。七編の短編がおさめられていて、そのどれもが楽しめる作品になっています。もちろん、作者はクーンツですから、基本的にすべてホラーの範疇に入るのでしょうが、必ずしもすべての作品が恐怖色の濃いものにはなっていません。  
 まず一本目の「フン族のアッチラ女王」は、異生物侵略ものですが、この異生物の設定がおもしろいというか変わっているというか。いや、そのやることとか外見は、変わっているというほどじゃあないんですが、その出生が変わっています。しかも、こんな能力持ってる奴をどうやってやっつけるのかと思っていたら、また、やっつけ方がすごいというかとんでもないというか、アメリカン・ホラーにはありがちというか。ほんのちょっとだけがっかり。  
 二本目が表題作の「闇へ降りゆく」ですが。これはなんとなく、クーンツというよりもキングの作品の雰囲気なんじゃないかなぁ、と。もちろん、書いてるのはちゃんとクーンツでしょうが。恐怖感という意味では、収録作品中で一番恐かったという印象です。読んでいる最中に恐かったというよりも、ラストの恐怖が大きかったんですが。  
 三本目の「オリーの手」は、解説によると「クリスマス・ストーリィの奇跡の物語を読むような暖かい余韻が読後に残る」ということですが、わたしとしてはあまり良い印象がありません。ちょっと身につまされるというか、悲しい結末という感じです。個人的な好みからすると、最後にアニーが戻ってくるとか、せめて微笑みかけてくれるとか、何も知らずに優しくしてくれるとか。そんなラストをちょっと期待してしまいました。まあ、あくまでもわたし個人の好みですが。  
 次の「ひったくり」も、キング作品のイメージが多少あります。「縮みゆく男」とか、そのあたりの雰囲気です。ってなことをいってしまうと、内容がわかってしまいそうですが、「こと」が起こり始めたあたりから、先はだいたい読めますし、テーマもはっきりとわかります。疑問は、最初に老婆がなぜあれほど激しく抵抗したのか、ということ。そのあたりの理由は書かれていません。  
 そして「罠」これがこの短編集の中でもっともクーンツっぽい作品といえるのではないでしょうか。心に傷を持つ主人公。主人公の守るべきもの。忠実で勇敢で愛敬のある犬。科学の力で生み出された化け物。謎の研究施設。どこをとってもクーンツです。作者がこの作品を長編にしなかった理由が、よくわかりません。クーンツならば、充分に長編にすることができた、というか、いつもだったら長編として料理するネタだと思うのですが。  
 「ブルーノ」は解説には「映画「ヒドゥン」を連想させる」と書いてありますが、連想するなら「ヒドゥン」じゃなくて「エイリアンネイション」じゃないかと思うのですが。  
 この「ブルーノ」と最後の「ぼくたち三人」は、なんとなく草上仁が書きそうなネタのような感じです。特に「ブルーノ」の方がその印象が強いのですが、「ぼくたち三人」は、草上仁なら四人目の件をオチに持ってくるか、逆にもっと早くに四人目を出して、別のもっとひねったオチを持ってきたのではないか、と勝手に考えてしまいました。  
 やっぱり短編集の感想文は、散漫な感じになってしまいますねぇ。わたしの文章能力のせいなんでしょうが。  


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