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[ 小説の感想文のようなモノ ]
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小説「コフィン・ダンサー」
ジェフリー・ディーバー著(文藝春秋社)
全国書店ネットワーク e-hon

2000.11.26

 全身麻痺の科学捜査官リンカーン・ライムを主人公にした、シリーズ第2弾です。とはいっても、じつはわたしは前作の「ボーン・コレクター」を読んでいないんですが。小説はおろか、映画すら観てませんで。この「コフィン・ダンサー」を読む前に「悪魔の涙」という、同じ作者が書いた別の主人公の小説を読みまして。これがなかなか面白かった。ストーリーはもちろん面白かったんですが、主人公の仕事がまた、変わっていて面白い。まあ、それはこの「コフィン・ダンサー」とは関係ないんですが。その「悪魔の涙」の中に、ほんの少しだけ、本書の主人公リンカーン・ライムが登場するんですね。登場ったって、電話で会話するだけなんですが。で、じゃあ、そっちも読んでみようかな、と思いまして。普通はそこで、1作目の「ボーン・コレクター」から読むのでしょうが、そこはそれ、わたしの性格ですから(笑)  
 本書を読み始めてから気がついたことは、わたしの性格はやっぱり問題ありだな、ということ。もちろん「ボーン・コレクター」と「コフィン・ダンサー」は、主な登場人物が同じというだけで、物語の内容には、直接つながりはありませんから、どちらから読んでも問題はないのでしょうが、やはりシリーズ物は順番通りに読むのが正しいようで。  
 とはいっても、「コフィン・ダンサー」はすでに途中まで読んでしまっていますし、いまさら中断して「ボーン・コレクター」に移るのもなんだなぁ、と考えて、とりあえずレンタルビデオ屋で、デンゼル・ワシントン主演の映画「ボーン・コレクター」を借りてきて、観てみました。これがまた失敗。いや、映画がひどかった、とかそういう意味ではなく。なんか、頭の中で話しが混じっちゃって(笑)映画観てる最中には「ボーン・コレクター」の犯人が「コフィン・ダンサー」の犯人に見えちゃうし。映画観終わってから小説を読み始めると、それが逆転するし。  
 で、わたしは原作を読んでいないわけですから、小説と映画の比較はできないんですが、これはどう考えても小説の方が面白そうなんですね。もちろん、映画は映画でよくできています。じっくり楽しめました。でも、「コフィン・ダンサー」を読んでいる最中の身としては、やっぱり映画よりも原作の方が面白いんだろうなぁ、と思ってしまうのです。どのあたりが? と聞かれると難しいのですが。映画では、心理描写が難しいから、といってしまっても良いかもしれません。この作品の特徴のひとつに、主人公ライムの頭の中の動きの描写があります。ひとつの証拠品から、ある答えを導き出すときに、いきなりポンとは出てこない。この証拠と同じものを以前見たことがある、あれは、そうだ! というような流れがあったりするわけです。それが映画ではうまく描写されない。もうひとつ、主役のデンゼル・ワシントンが非常にがんばっていて、すごくうまかったのですが、やはりライムの苦悩だの辛さだのは、文章で描写してしまった方がわかりやすいんですね。これは映画がうまくない、ということではなく、単にどちらが表現しやすいか、という問題なんですが。  
 あと、「コフィン・ダンサー」を途中まで読んで気がついたんですが、リンカーン・ライムって、原作では白人なんですね。まあ、どっちでも大きな違いはないんでしょうが。  
 さて、「コフィン・ダンサー」の感想ですが。すごいです。はっきりいって、ラスト近くでああいう展開になるとは思いませんでした。ほんの少しだけ「おいおい、この展開はちょっと卑怯じゃないか」と思ってしまいましたが、そんな読者の些細な感情など吹き飛ばすだけの展開です。伏線の張りかたもうまいし。  
 追う側と追われる側の攻防という意味では、かなりスリリングです。こういう作品を読むと、作家ってのは頭が良くなきゃできないなぁ、とどうしても思ってしまいます。もちろん、出てくる各種の捜査方法や検査方法は、すべてがすべて現実のまま、というわけではないのでしょうが、それにしたって、ほんの些細な証拠から犯人をつきとめていく段取りは、物語として充分楽しめます。  
 また、出てくる登場人物がみんないきいきしてますし。個人的にはローランド・ベルがお気に入りですが。まあどうでもいいことか。  
 ラスト近くで明かされる謎のひとつは、勘の良い読者なら気づく可能性もあるかもしれませんが、その前に「おい、なんで?」という展開があります。それについては触れないでおきましょう。  
 ハードカバーで約2000円というのは、確かにちょいと高いです。文庫になってから読んでもかまわないと思いますが、この作品はお勧め。  
 読んでませんが、たぶん「ボーン・コレクター」もお勧めなんでしょうね(笑)  


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