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[ 小説の感想文のようなモノ ]
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小説「ティム・バートン版 猿の惑星」
J・ホイットマン/ウィリアム・トーマス・クイック著(角川スニーカー文庫/角川文庫)
全国書店ネットワーク e-hon

2001.07.20

 さて、ちょっとややこしいです。  
 1963年にピエール・ブールによって書かれた小説「猿の惑星」を1968年にフランクリン・J・シャフナー監督が映画化しました。で、今年2001年にティム・バートンが再び「猿の惑星」を映画化したわけですが、この小説は、そのティム・バートン版の映画のノベライズです。  
 順番に行きましょうか。順番に行きますが、昔の小説と映画に関しては、ネタばらしをしちゃいますので、それがいやな方は読まないでください。あるいは、書店に行って本を買い、レンタルビデオ屋でビデオを借りて、内容を確認してから、先に進んでください。  
 さて、まずはもともとの原作になった小説の話しです。実はわたしは、この小説をちゃんと読んではいないのです。でも内容は知っているぞ、と(笑)。映画の方が有名で、特に映画のラストはかなり知れ渡っていますが、実は原作の方のラストは、映画とは違っているのです。猿の惑星の文明のレベルも、小説の方では、猿たちはかなり高い文明を持っていて、映画とはかなり違っているようです。その猿の世界に、知能を持った人間が現れて、というお話しです。細かい内容は知りません(笑)。で、そのエンディングですが、原作となった小説のエンディングは、はっきり言って「夢オチ」に近いものがあります。さんざん猿の世界の話しをしておいて、最後の最後で「ってなお話しがあったらおもしろいね」といった終わり方をしているのです。ただし、その後ろにもうひとつオチがありますが。それがどんなオチなのかは、言わないでおきましょう。  
 で、次に昔の映画の話しです。主演はチャールトン・ヘストンでした。長い宇宙旅行の末に、宇宙飛行士が不時着した星は、猿が人間を奴隷として扱っている星だった。というお話しです。このお話しのオチは有名で、どこか遠くの星だと思っていたのに、なんとそこは地球だった、というオチなんですが。  
 当時は衝撃のエンディング、という感じで評判になったようです。しかし、ほとんどのSFファンというか、ある程度SFをかじっていた人たちの間では、あまり衝撃的なエンディングではなかった、という噂もあります。なんせ、その星では猿が英語を喋っているわけですから。だれがどう見ても地球なわけですよ。かりに、遥かかなたのどこかの星で猿が人類を支配していたとしても、いくらなんでも英語を喋ってるってことはないでしょう。その他の環境、使っている道具や、動植物なども、どう考えても地球のものです。だから、最後に主人公が「ここは地球だったのか」と嘆くシーンを見て、「おい、気がついてなかったのか?」と、そっちの方が衝撃的だったわけです。  
 とはいえ、この映画はかなり評判になりました。その後いくつもの続編が作られ、その中で、猿が人間を支配するに至った経緯が、ある程度は無理なく説明されています。タイムパラドックスとかそういうことは別にして。  
 それに便乗して、アメリカではテレビドラマだかアニメだかも作られたそうですし、日本でも「猿の軍団」とかいう番組があったはずです。とにかく、そのぐらい一世を風靡した作品だったわけです。  
 で、今回ティム・バートンが作ったのは、そのリメイクか、というと、どうやらそうではないらしいのです。本人いわく、リ・イマジネーションだそうで。わかるようなわからないような。平たくいえば、猿が人間を支配している星、という基本設定を使って、また別の話しを作った、ということでしょう。したがって、過去の「猿の惑星」とは、映画版にしろ、小説版にしろ、特につながりはないようです。  
 で、やっとこのノベライズのはなしです。  
 でも、あんまりしたくないんですよね。なぜかというと、とても大きな疑問があるからなんです。この「ティム・バートン版」と銘打ったノベライズは、文庫で二種類出ているんです。別の作者、別の訳者で、出版社はどちらも角川です。まあ、一方は角川スニーカー文庫ですが。なぜ同じ出版社から同じタイトルの本が二種類出ているのか、これがもう理由もなんにもわからない。どちらの解説にも、それについて触れている部分はありません。内容も、ほとんど一緒です。おそらくは両方とも、同じシナリオから書いたノベライズでしょうから。セリフなんぞはほとんど一緒。展開も一緒。終わり方も一緒。細かい描写が違うだけです。ただ、一方では、冒頭で宇宙船だか宇宙ステーションだかが浮かんでいるのが、地球の上空ということになっているんです。そこから落ちた星だったら、それは地球ってことになりそうな気がするんですが、どうやらそうではないらしいし、主人公も地球だとは思っていません。終わり方もまあ、あの終わり方が順当なんでしょう。  


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