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[ 小説の感想文のようなモノ ]
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小説「リサイクルビン」
米田淳一著(講談社ノベルス)
全国書店ネットワーク e-hon

2000.03.13

 さて、ひさしぶりに突っ込み甲斐のある小説を読んでしまいました。ってことで、かなり文句をつけていますので、作者および関係者の方は読まないでください(笑) そして、当然のようにネタを思いっきりばらしていますので、これからこの本を読もうと思っている方も読まないでください。  
 まず、もっとも大きな突っ込みは「おい、この本推理小説じゃなかったのか!」ということでしょう。たしかに、いまチェックしてみると、本のどこにも「推理小説」とは書いてありません。でもあっちこっちに「密室誘拐事件」とか書いてあれば、誰だって推理小説だと思うでしょうが。しかも、物語が三分の二ぐらい進んでも、まだ推理小説風に、悪くしてもサスペンス風に展開していれば、どうしたって、「いったいどうやって、ビデオカメラで監視されている状態から、姿を消すことができたのか」と思うのが人情じゃないですか。  
 それがなんと、いきなり推理小説からSF小説になっちゃって、未来人は出てくるわ、タイムスリップはしちゃうわで、うっかり「なめとんのか、コラッ!」と叫びたくなっちゃいましたよ。  
 ってことで、この作品、推理小説でもなければ、サスペンスでもない。はっきりいって、SFでもないです。  
 SFと推理小説の融合というのは、古くからされていることですし、最近ここでも紹介した「人格転移の殺人」なんかは、それの見事な代表といえるでしょう。たしかむこうは推理小説としてもSF小説としても、高い評価を得ているはずです。  
 ではこの「リサイクルビン」はどうかというと、おそらく、推理小説ファンからもSF小説ファンからも、あまり高い評価を受けることはないでしょう。もちろん、これはわたし個人の感想ですから、逆に世間の評判はいいかもしれませんが。  
 なにが気に入らないって、最初のうちは推理小説のような顔をして、密室誘拐の謎を解くのかと思わせておきながら、次第に舞台が裏の世界に入りそうになって。とはいっても入りもしないで今度はテロリストなのかと思いきや、結局未来人でした、ってな展開は、読んでいる方も納得できません。  
 まさか、いくらなんでも、最初は推理小説にしようと思っていたのに、作者自身が用意した謎の解決方法がみつからなかったから、無理矢理終わらせた、なんてことはないのでしょうが、なんとなく、行き当たりばったりで書いたんじゃないか、と思いたくなってしまいます。  
 ストーリー展開も納得いきませんし、キャラクターの設定も中途半端な気がします。  
 主人公が通称「リサイクルビン」と呼ばれる部署に配属になった理由も、いまひとつすっきりしませんし、上司の鈴谷が職場でフィギュア作って遊んでいるのも、作者自身のお遊びのような感じがします。これが、韜晦しているとか、そういったことの表現ならば、それはそれできちんとそれを表現してもらいたいものです。たとえば、「パトレイバー」の後藤隊長のように。  
 それと、時々出てくる主人公のモノローグで、「〜というツッコミを入れたくなった」というのがあるのですが、主人公の性格設定上、ツッコミを入れるという発想はないはずなんです。少なくともわたしにはそうとれました。となるとこれは、主人公のモノローグというよりも、作者自身のモノローグなんじゃないか、という感じです。あるいは、主人公の性格の表現のしかたに問題があるのか。でなければ、わたしの読解力がないかです。  
 他にも不満は山ほどあります。  
 たとえば、何かの説明をするときに、その説明がいかにも説明的なんですね。わかりにくいか。たとえば、十四ページの最後のあたりから、「イオシュ」の説明がはじまりますが、これがどうも、とってつけたような説明のための説明、といった感じで。もちろんこれも、わたし個人の感想ですが、その手の表現方法に関する違和感というのは、ほかにもあります。たとえば、「やる気がなさそうなたたきあげの鬼刑事」って、どんな刑事なんでしょう? なんてのもありますし。  
 このように、全体的に中途半端というか、いきあたりばったりというか。  
 こういう言い方をしては失礼かもしれませんが、これで八百四十円(税別)は高いぞ。  
 で、今これを書いていてふと思ったんですが、この作品ってもしかしたら、コメディなんでしょうか? だとしたら……  
 それでも中途半端だな。  
 これが、インターネットのサイトで公開されている、趣味で書かれた作品だったら、ここまで言わないんですけどねぇ。こっちは金払ったぶん、どうしても文句いいたくなっちゃいますよ。  


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