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[ 小説の感想文のようなモノ ]
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小説「千里眼/ミドリの猿」
松岡圭祐著(小学館文庫)
全国書店ネットワーク e-hon

2001.03.12

 たしか、かなり前にシリーズ一作目の「催眠」を、ボロクソにけなした記憶があったんですが、今読み返してみたら、それほどボロクソじゃありませんでした(笑)  
 で、実は内緒にしてたんですが、映画の「催眠」もビデオで見ましたし、小説「千里眼」も文庫で読んでいるんですよ、わたしは。テレビドラマは、途中で見るのをやめちゃいましたけどね。  
 最初の一冊目で、あまり面白くなかった、という感想を持ったくせに、そのシリーズを追い続けている、というのは、珍しいことなんですが。じつは「千里眼」はそれほどつまらなくはなかったんですね。まあ、むちゃくちゃ面白い、というほどではなかったのは確かですが、そこそこ面白かった。続きが出た場合、ハードカバーでは買わないけれど、文庫になったら買おうかな、という程度には面白かったんです。  
 で、続きであるこの「千里眼/緑の猿」ですが。  
 この作者、すごいことをやってます。通常、小説が原作となって映画化やドラマ化された場合、ストーリーやら設定やらに多少の変更が施されてしまいます。これは、良い場合も悪い場合もありますし、その良し悪しの判断は、多分に個人の好みに左右される場合もあります。なんにしてもほとんどの場合は、、原作と映画やドラマは別物、と捕らえるのが、ファンや作者の発想のようです。  
 で、「催眠」は実際、原作とはかなり違った展開になっていました。実をいうと、どこがどう違っていたのか、今となってはよく覚えていないんですけどね(笑)  
 映画「千里眼」が、小説「千里眼」とどれほど違うのか、まだ見ていないので、何とも言えないのですが。とにかく、映画「催眠」は、原作の流れとは違う形になっていて、それがよかったかどうかはまた別問題。  
 すごいのはこの作者、その映画の展開を、小説の続きに取り込んでいるのです。これって、非常に珍しいことなんじゃないかなぁ、と。たしか、「コータローまかりとおる」という漫画が映画化されたときに、映画オリジナルのキャラクターとして登場した人物を、作者が気に入って、漫画の方にも登場させた、というのがありましたが、この「催眠」から始まるシリーズの場合、その程度の取りこみじゃぁありませんからねぇ。これははっきりいって、かなりすごいと思います。  
 で、その取りこみ方も、まあそれなりに無理はない、というか。この程度なら許せる範囲、というか。まあ、なんにしても、小説「催眠」と映画「催眠」の違いをよく覚えていないわたしには、あまり偉そうなことは言えないんですけどね。  
 それと、小説「催眠」は、話しの内容に少々難点があるような感じでしたが、「千里眼」にしろこの「千里眼/緑の猿」にしろ、とりあえず、お話しはなかなか面白いんです。少なくとも、途中で飽きることはありませんでした。ただまあ、作者が自分で書いたハウ・トゥ本に書いてあったようなことが、何度も同じような文章で繰り返されるのには、少々閉口しますが。  
 それともうひとつ。  
 文章が「なになにだった」で終わることが多いんですね。いや、別にそれが多いからというだけなら問題はないんですが。短いセンテンスでそれが繰り返されている部分が、非常に多い。冒頭なんて、ほとんどそれだけで数ページ進みます。これは、読んでいると非常にイライラします。で、ふと思ったのが、これはひょっとしてわざとか? ということ。場面が場面だけに、読者に不安感を与えるために、わざとやっているのか? と思ったんです。もしそうなら、これはすごいことです。読者の不安を煽るような細工を、単語や文脈だけでなく、文末まで使ってやっているわけですから。  
 でも、読み進むうちに、どうやらそうではないらしい、という感じがしてきました。特に読者の不安を煽る必要のない個所でも、同じような文末を繰り返していることが、多々ありましたから。まあ、作品全体で読者の不安感をかきたてている、という解釈も成り立ちますが、そのあたりははっきりしません。  
 この作品、最後は完結していません。はっきりと「続く」という形で終わっています。そいういう意味では、なんとなく「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」を彷彿とさせるものがあります。内容的にも、それに近い部分がありますし。  
 それにしても、これだけ文句をいいながら、どうしてわたしはこのシリーズを読んでしまうのでしょう? 小説だけでなく、ビデオを借りてこようか、とも思ってますし。ひょっとして、この本のどこかに、なんらかの暗示効果が出るような細工が、施されてるんじゃないか、という気がしないでもありません。  


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